ザンクトパウリ戦で見えた山田大記の成長 観戦した宮市亮も復帰後の巻き返しを誓う

中田徹

カールスルーエで鍛えられた山田の守備力

今季の山田は1ゴール1アシストと結果を残せていない 【Getty Images】

 今季の山田は1ゴール1アシストと、本人も「相当物足りない」という数字だ。チームとしてゴールがほしい時に、山田はベンチに下げられてしまう。ザンクトパウリ戦の山田もシュートを撃つ機会はなく、決定機を作ったわけでもなかった。しかし、チームがリードしている時こそ、ピッチの上に立ち続けることができるという事実もある。走力、バランス以外にも、相手SBの上がりに負けない山田の守備力も忘れてはならないだろう。ザンクトパウリ戦の69分、対面したホルムシューがフリーでシュートを打とうとしたが、山田が必死に体を寄せて何とかブロックした。

「守備をやれるようになったのが、カールスルーエで鍛えてもらったところ。ジュビロ(磐田)の時はそんなに守備を要求されなかったし、攻撃以外の仕事をそんなにしていなかった。そこ(守備力)が評価されて使ってもらっている感じ。1対1の間合いとか、まだまだなんですけれど、自分の中では一歩寄せるように意識している。ドイツでは守備とか寄せ方がうまいし、寄せないとやられるというのがある。自分ではそこがだいぶ慣れてきた感じがある」

 さらに今はチーム内でのコミュニケーションが円滑になったという。昨季前半戦、6ゴールを固め取りした山田だったが、後半戦はノーゴールに終わった。山田はその頃を振り返り、「監督が『あいつ、前半戦はたくさん点を取ったのに、後半戦は取ってないじゃないか』と思っているんじゃないか。チームメートは優しくて自分には『大丈夫だ』と言ってくれているけれど、ドイツ人同士では『全然大丈夫じゃないよな』と言っているんじゃないかとか、変なプレッシャーを自分で感じ取っちゃっていた気がする」と明かす。

「でも今は日本にいる時みたいな感じで、シュートを外すとみんな冷やかしてくれる。去年は外してもみんな気を使って、何も話しかけてくれなかった。そういうのも優しさだったりリスペクトだったんでしょうけれど、今みたいに『ヒロキ、あれは決めなきゃダメだろう』、『あれは、ああすればよかったんじゃない?』みたいに話せる方が自分としてはいろいろ整理もできる。自分は一人でプレーできるタイプではないので、周りと関係性を作らないとあんまり良いプレーはできない。今はコミュニケーションを取れるようになったのが良い方向に進んでいる。みんなが何をしゃべっているのか分かるようになってストレスが減った」

 山田は後半戦の目標を「6ゴール以上」と設定し、昨季の総ゴール数「7」を超すことを誓ってウインターブレークに入った。

リハビリ中の宮市も観戦

 ザンクトパウリのミラントア・シュタディオンには宮市亮も訪れていた。今から1年前の宮市はトゥエンテの一員としてプレーしながら、深刻なスランプに陥り、「サッカーを辞めたい」とまで思いつめる時期もあった。その後、リザーブチームでどんどん調子を上げ、今季からザンクトパウリのユニホームを着ることとなった。プレシーズンでも「調子が良い」と報道されていたが、7月18日のラージョ・バジェカーノ戦で左膝十字靭帯断裂の重症を負ってしまった。

「トゥエンテ時代の後半からだいぶ良くなって、夏に自分でトレーニングをやって、プレシーズンも調子が良かった。けがをした日の試合も調子良いので『これから行きます!』なんて言っていたら、(検査して)蓋を開けたら前十字……。原因は膝の付き方が悪かったと思います。やった時は痛くなかったです。試合もそのままやっていましたし。それまで体は本当に良かったんですけれどね。あの時は辛かった。でも、まだまだサッカーはできますので、それは良かったです」

 昨季終盤に調子を上げ、シーズン終了後に結婚し、移籍先も見つかった。さあ、これからだ! という時の大けがだった。

「僕がけがした時、彼女はまだ日本でした。彼女がドイツに来た日(7月22日)、僕はミュンヘンへ飛んで手術だったんです。僕は落ち込みまくっていたんですけれど、電話したら『まだサッカーできるからいいじゃん』って言われて、良かったなと思いました。まだまだサッカー人生は長いので、ここからですよ。彼女も陸上競技をしていて、けがで苦しんでいたので、レベルは違いますけれど経験していることは一緒です。そういうところでアドバイスをもらいました。俺一人だったら、そうとうきつかったと思います」

 今はパス、トラップ、スピードに乗った走りをしているという。リハビリにシュートが加わるのも間近だ。宮市の照準は今季後半戦。

「シーズン全部が終わったわけじゃないので、まだまだチャンスはあると思う。フェイエノールトの時のように半年活躍すれば何が起こるか分からないので、頑張ります」

 宮市が言う「何が起こるか分からない」とは、来季、ブンデスリーガ1部のピッチの上に立つことを指すようだ。

「チームは良い順位(暫定4位)に付けているし、チームを助けて1部に上がれたらなお良いですしね。まずは本当にこのチームに恩返しをしたい。多分、期待して取ってくれたと思うので、期待に応えたいですね」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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