ビジュアルで見るFA制度の23年間 補強の有効性と成否を考える

ベースボール・タイムズ
 いよいよ本日12日、各球団とFA宣言選手との交渉が解禁となる。今年はFA有資格者95選手(国内FA29人、海外FA66人)のうち、今江敏晃(千葉ロッテ)、松田宣浩(福岡ソフトバンク)、高橋聡文(中日)、木村昇吾(広島)、脇谷亮太(埼玉西武)に、宣言残留した田中浩康(東京ヤクルト)を加えた計6選手が権利を行使した。これまで多くの選手がFA宣言して移籍したが、その中にはプロとして大きくステップアップした選手がいる一方で、膨れ上がった期待に応え切ることができなかった選手たちもいる。FA制度導入から早20年が過ぎた今、同制度による補強の有効性とその成否を、球団別に検証したい。

獲得は巨人、放出は西武が最多

【ベースボール・タイムズ】

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 1993年の制度導入以降、これまでのべ102人がFA宣言して新天地への移籍(海外移籍30人を含む)を果たした。その内訳を球団別に見ると、最もFAで選手を獲得したのは巨人で計19人(落合博満、川口和久、広澤克己、河野博文、清原和博、工藤公康、江藤智、前田幸長、野口茂樹、豊田清、小笠原道大、門倉健、藤井秀悟、村田修一、杉内俊哉、大竹寛、片岡治大、相川亮二、金城龍彦)。それに続くのがダイエー・ソフトバンクの13人(松永浩美、工藤公康、石毛宏典、田村藤夫、山崎慎太郎、大村直之、小久保裕紀、細川亨、内川聖一、帆足和幸、寺原隼人、中田賢一、鶴岡慎也)で、特に近年は潤沢な資金力を背景にFA市場の主役となっている。

 一方、これまで最も多くFAで他球団に移籍した選手が多い球団は西武で計13人(工藤公康、石毛宏典、清原和博、松井稼頭央、豊田清、和田一浩、土肥義弘、細川亨、許銘傑、帆足和幸、中島裕之、片岡治大、涌井秀章)。また、強化方針としてFA市場に消極的な球団もあり、日本ハムは計11選手(河野博文、片岡篤史、小笠原道大、岡島秀樹、藤井秀悟、森本稀哲、建山義紀、田中賢介、鶴岡慎也、大引啓次、小谷野栄一)を放出したが、獲得したのは稲葉篤紀のみ。広島もこれまで計7選手(川口和久、江藤智、金本知憲、黒田博樹、新井貴浩、高橋建、大竹寛)を放出したが、昨オフにメジャーでFAとなっていた黒田博樹の“男気復帰”が初のFA選手の獲得だった。

 その他、球団間の移動を見ると、西武からダイエー・ソフトバンク(工藤公康、石毛宏典、細川亨、帆足和幸)、オリックスから阪神(石嶺和彦、山沖之彦、星野伸之、日高剛)が最多の4人。阪神から巨人、巨人から阪神のFA移籍は過去に一例もない。

谷繁が移籍後の最長在籍者

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 では、FA移籍をどれだけチームを強化につなげることができたのだろうか。その指標の一つとして、FA移籍先の所属球団での在籍年数に注目したい。そうすると、ある程度のFA成功&失敗の傾向が見て取れる。

 最も長い在籍年数を誇ったのが、来季は監督業に専念する谷繁元信だ。移籍後14年に渡って扇の要としてチームを支え続けた。さらに在籍10年を数えた稲葉篤紀、金本知憲の2人も移籍先でレジェンド級の活躍を披露。稲葉は日本ハムの計4度のリーグ優勝に貢献し、金本は阪神を2度の優勝に導くとともにシーズンMVPも受賞(05年)した。MVPで言えば、中日に移籍した和田一浩も移籍3年目に受賞(10年)、日本ハムでMVPを受賞した直後に巨人に移籍した小笠原道大は、移籍初年度(07年)にいきなりMVPを受賞するとその後も不動の主軸として出色の働きを見せた。

大成功の裏で3年以内退団も半数近く

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 だが、全体数で見ると、成功者は少ない。国内球団に移籍した全73選手から来季も現役続行予定(黒田を含む)の19選手を除いた54人の中で、在籍5年以上に渡って働いた選手は半数以下の21人のみ。7年以上となると9人にまで減少する。FA権獲得までに時間を要するため、どうしても多くの選手がピークを過ぎた後に移籍し、早い時期に引退する傾向が強い。

 FA権を獲得するほどの選手である。経験、実績がある分、チームに加われば必ずや戦力アップにつながるだろう。何より、即効性がある。しかし、過去に大成功の例がある一方で、FA移籍後に3年以内に退団した選手は、現段階の54人中26人に上る。この数字をどう判断するか。今年も交渉解禁となったFA市場だが、各球団は財布の中身とともに、長期的視野に立ったチームマネジメント力が問われることになるだろう。

(文:三和直樹、グラフィックデザイン:山崎理美)
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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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