柔道代表1枠を巡る激しい選考争い 明暗分かれたグランドスラム東京
偶然ではないと証明した男子の躍進
100キロ級を制した羽賀。ただ、すでに視線は五輪・金メダルへ向け、さらなる向上に移っている 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
その金メダリストの1人、100キロ級の羽賀龍之介(旭化成)は各国に警戒される中でも一皮むけた強さを示した。準決勝では世界ランク1位のガシモフ(アゼルバイジャン)に一撃必殺の内股で華麗に一本勝ち。決勝はまともに組んでこない趙グハム(韓国)を仕留めきれなかったが、指導差で危なげなく退けた。
「頭1つ、2つ抜けている。リオでどういう結果を出せるか、そこに照準を合わせて日々を送らせたい」という井上監督の評価は、五輪への“内定通知”といっていい。11月の講道館杯で優勝したウルフ・アロン(東海大)は2回戦、4月の全日本選抜体重別を制した高木海帆(日本中央競馬会)は3回戦でそれぞれ敗退しており、羽賀自身も「代表を勝ち取るためにやっていない。もっともっと上を見ている」と、すでに視線は五輪の金メダルへ向けられている。
原沢vs.七戸、混戦増す100キロ超の選考レース
本人は反則の判定について、上着の裾をつかんでいたとして納得がいかない様子だが、「これが五輪じゃなくて良かった」。国内に2番手と呼べるほどのライバルも見当たらず、すんなり代表の座に納まるだろう。
90キロ級を2年ぶりに制したベイカー茉秋(東海大)も、強豪を連破した内容を考えればほぼ代表当確。準決勝では世界王者・郭同韓(韓国)を延長戦の末に抑え込んで一本勝ちし、決勝はロンドン五輪銀メダルのゴンサレス(キューバ)に組み手で優位に立って指導差で競り勝った。
世界選手権銅メダルの自信を胸に「こんなところでは負けられない」という強気な姿勢が頼もしい。3回戦敗退で評価を下げた吉田優也(旭化成)、3位に食い込んだが実績で見劣りする西山大希(新日鉄住金)に対してセーフティーリードをつけている。
逆に今大会の結果で、より選考レースが混戦となった階級もある。その筆頭が、原沢久喜(日本中央競馬会)と七戸龍(九州電力)の日本人同士による決勝となった100キロ超級だ。
世界選手権で2年連続2位の27歳・七戸にとっては、勝てば代表の座をグッと引き寄せる好機だったが、延長戦の末に4つ目の指導を受けて惜敗。技らしい技をほとんど出せない展開に「組み手を研究されているという意味ではやりにくい」と、直接対決3連敗となった4歳下のライバル・原沢への苦手意識を認める。
逆に国際大会6連勝の原沢は「経験では七戸さんに劣るけど、勢いでは勝っている」と意気盛ん。井上監督も「差はなくなった。ここからが本当の戦いだ」と双方の奮起を促す。リオで日本柔道の宿願である“打倒リネール”を成就させるためにも、ハイレベルな競争が期待される。