Who is ガビ・ガルシア? シウバを絞め落とした女子格闘家を直撃

長谷川亮

PRIDEやUFCで活躍したヴァンダレイ・シウバをチョークで絞め落とし、“世界最強の女子格闘家”の異名を持つガビ・ガルシア 【スポーツナビ】

 さまざまな柔術世界大会で実に14度の優勝を誇り、“世界最強の女子格闘家”と異名をとるガビ・ガルシア。188センチの長身で140キロ台の巨体を持ち無類の強さを誇ってきたが、MMAへの転向を決意し50キロの減量に成功(減量後は93キロ)。UFCの登竜門番組「TUFブラジル」にチーム・ヴァンダレイ・シウバの柔術コーチとして参加すればシウバを絞め落とし、アブダビのシーク王子など世界のセレブに柔術レッスンを行うなど逸話は尽きない。現在ではブラジルの雑誌の表紙を次々と飾るなど、セクシー格闘家としても話題だ。今回、日本に強い憧れを持ち、初来日を果たしたガルシアにインタビューを行った。

小さいころはイジメられっ子

15歳から始めた柔術では、2011年アブダビコンバット優勝など世界大会で14度の優勝 【(C)DFW 】

――日本にいらしたのは今回が初だそうでね。

 小さいころから日本に来ることが夢でした。柔術をやっているのでサムライや武士道、日本の歴史や古くからの文化に興味があって、ずっと来たいと思っていたんです。今回実際に来て、日本は予想以上に素晴らしい国だと思いました。

――今でこそこんなに大きいガビ選手ですが、小さいころはどんなお子さんだったのですか?

 小さいころから他の子に比べて体が大きかったので、そのせいでイジメを受けていました。そのため精神的に不安定になったり非常にストレスを感じていて、それを見た母親が何かスポーツをさせてストレスを発散させようということで7歳から柔道と柔術を始めたんです。柔道と柔術は同時進行でやっていたのですが、15歳になった時に柔道は辞めて、柔術1本に絞りました。

――やはりご家族もガビ選手のようにみなさん体が大きいのでしょうか。

 妹も同じぐらいの背丈で、両親もやっぱり背が高いのですが、誰もスポーツはしていなくて、家族でスポーツの道へ進んだのは私だけです。妹は勉強の方で頑張っています。

――そうした家系の中で唯一ガビ選手が格闘技の道へ進み、成功できたのはどうしてだと思いますか。

 私は昔暴力的なところもあったのですが、全てのエネルギーを発散できるのが畳の上だということにある時気がついたんです。気持ちが落ち着くし、柔術をやることで全てが満たされる。自分の全てを捧げられるスポーツだということに気づき、柔術を愛し始めたんです。

目標は世界ナンバーワンのMMA戦士

50キロの減量に成功したガルシア。ブラジルでは次々と雑誌の表を飾るなど強くて、セクシーな格闘家として人気を集めている 【(C)DFW 】

――現在“世界最強の女子格闘家”とも言われるガビ選手の毎日の過ごし方を教えてください。

 世界ナンバーワンの柔術家であるため、私は生活のほぼ100%を競技に費やしています。ですからパーティーに行ったり、バーやレストランに出掛けるということはほとんどなく、ほぼ100%が練習、週に6日は練習です。午前の部は柔術の練習、午後はボクシングかムエタイをやって、夜はフィジカルトレーニング、1日3回のトレーニングをしています。でも、これは私が自分で選んだことで、自分がやっている競技でナンバーワンになりたければ他のことを諦めなければなりません。だから私は同年代の女性のような生活は全くできないし、していません。でも、こうすることが自分にとって一番幸せに感じることなんです。週末の夜は友だちと会ったり家族と一緒にいて休むことに当てていますが、7年間はこういうペースでやってきています。こう言ってしまうと、練習ばかりで大変な生活だと思われるかもしれませんが、私は自分がやっていることを愛してますから全く苦にならず、逆に非常に幸せを感じています。

――今回日本にいらした目的を教えてください。

 もともと日本に来ること自体が私の夢で、来られただけでも夢の実現なのですが、日本の街並み、礼儀正しい人たちを見て素晴らしいと思いました。それと私は小さいころからPRIDEを見ていて、PRIDEに出ていた日本のファイターからサムライや武士の精神を感じて、私もいつか日本のMMAで活躍してみたい思っていました。ヴァンダレイ・シウバやK−1で戦ったブラジルの選手とも親しくていろいろ話を聞くのですが、「日本のファンが一番ファイターをリスペクトしているし熱狂的で、日本で戦った思い出が一番良かった」と、どのファイターも言っています。私もPRIDEが最高だったと思ってますし、PRIDEのテーマ曲が掛かる中で自分も同じようにリングへ向かうのが夢でした。今もそれをイメージするだけで鳥肌が立ちます。あのPRIDEの舞台というのは、戦ったことがあるファイターがみんな言うように、本当に火がつくというか、他とは比較にならないモチベーションがあったのだと思います。

――現在は打撃にも取り組み、そうしたMMAに挑むための準備はもうできているのでしょうか。

 多くの柔術大会で優勝して、自分には新しいチャレンジが必要だっていう声を頭の中で聞いたんです。それでまだMMAのオファーなんて何もない時に、自分で「世界ナンバーワンのMMAファイターになりたい」という目標を掲げました。それでMMAの体重カテゴリーに入れるよう、体重を50キロ落としたんです。全く先のことが分からないまま先走ってしまったかもしれませんが、ボクシングとムエタイも始めて、MMAの1つの体重カテゴリーに該当するところまで自分を持って来られました。

健康志向を保って50キロ減量

“世界最強の女子格闘家”の異名を持ちながらも、インタビュー中はカメラ目線でキュートなポーズ 【スポーツナビ】

――50キロもの減量はどのように進めたのですか?

 実際は食事法で、2年半掛けて50キロ落としました。そんなに特別な秘密の方法をやっているのではなく、メンタル面で健康志向であることを保てば、体も自然と変わってきます。1つ具体的に言うなら、17時以降はフルーツやお菓子など糖分を摂らないこと。これは他の人にはどうか分かりませんが、自分にはとてもよく効きました。もちろん有酸素運動はたくさんする必要がありますが、逆に私はそんなにウェイトトレーニングはやりませんでした。大切なのは目標を定めることです。私自身は部屋の壁に「世界ナンバーワンのMMAファイターになる」と自分で書いて貼っています。それを朝起きたら見て、毎日努力しています。ですから目標は「このサイズのズボンをはきたい」とか、「何キロ痩せたい」とかでいいので、とにかく目標を定めてそれに向かってやること。だから朝起きて、まず壁に書いてあるその目標を見るといいと思います。ダイエットでなくても「弁護士になる」とか「お医者さんになりたい」でもいいですし、自分はこの方法でうまくいきました。あと、これまで勝ち取った優勝メダルはどこにも飾らないで全部閉まっておくんです。過去の自分は振り返りたくないし、過去は置いて、常に前を向いて将来に向かってやっていく。今、自分が向いているのはMMAチャンピオンになるということです。

――最後となりますが日本のファンにメッセージをお願いします。

 今までは日本に来ることが夢だったのですが、それが叶ったので次の夢は日本で戦うことです。それが実現するよう最善の努力と特訓を続けていきたいと思いますが、本当にそうなればファンには最高のMMAのショーでお返ししたいと思います。日本の人たちはすごく幸せそうにしているし、着てる服や外見もとてもカラフルです。私もその雰囲気に感化されてモチベーションが高くなったし、すごくうれしく、幸せな気分になりました。トーキョーが世界で一番好きな街です。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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