柔道代表1枠を巡る激しい選考争い 明暗分かれたグランドスラム東京

スポーツナビ
 世間の暦より一足早く、柔道界のカレンダーは2015年の日程を終えた。年内最後の大会として4〜6日に開催されたグランドスラム東京大会。ここでリオデジャネイロ五輪代表の座を九分通り手中に収めた者もいれば、失意に沈んだ者もいる。来年4月の決着を前に、日本代表争いの行方は徐々に見えつつある。

偶然ではないと証明した男子の躍進

100キロ級を制した羽賀。ただ、すでに視線は五輪・金メダルへ向け、さらなる向上に移っている 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

「全階級で金メダルを狙える。リオ五輪へ向けて大きな弾みになる」。井上康生監督が手応えを強調する通り、日本男子は全7階級のうち実に6つを制した。100キロ超級の“絶対王者”テディ・リネール(フランス)ら強豪が不在の階級もあったが、今夏の世界選手権(カザフスタン)で金3つを含むメダル7個を獲得した結果が偶然ではないと証明した。

 その金メダリストの1人、100キロ級の羽賀龍之介(旭化成)は各国に警戒される中でも一皮むけた強さを示した。準決勝では世界ランク1位のガシモフ(アゼルバイジャン)に一撃必殺の内股で華麗に一本勝ち。決勝はまともに組んでこない趙グハム(韓国)を仕留めきれなかったが、指導差で危なげなく退けた。

「頭1つ、2つ抜けている。リオでどういう結果を出せるか、そこに照準を合わせて日々を送らせたい」という井上監督の評価は、五輪への“内定通知”といっていい。11月の講道館杯で優勝したウルフ・アロン(東海大)は2回戦、4月の全日本選抜体重別を制した高木海帆(日本中央競馬会)は3回戦でそれぞれ敗退しており、羽賀自身も「代表を勝ち取るためにやっていない。もっともっと上を見ている」と、すでに視線は五輪の金メダルへ向けられている。

原沢vs.七戸、混戦増す100キロ超の選考レース

 男子で唯一優勝を逃したのが81キロ級。ただし、それは世界王者の永瀬貴規(筑波大)が準決勝で不運な脚取りの反則を取られた結果だ。その後の3位決定戦での圧勝を見ても、実力的に世界のトップ級であることに疑問の余地はない。
 本人は反則の判定について、上着の裾をつかんでいたとして納得がいかない様子だが、「これが五輪じゃなくて良かった」。国内に2番手と呼べるほどのライバルも見当たらず、すんなり代表の座に納まるだろう。

 90キロ級を2年ぶりに制したベイカー茉秋(東海大)も、強豪を連破した内容を考えればほぼ代表当確。準決勝では世界王者・郭同韓(韓国)を延長戦の末に抑え込んで一本勝ちし、決勝はロンドン五輪銀メダルのゴンサレス(キューバ)に組み手で優位に立って指導差で競り勝った。
 世界選手権銅メダルの自信を胸に「こんなところでは負けられない」という強気な姿勢が頼もしい。3回戦敗退で評価を下げた吉田優也(旭化成)、3位に食い込んだが実績で見劣りする西山大希(新日鉄住金)に対してセーフティーリードをつけている。

 逆に今大会の結果で、より選考レースが混戦となった階級もある。その筆頭が、原沢久喜(日本中央競馬会)と七戸龍(九州電力)の日本人同士による決勝となった100キロ超級だ。

 世界選手権で2年連続2位の27歳・七戸にとっては、勝てば代表の座をグッと引き寄せる好機だったが、延長戦の末に4つ目の指導を受けて惜敗。技らしい技をほとんど出せない展開に「組み手を研究されているという意味ではやりにくい」と、直接対決3連敗となった4歳下のライバル・原沢への苦手意識を認める。

 逆に国際大会6連勝の原沢は「経験では七戸さんに劣るけど、勢いでは勝っている」と意気盛ん。井上監督も「差はなくなった。ここからが本当の戦いだ」と双方の奮起を促す。リオで日本柔道の宿願である“打倒リネール”を成就させるためにも、ハイレベルな競争が期待される。

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