ザンクトパウリ戦で見えた山田大記の成長 観戦した宮市亮も復帰後の巻き返しを誓う

中田徹

3位のザンクトパウリに貴重な勝利

ザンクトパウリ戦で左サイドハーフとしてフル出場し勝利に貢献した山田 【Getty Images】

 山田大記が左サイドハーフを務めるカールスルーエは12月18日(現地時間)、アウェーでザンクトパウリ相手に2−1で競り勝った。カールスルーエは暫定ながら順位を1つ上げ、ブンデスリーガ2部で9位になった。

 前節のグロイター・フュルト戦は、スコアの上では1−0の辛勝だったが、カールスルーエはもっと大差をつけて勝っても良かった内容だったらしい。ザンクトパウリのエーワルド・リーネン監督は「カールスルーエは山田、マヌエル・トーレス、ディミトリオス・ディアマンタコスがいる、攻撃的で強いチームだ。素早いコンビネーションを持っている」と対戦相手を警戒し、「うちはコンパクトに戦わないと」と策を練っていた。

 一方、カールスルーエのスカウティングでは、ザンクトパウリは相手にスペースを与えるチームだった。山田にとって、相手の右サイドバック(SB)がマンツーマン気味に付いてくるのは想定していたことで、「中に入ってスペースでボールを受ければいいや」と考えていたと言う。しかし、ザンクトパウリは右SBのマルク・ホルムシューだけでなく、ボランチのバーンド・ネーリグも山田を監視し、前半、「やべえ、俺がボールを受けるところがない」という状況まで山田を追い込んだ。前半は1−1ながら、明らかにカールスルーエは劣勢だった。

 しかし、山田によればカールスルーエのコーチングスタッフはかなり戦術眼に秀でているらしく、ハーフタイムに山田が「マジ、やりにくい。2人マークがいて、全然ボールを受けられないんですけれど」と訴えると「そんなの分かっているよ」と返し、「こっちがバランス良くいくと、相手もバランス良く付いてくるから、2列目の3人は寄ってしまえ」と策を与えたという。こうして後半の山田は中へ絞るようなポジションを取り、カールスルーエの左サイドに大きなスペースが空く時間帯ができたが、案外そこは突かれなかった。ようやく60分頃からカールスルーエに試合の流れが傾き、71分にセットプレーの混戦からディアマンタコスのゴールで2−1と勝ち越した。

 3位のザンクトパウリを下したことで、山田は「今日は戦術的にすごく難しかったですけれど、みんなで戦って勝ったのが良かったです。今日の試合に勝って昇格の可能性が残った。1位、2位を狙うのはもう難しいですけれど、15試合残っているから3位はまだまだ狙える。昨季と同じく入れ替え戦で(昇格を狙いたい)。チームとしては昨季より今季の方が良いと思う」と貴重な勝利を喜んだ。

勝っている試合では交代させられないが……

ザンクトパウリのホームゲームは常に満員で、対戦相手の選手にとっても格別な舞台になっている 【Getty Images】

 2部リーグながらザンクトパウリのホームゲームは常に満員で、スタジアムの周辺には「チケット求む」の紙を持ったサポーターがうろうろしている。試合中の盛り上がりは格別だ。サポーターの後押しを受けた選手たちは、カールスルーエのボールを積極的に奪おうとし、ショートカウンターから波状攻撃を仕掛ける時間帯もあった。対戦相手の選手にとっても格別な舞台だ。

「ザンクトパウリは、良い感じの厳しいチームでしたね。ファウルばっかりのチームもあるけれど、ザンクトパウリは汚いとかではなく、かなりきっちりボールに来た。そのタイトさが、やっていて楽しかった」(山田)

 カールスルーエにとっては、アウェーマッチで僅差のリード。終盤、ザンクトパウリはパワープレーを仕掛けてきた。この展開からして、ドイツ人に比べると体格に恵まれているとは言えない山田が交代させられないのは、よほど首脳陣から信頼されているからだろう――と思った。山田も「勝っている試合では、昨季のように足でもつらないかぎり交代はありません。自分は最後まで走り切れるし、SBとの兼ね合いもあるから、そこのバランスは崩せない」と言う。しかし、「自分は負けている時に交代させられる。ハーフタイムに交代というのもあった。攻撃の選手として、そこは悔しいものがある」と忸怩(じくじ)たる思いを明かした。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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