「みんなオクタゴンに人生を懸けている」=高阪剛が語るUFC日本大会の見どころ

WOWOW
 9月27日、さいたまスーパーアリーナで、4年連続開催されるUFC日本大会「UFC JAPAN」。メインイベントは、ジョシュ・バーネットとロイ・ネルソンという、日本でもおなじみのヘビー級スター同士の激突。そのほか、元DREAMライトヘビー級、ミドル級の二階級王者ゲガール・ムサシが、次世代の怪物ユライア・ホールと対戦。日本を背負って闘う侍戦士たちも多数参戦するこの大会の見どころを、WOWOW『UFC−究極格闘技−』解説者の高阪剛氏に語ってもらった。

ジョシュvs.ネルソンは当たったら負け

9.27UFC日本大会でロイ・ネルソンと戦う、日本でもお馴染みのジョシュ・バーネット 【(c)NAOKI FUKUDA】

――9.27「UFC JAPAN 2015」の見どころをうかがいたいのですが、まずはメインイベント、ジョシュ・バーネットvsロイ・ネルソンですが、この試合はいかがでしょうか?

 この試合は、“日本版のTUF”とも言われた「ROAD TO UFC:JAPAN」のコーチ対決ですよね。あの番組を通じて、ジョシュはものすごく親身になるコーチで、ロイ・ネルソンはそこまででもない、というイメージができたと思うので、どうしても「がんばれ、ジョシュ」という感じにはなると思うんですよ(笑)。

――まあ、ジョシュチームの選手はみんな、コーチに心酔してましたしね(笑)。あの番組で、ジョシュの好感度がさらに上がったのはたしかです。

 ジョシュはもともと日本で活躍していましたしね。ただ、ロイ・ネルソンも去年、マーク・ハントと激闘を展開して、“すごい試合をする選手”という認識がされていると思うので。どちらにしても、注目される試合になることは間違いないですよね。

――最近のUFCのトップ戦線ではある種珍しい、2人のパーソナリティが日本のファンもよくわかってる_スター同士の闘いですよね。

 そこに自分はすごく興味があって。どれくらい一般層や、あの番組を観て興味を持った人たちが会場に来るのかどうか。ああいうリアリティ番組を日本でやるというのは、これまでUFCにはなかったことなので、新しいファン層に、格闘技の面白さが届くきっかけになってくれたらと思いますね。

――試合のポイントはどのへんになりますか?

 これはもう、いつも言うように「当たったほうが負ける」試合ですね。ヘビー級なんで、まずそこがあるんですよ。ヘビー級の拳っていうのは、ほかの階級とは全然違うんです。パンチが急所に入らなくても、カスッたぐらいに見えても倒せるので。それでいて、ヘビー級の中でもとくにKOできる打撃を持っている二人ですから。観る側としても、緊張感を持って観てもらいたいですね。いつKOで決まってもおかしくないですから、そこを見逃さないように。

――でも、ロイ・ネルソンって、フィニッシュブローはオーバーハンド一本槍じゃないですか。それがわかってるのに、みんなあれをもらってKOされてしまうのは、何か秘密があるんですかね?

 まずひとつ言えるのは、ロイ・ネルソンがすごく打たれ強いということがあると思うんですよ。ロイは必ず相手の打撃をもらうんですけど、たとえば、あのミルコ(・クロコップ)の打撃をもらっても倒れないんですよね。

――ミルコの左ストレートをもらって、ヒザ蹴りもいいの入れられてましたけど、倒れませんでしたよね。

 ちょっとグラついても、すぐ復活する。なぜ、あんなに打たれ強いのかは、正直、自分もわからないんですけど。対戦相手も何をやったらロイは倒れるのか、もしくはどこでタックルに入ったらいいのか、迷いが生じるんだと思うんですね。それで迷ったときというのは、ガードが下がったり、顔が前に出たりするものなので、そのタイミングでもし、ロイはあのオーバーハンドを打ってるのだとしたら、ものすごく“総合格闘技”をやってるということですね。

プロ意識の高い2人に注目

注目はロイ・ネルソンの一撃必殺の右オーバーハンドがどこで炸裂するか 【(c)NAOKI FUKUDA】

――だから、あの見た目からすでに、相手を幻惑させてる気もするんですよ(笑)。動きが遅そうで速いし。

 タックルを切るのもうまいし、ヘタしたら自分からテイクダウンにいって、グラウンドで攻めることもできますからね。また、スタンドでは離れ際にアッパーを打ったり、ボクシング技術も実はありますからね。

――もともとは、グラップリングで名を成した選手ですもんね。なかなか黒帯を出さないと言われる、ヘンゾ・グレイシーから(2009年に)柔術黒帯をもらってるんですよ。その前にはフランク・ミアとか、ブランドン・ベラなどを破って、「グラップラーズ・クエスト」(2003年)という大会に優勝していたり。

 そういうバックボーンがありつつ、総合格闘技になると、ああやって打撃で倒すというのが性分に合ってるんでしょうね。

――また、寝技になっても自信があるからこそ、思い切っていけるし。

 自分から寝技にいくという選択肢もありますしね。いわゆるマット・ヒューズポジションからパウンドアウトを狙うというのが必勝パターンのひとつですから。あれも相手からしたら、テイクダウンが取れなくて、ガス欠になったところを仰向けにされて、サイドポジションを奪われるということがよくあるんですよね。だから、ロイはそこを目指して試合を組み立てることも可能なんですよ。相手はきっと、そこに気づいていない。オーバーハンドを警戒していたら、いつの間にか金網際でサイドで張り付けになって、腹の肉が顔に乗っかって動けなくされているという(笑)。

――そんなロイに対して、ジョシュはどんな戦法が考えられますか?

