陽岱鋼が身に着けた「当たり前のこと」 台湾代表にもたらす日本野球のエッセンス

永塚和志

陽岱鋼人気は別格

オリオールズ・チェンと並び台湾では人気の高い陽(右) 【永塚和志】

 今回の「世界野球プレミア12」は日本と台湾の共催とあって、日本同様、台湾でも関心が高く、とりわけ台湾代表に対する期待度は高い。試合のなかった金曜(13日)にも、台中インターコンチネンタル野球場での同代表の練習には数多くの地元メディアが訪れた。

 日本のプロ野球ファンにもなじみのある陽岱鋼は、スター選手の一人であり中心選手。2015年シーズンこそ故障の影響で86試合の出場に終わったが、北海道日本ハムでプレーする28歳はいまやリーグを代表する外野手と言える存在となり、地元・台湾でも別格の扱いを受けている。

 古くは西武に所属した“オリエンタル・エクスプレス”こと郭泰源(現台湾代表監督)や元中日の郭源治、元巨人の呂明賜らが台湾出身選手として日本球界で活躍したが、テレビ中継やネット中継の発達に伴って、陽の名声はそうした先人たちをしのぐといってもいいだろう。陽の活躍のおかげで日本ハムの試合はほぼ毎日テレビやネットで中継されているそうで、現在では同チームのみならず他のNPBチームの人気も高まっている。

 今回の代表には入っていないが、台湾出身選手ではかつて中日でも活躍したチェン・ウェイン(オリオールズからFA)もいる。彼もビッグスターだが、地元メディアに聞けば陽とチェンの人気は「どちらが上」とは言い切れないほど拮抗(きっこう)しているとのことだ。

チームメイト・中田にも注目

 侍ジャパンの中田翔がサヨナラの1打を含む3打数3安打、5打点の活躍を見せた11日のメキシコ戦後のミックスゾーンでは、中田の取材に殺到した日本メディアのやや後方に数人の台湾メディアの面々がなにやら落ち着かない様子で待っていた。単純に陽のチームメートということで台湾でも知名度のある中田をひと目見たかったのだろう。日本ハムのユニホームやTシャツなどを着た台湾人ファンを多く見かけた(チェン・グゥアンユウが在籍し、台湾で試合もしている千葉ロッテのレプリカユニホームを着たファンも数人目にした)。

 野茂英雄氏が1995年にメジャーリーグへ移った際に当時ドジャースのトミー・ラソーダ監督や捕手のマイク・ピアッツァらが「野茂の同僚」として日本でも広く名を知られたが、それに近いものがあるのかもしれない。

 いずれにしても、13年のワールドベースボールクラシック(WBC)から引き続き、文字通りリードオフマンとして台湾チームをけん引するのが陽だ。彼の打棒がさえればチームにより一層の勢いとエネルギーを与え、球場に詰めかけるファンをより歓喜させる。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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