ドルトレヒトのスタメンへ近づいた際 開幕5試合で過ごした濃密な時間

中田徹

今季初のフル出場で勝利に貢献

8月28日のオス戦で今季初のフル出場を果たした際(右)は、チームの1−0の勝利に貢献した 【Getty Images Sport】

 ドルトレヒトのファン・ウェルメスケルケン・際は、8月28日のオス戦で今季初のフル出場を果たし、チームの1−0の勝利に貢献した。

 オランダ2部リーグで3連敗中のドルトレヒトは序盤からオスを圧倒し、次から次へとビッグチャンスを作っていたが、なかなかゴールが生まれなかった。さらにドルトレヒトはギアを上げ、猛攻を仕掛けていたが、オスが一瞬のすきを突いてカウンターに打って出ようとした。だが、際はパスの出し先をしっかり読んでインターセプトし、MFヘルト・アレン・ロールダに縦パスを入れた。この瞬間、ドルトレヒトのショートカウンターのスイッチが入った。右へ流れたMFジェフェリー・フォルテスがクロスを入れ、ユルン・ルムがボレーで蹴り込んだ。

 ゴールへの流れを作った際は、喜びを隠し切れない。

「ワンタッチではたいてパスを出して、(その後の崩しからのゴールは)見ていて気持ち良かったです。インターセプトは自分でも本当に良かった。自分がボールを獲ったところから始まってゴールにつながった。ディフェンス陣にとっては、ああいうプレーが一番気持ち良いんじゃないですかね。今日、それを初めて味わいました」

 アディショナルタイムは3分。相手のロングボールをヘッドではじき、再び訪れたボールをクリアした瞬間、レフェリーのタイムアップの笛が鳴った。

「今日は、自分(のインターセプト)で始まり、自分で締めくくりました(笑)」

 勝利の喜びをサポーターと分かち合うため、選手たちは場内を一周する。際は、バックスタンドに友人を見つけた。2人は、試合に勝ったら“寿司コール”をすることを決めていた。見知らぬサポーターから渡された大きな応援旗を振りながら、際は「スーシー! スーシー!」というチャントを浴びていた。

 ハリー・ファン・デン・ハム監督は「ナイス・プレー!」と言って、際をたたえた。2−1で勝利した開幕戦で左サイドバック(SB)として先発出場した際は一見、順風満帆な開幕スタートを切ったかに見えるが、実際は第2節から4節までスタメンから外れていた。

苦い経験を成長の糧に

 第2節はエメンとのアウェーマッチ(0−1)だった。

「相手の右サイドには、昨季までドルトレヒトにいたリック・テン・フォールデがいた。彼はがたいが強くて足も速い。そこで(戦術的な観点から)センターバックタイプのクリスチャン・ハーヘン(現VVV)を左サイドに持ってきたのですが、それがうまく機能しなかった。僕が後半から入ったんですけれど、競り合いに全部勝ったんです。背が高い相手に間合いをとって、トラップする瞬間にパッと前に出たら、それがうまくハマってくれた。この試合は僕の中ではオッケーだったし、みんなも良い評価をしてくれた。これで、『次の試合は先発だ』と思ったら監督が交代してしまったんです」

 エメン戦後、テクニカル・ディレクター(TD)のマルコ・ボーヘルスが選手更衣室の中に入ってきて選手を叱責した。当時の監督、ヤン・エーフェルセは「選手を叱るのは監督の仕事。それをTDがやったら、誰が選手をかばうのか!?」と憤慨した。情熱家の2人は激しくぶつかり、エーフェルセはクラブを去った。

 ファン・デン・ハム新監督は、ドルトレヒトが前回、1部昇格した時に攻撃的なチームを作り、オランダ国内で高く評価された指導者だった。彼は今回、ドルトレヒトに復帰するにあたり、ヘラクレスからファード・アクタウという左SBをチームに招き入れた。際の願いはむなしく、第3節のフォーレンダム戦(1−3)は再びベンチスタートとなった。

「フォーレンダム戦で右SBをやったアーノルド(・デ・フレーフ)のサイドからミスが起きて前半2失点し、僕が後半から出ることになりました。しかし、僕が1回ミスし、失点してしまった。チームが1−2と追い上げてから15分後のミスで、それでチームの勢いがなくなってしまい、ゲームを壊す形になってしまった。それ以外のプレーは良かったんですけれど、失点は僕のミスでもあり、監督も少し重く見たと思う。こういう苦い経験こそ、成長の糧になるんですが、(第4節の)NAC戦は、フォーレンダム戦で失点に絡んだ僕とアーノルドが先発から外れた」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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