遠藤翼、米国で10番を背負う若き日本人 留学で身に付けたピッチ内外の“打開力”
無名の存在からMLSのドラフト候補生へ
米国にある名門大の強豪サッカー部で活躍を見せる遠藤。MLSのドラフト候補生との呼び声も高い 【University of Maryland】
遠藤翼、JFAアカデミー出身で現在21歳の若者だ。高校時代のポジションはボランチで、「テクニックがあり、チームのために走ること」が特徴だったが、現在のチームではトップ下、または右サイドの攻撃的なポジションで起用されることが多い。留学したことにより「持っていた特徴に加えて、自分で展開する力も身に付けることができた。パスであったりドリブル、展開力でアクセントを付けることができると思う」とその成果について話す。自身をバルセロナのペドロに例えたように、裏に抜け出したり、犠牲になる動きが持ち味で周りを使うよりも、使われるタイプのプレーヤーだ。
彼は英語をまったく喋ることができない上に、日本人がほとんどいない状況で1年生からレギュラーをつかみ取り、2年生時には全米選手権準優勝に大きく貢献した。「留学をしていなければ、Jリーグのトライアウトを受けていたかもしれない」と語る無名の選手から、4年生になる今年は、来年のメジャーリーグサッカー(MLS)のドラフト候補生とまで言われようになった。
米国留学の中で、遠藤はどのように成功をつかんだのだろうか。そして、興味深いキャリアを歩む彼は留学で何を学んだのか。
「自分は誰なのかをサッカーで伝えた」
大学3年時には学業とスポーツの両面で好成績を残した選手のみが選ばれる“All Big 10 Academic List”に選出された 【University of Maryland】
大学では社会学を専攻しており、移民国である米国ならではの差別問題などを学んでいる。学業は当然おろそかにはできず、実際に成績が悪いと部活動はできなくなってしまう。しかし遠藤は学業にしっかりと取り組み、大学3年時には学業とスポーツの両面で好成績を残した選手のみが選ばれる“All Big 10 Academic List”に選出されている。27名いるサッカー部員の中で、選出されたのは遠藤を含む2名のみということからも、遠藤が留学後いかに努力を重ねてきたのかが分かる。
そんな厳しい環境を自ら求めて米国を選んだ遠藤は、言葉の通じない中でも、チームメートと積極的にコミュニケーションを図ることで乗り切ってきた。
「自分で努力したことが2つあって、1つは喋れなくても自分が知っている限りの知識を使い、自分からチームメートに話しかけに行くことです。チームの中でアジア人は1人だけだったんですよ。自分のことを知ってもらって打ち解けないと、価値観も自分のことにも興味を持ってくれないので。話かけに行くことで、助けてくれたチームメートもたくさんいます。
それとサッカーの部分。こっちでは無名なので、自分の持っているものを全部出さないと、チームメートとして認めてもらえない。最初の練習から、自分はこういうことができるんだとか、自分が持ってる能力を最大限に生かしました。チームメートに自分は誰なのかをサッカーで伝えた、そういう部分から打ち解けたというのもあります」