萩野公介、弱い自分と成長した自分 収穫の2シーズンを振り返る

田坂友暁

萩野公介が躍進の2年間とリオデジャネイロ五輪への青写真を語った 【中村博之】

 2013年のバルセロナ世界選手権は、銀メダルが2個。14年は8月のパンパシフィック選手権、9月のアジア大会では金メダルを含む多くのメダルを獲得したが、両大会とも世界大会ではない。日本競泳界のエース・萩野公介(東洋大)は、実は“世界”と名がつく大会では一度も勝ったことがない。

 しかし、12月3日から行われたカタール・ドーハでの第12回世界短水路選手権で、ついにそのときは訪れた。400メートル個人メドレーでは、ライバルの瀬戸大也(JSS毛呂山)に敗れて銀メダルだったものの、200メートル個人メドレーで1分50秒47の短水路日本新記録を樹立し、短水路とはいえ念願の“世界大会”での金メダルを獲得したのだ。

 12年のロンドン五輪400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得して以来、常に注目を集めてきた萩野は、世界短水路選手権の結果を含め、自分の成長をどのように捉えているのだろうか。あらためて13年、14年の2シーズンを振り返ってもらった。

400個メは「自分の根っこの弱い部分が出た」

200メートル個人メドレーではロクテ(左)、瀬戸(右)を抑えて金メダルを獲得 【中村博之】

 世界短水路選手権を終えて、萩野が強く意識したのは、強くならなければならない、ということだった。

「基本的にチャンピオンより、チャレンジャーのほうが気持ちは楽だと思うんです。チャレンジャーには、勝ちにいく、という明確な目標がある。でもチャンピオンというか、常に世界で勝っている選手というのは、常に何かを背負いながら泳いでいて、絶対に負けられないレースを何回も経験しています。そういった苦しさや辛さを乗り越えていける選手が、強い選手なんだなって。だから、強い選手は精神的にぶれない自分を持っています。状況によって柔軟に対応しながらだとは思うんですけど、やっぱり芯がしっかりしていて、気持ちで負けないのが強い選手だと思います」

 今大会、萩野は“400メートル個人メドレーで世界記録”を目指してドーハに乗り込んできた。しかし、その目標は達成できなかっただけでなく、ライバルの瀬戸にも敗れてしまった。だからこそ、本当の意味での強い選手を目指さなければならないと感じたという。

「なかなか自分に絶対的な自信を持てない性格ですし、人間の根っこ、という部分ではすごい弱い部分があるんです。調子は悪くなかったんですけど、400メートル個人メドレーではこの自分の根っこの弱い部分が出たレースだったと思います」

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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