柔道代表1枠を巡る激しい選考争い 明暗分かれたグランドスラム東京
苦戦が目立った世界選手権の実績組
笑顔を見せる近藤(左)と厳しい表情の浅見。女子48キロ級は最終選考会・全日本選抜体重別選手権まで分からなそうだ 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
世界女王に返り咲いた57キロ級の松本薫(ベネシード)は2回戦でよもやの一本負け。シルバ(ブラジル)に飛びつき腕十字の奇襲を食らい、「全く頭になかった。もっと柔軟性を持てていたら……」。とはいえ、初優勝した20歳の芳田司(コマツ)は5年後の東京五輪の代表候補で、松本の牙城を脅かす存在でもない。リオでの五輪連覇へ向けて気を引き締め直す機会となっただろう。
世界選手権で初出場初優勝を遂げて、一躍五輪の金メダル候補に躍り出た78キロ級の梅木真美(環太平洋大)も5位に終わった。準決勝でロンドン五輪女王のハリソン(米国)に指導差で敗れると、世界選手権決勝で一本勝ちしたベレンセク(スロベニア)との3位決定戦も指導3つを受けて敗戦。「実力不足。組み手や技に甘さがある」と反省の弁を並べる。
ただ、先月の国際大会でハリソンらを破って評価を上げた寝業師・浜田尚里(自衛隊)は準々決勝で敗退。経験豊富な佐藤瑠香(コマツ)も5位にとどまり、序列は変わらず。発展途上の21歳の世界女王にとっては成長への良い刺激となったはずだ。
たった1枠を巡るドラマ、逆転代表入りあるか
ライバル同士の直接対決となった決勝。近藤亜美(三井住友海上)が底力を見せたのは、残り36秒余りで指導を受けて浅見八瑠奈(コマツ)にリードを許した直後。ねじり倒すような大外刈りで技ありを奪い、その体勢のまま抑え込んで一本勝ちを収めた。
10代で世界女王となった昨年から一転、今年は国内外で1度も優勝がなかっただけに「負け続けて、締めくくりに勝てたのがうれしい」。顔をくしゃくしゃにして泣いたり、笑ったり。片や「もちろん厳しい立場になったと受け止めている。でも全然諦めていない」と硬い表情で語る浅見との、残酷なまでのコントラスト。
その明暗がはっきりするのは最終選考会となる4月の全日本選抜体重別選手権(福岡)だ。3年前、福見友子がロンドン五輪代表に滑り込んだような逆転劇があるとすれば、やはり48キロ級だろう。あのとき無念の涙をこぼした浅見の頬を4年越しのうれし涙が伝うのか。それとも若き近藤の顔に、弾けるような笑みが広がるのか。たった1つの枠を巡るドラマが再び繰り広げられる。