和田ら引退で真価が問われる中日 大改革へ、落合GMの新たな一手は?

ベースボール・タイムズ

名選手の引退で下ろされる一時代の幕

華々しい引退試合の一方で、中日の積年の課題である世代交代とチーム再建は待ったなしの状態になっている 【写真は共同】

 セ・リーグでは上位4球団による覇権争いが、いよいよ最終局面を迎えている。その熱気を帯びた戦いを、ただ蚊帳の外から眺めることしかできなかった中日は、すでに来季に向けた体制づくりに着手し始めている。手始めとして行われたのが、戦力の“選別”――。新チームに必要な人材と、そうでない人材とに分けられる中、球団の歴史に名を残した選手たちが次々と現役からの引退を発表した。

 地元の愛知・東邦高から入団して通算65勝を挙げた朝倉健太、在籍2年ながら代打の切り札としてファンを魅了した小笠原道大、さらに今年の6月に通算2000安打の偉業を達成した和田一浩、そして3020試合の最多出場の日本記録をマークした谷繁元信監督兼選手も、今季限りでの現役引退を発表。また、今季は2軍でも未登板だった元エースの川上憲伸の退団も濃厚で、去就を本人の意向に委ねられている50歳の“レジェンド”山本昌の今後も、現在のところは未定だ。

 小笠原は、引退を決断した理由として「自分のイメージしたものと現実とのギャップが少しずつ出てきた」と引き際の美学を話し、和田も「なかなか思うようなプレーができなかった部分と、まだまだできるんじゃないかという葛藤の1年だった」と語ったが、それでもまだまだ惜しむ声は多く、実際にプレーすればまだまだ戦力として計算できる存在であっただろう。だが、彼らは決断した。そして中日の“世代交代”という積年の課題が、否応なしに推し進められることになる。

若手台頭も定位置確保には至らず

 来季、間違いなく中日の世代交代は進む。だが、お世辞にも“満を持して”とは言い難い。

 確かに、今季は新たな戦力が台頭してきた。福岡ソフトバンクの育成選手から獲得した26歳の亀澤恭平が、移籍1年目から100試合以上に出場して存在感を発揮。6月27日に1軍昇格を果たした26歳のルーキー・遠藤一星は、ここまでショートで39試合にスタメン出場し、打率2割7分1厘の安定性に加えて4本塁打と長打力も垣間見せた。また、春先にはフルスイング自慢の27歳・福田永将が話題を集めて計6本塁打を放ち、07年の高校ドラフト1巡目の赤坂和幸も主に代打ながら打率3割超の高打率を残してアピール。そして“ポスト谷繁”には、3年目の杉山翔太と2年目の桂依央利がしのぎを削っている。ここまで多くの“新しい”名前が挙げられるシーズンは近年なかったことだろう。

 だが、いずれも定位置を完全に奪い取るまでには至っていない。現状ではベテランの力に頼る戦いを続け、攻撃力に勝る外国人勢の起用も多く見られた。実際のところ、若手陣が自らの実力でベテラン勢を押しのけたというわけではない。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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