萩野公介、弱い自分と成長した自分 収穫の2シーズンを振り返る
「がむしゃらに」複数種目で戦い学んだこと
昨年の世界選手権は複数種目に挑戦。「目標に対してうまくアプローチできなかった」と言うものの収穫も多かった 【中村博之】
「今思い返せば、昨年は大した実力もないくせに、ただがむしゃらにいろんな種目に出るタフな選手になりたい、という思いだけで突っ走ったような感じでしたね」
しかし、自分の選択に後悔はしていない。そこから学んだことのほうが大きかったからだ。今年は“個人メドレーで絶対的な力をつけること”を目標としていた。この目標を立てられたのも、昨年の世界選手権で複数種目を戦ったからこそ、見つけられた目標だった。
「結果として、目標に対してうまくアプローチできなかったのかな、という思いもあります。でも、得たものはたくさんありました。たとえば、今のベストは400メートル個人メドレーの4分07秒ですけど、ピークを合わせればそれ以上のタイムを出せる自信はあります。そういうふうに考えられるようになれた、自信がついた、というのも、今年に自分が成長した部分のひとつだと思います」
今大会で100メートルバタフライを短水路ながら49秒台で泳げたことや、アジア大会の200メートル自由形で孫楊(中国)、パク・テファン(韓国)といった世界を代表する選手を倒せたことは、それぞれ課題としている種目の強化がうまくいっている証拠と捉えられる。
「階段を1つずつ上っている感じですね。まだまだ先に進まないといけないですし、やるべきことはたくさん転がっているんですけど、まずはひとつずつやるべきことをやっていかないと、とあらためて実感しています」
15年は“勝つ”ことにこだわる
「(リオデジャネイロ五輪の前年となる)来年は世界選手権で勝ちたいですね。“勝つ”ことをしたい。五輪前の世界選手権はレベルが高くて、そこで勝った選手が翌年の五輪の金メダル候補になりますから、そこで“勝つ”ことが、五輪につながると思います」
目標を達成することは大切なこと。でも、萩野は目標を達成するために積み重ねた課程と、その結果を踏まえて何を得たのかが、何よりも大切だと話した。
「複数種目で金メダルを含む複数のメダル獲得、という来年の目標は変わりません。でも、今自分が思っているのは、この目標が達成できるかどうかではないんです。もちろん目標は達成したいですけど、きっと思い通りに勝てないこともあるでしょうし、反対に運良く勝てることもあると思います。それを経験して、何を得られるのか。それが五輪につながる大切なことなんじゃないかなと思っています。だから、来年は勝つための努力が一番重要なのかもしれませんね」
目標に縛られることなく、目標に向かって努力した過程や、そこから生まれた結果、見るもの、感じるもの、そのすべてを大きな経験として受け入れ、先に進む糧とする。まだまだ成長過程にある萩野は、来年にはまた、まったく新しい姿を見せてくれることだろう。そのときを今は、ただ待ちたい。