山賀敦之が注目のラグビー漫画を語る 青春時代を思い出させる「ALL OUT!!」
部員が辞めてしまう時の主将の言葉が印象的
ラグビー界の人気者、山賀氏が「ALL OUT!!」を語った 【Photo by Yuka SHIGA】
私はあまり漫画は読まないんですが、「ALL OUT!!」は一気に読んでしまいました。題材がラグビーということと、主人公の祇園(ぎおん)が入るチームが無名校で、私も高校(朝霞西高)は本当に無名校だったのでイメージが重なりやすくて、いろいろ思い出しましたね。
――読んで印象に残ったシーンは?
すごく印象に残っているのは部員が辞めてしまう時に、赤山(せきざん)キャプテンが涙を流しながら「絶対に花園に行くから。その時は応援に来いよ」と約束するところ。あと、合宿に行くお金がなくて悩んでいる部員と、それを助ける仲間の話が良かったです。こういう葛藤もあったな……と胸が熱くなりました。
あと、「スクラムで10センチ押されたら、バックスは1メートル下げられるから、フォワードはスクラムをがんばる」というシーンがありましたけど、その気持ちはわかります。私は特に「スクラム」というスポーツをやっていたと思っていますから(笑)。ボールに触らないまま試合が終わることもよくありましたし、公式戦ノートライで終わってしまいましたから(笑)。
地道な努力を続けた高校時代
初めてタックルを成功させて喜ぶ祇園。ここからラグビーへの思いを強くしていく 【(C)『ALL OUT!!』雨瀬シオリ/講談社】
私もプロップとしては小柄だったので、スクラムの組み方も小さいことを利用してやっていました。祇園ほど気持ちは強くないですけど(笑)。彼は1巻でも、初心者なのに上級生にいきなりタックルしています。普通はできないんですけど、自分からぶつかっていけるのはすごいと思います。地道にタックル練習をして、だんだんできるようになるところも印象的ですね。
――ご自身の学生時代(朝霞西高−帝京大)と共通点は?
私はスクリューパスができなかったんですよ。経験者に教えてもらったんですが、高校の3年間できなかったです(笑)。大学に入ってできるようになったのですが、祇園くんも初心者から一生懸命練習して、できないことをできるようにしていく……というのは懐かしいですね。
私は高校に入ったときに学年で体重が2番目に重かったから1番になったんです。当時、身長は172センチで体重68キロですから、ぽっちゃりしているぐらいだったんですけど、それでも一番重い選手が3番、私が1番と決められてしまいました。結果的に、そのおかげで不器用だったのにプロップとして大学、社会人と行けたので良かったですけどね。
強豪校だった選手は練習がきつかったので「高校時代に戻りたくない……」という選手が多いですが、私はそんなことなくて楽しかったです。上下関係もなくて、仲が良くて、部活が終わってもみんなで遊びに行ったりして。試合前に朝練をするときも自発的にやっていたので、それは良かったと思います。
帝京大時代につかんだコツ
大学は何もかも違ったので衝撃を受けました。弱小校から来て、テレビで見た選手がたくさんいたので、「4年間やっていけるのかな……」と思いました。
大学に入ったときにスクラムをちゃんと組めなくて、毎日泣いてました。スクラムでいつも3番の人に首をとられて、嫌で嫌で仕方なかったんですよ。自分がダメだと練習にも迷惑をかけてしまうので。
体が小さかったので、ウェイトトレーニングを一生懸命して、毎日スクラムを組んでいたらある日突然、ひょこっと「あれ、これは組めるな」と思って。自分なりに考えて、先輩にアドバイスはもらっていましたけど、秘密特訓とかではなくて、地道にやっていたら急にコツをつかめたという感じでしたね。