 ジョシュはどちらかというと、すごく緻密に試合を組み立てることが可能な選手なんですよ。打撃にしてもしっかりジャブを入れて、ガードの隙間を縫ってストレートやアッパー。そこから組みついて、首相撲も強いですからね。そこに細かいテイクダウンも混ぜて。あとは、とにかく寝技が強いので、それは相手にもプレッシャーになるでしょうね。ロイも寝技は強いですけど、ジョシュに上になられたら、正直、厳しいと思います。

――では、ポイントはいかに打撃で戦えるかどうか。

 ロイからしたら、どのタイミングで右のオーバーハンドを出すか、ですよね。相手が元気なときはブロックされてしまうので、ブロックされないタイミングで右が打てるかどうかが大きいでしょうね。まあ、勝負のポイントとしてはそういったところなんですけど、プロ意識がすごく高い2人が試合をするので、見どころがある試合になることは、もう間違いないですよ。

ムサシを通じて次世代の怪物を発見!?

日本でも活躍した実力者ゲガール・ムサシは、UFCのデイナ・ホワイト代表がその才能を認めるユライア・ホールと対戦する 【(C)Photo Courtesy of UFC】

――続いてはセミファイナルでは、PRIDE、DREAMでも活躍したゲガール・ムサシが、ひさしぶりに日本で試合しますね。

 そうですね。自分なんかは、ゲガールが観られるの楽しみなんですけど、相手がユライア・ホールになったということが、すごく興味を増しましたね。

――どういった点でですか?

 ゲガールって、日本で最初にDEEPに出たとき(2005年12月)から、ベーシックな技術がものすごくしっかりした選手だったんですよ。だから、そもそも格闘センスがあって、なおかつ経験を積んできて、いまの場所にいるということがあると思うんですけど。一方のユライア・ホールは、格闘技のセンスはすごくあると思うんですけど、そこまでキャリアは積んできていない。だから“出始めの頃のゲガール・ムサシ”と、ムサシ自身が対戦するような状態になるんじゃないかと思いますね。身体能力もものすごく高い選手ですからね。

――あのUFC・デイナ・ホワイト代表が「ジョン・ジョーンズになれる才能を持っている」と言うくらいですからね。

 ゲガール・ムサシは、そういう才能溢れる選手を切り崩す能力はもちろん持ってると思うので、ポイントは、ユライア・ホールの能力が、ムサシの能力を超えるかどうか、ですね。

――ユライア・ホールが、どこまでその潜在能力を発揮するかだと。

 結構、そこがピンポイントで試合に出るんじゃないかと思うんですよ。例えば、ブロックする前に、ユライア・ホールが打撃を当てて、ムサシを倒すということもあるかもしれない。逆に、試合開始してすぐに、ムサシが相手の力を読み切ることができれば、試合を完全にコントロールすることも可能なんですよ。

――ムサシは達人系なところがありますからね。

 だから、ムサシがいかに早くそれを察知できるかというのが、この試合のポイントになると思いますね。もしかしたら、探っているうちに、ユライア・ホールの打撃をもらってしまうかもしれないし。

――ユライア・ホールのバックスピンキックとか、まさに一撃必殺ですもんね。

 そうですね。あの技をやれる選手はたくさんいても、あれでKOできる選手というのは、なかなかいないんで。当て勘という言葉がありますけど、それを超えた部分で、何か能力的に長けた選手じゃないかと思いますね。

――ユライア・ホールは、ムサシのようなインターナショナルな実績を持った大物と対戦するのは初めてですから、もしかしたら、この試合が覚醒するきっかけになるかもしれないですよね。

 そうですね。もともと才能がある選手なんで、1試合で化ける可能性っていうのは、ものすごくありますからね。

――では、日本のファンはゲガール・ムサシの強さはよく知ってると思いますけど、そのムサシを通じて、UFCの次世代の怪物を発見するきっかけになるかもしれない。

 モノサシになると思うんですよ。あのムサシの強さを頭に入れた上で観てほしい試合ですね。

――ゲガール・ムサシはDREAMでは、ぶっちぎりで強かったですもんね。

 正直、あれでも力を出し切ってないくらいでしたから。そのゲガール・ムサシ相手に、才能溢れるユライア・ホールがどんな戦いをするのか。すごく興味深い試合だと思います。

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