「世界の舞台でもう1度完璧な演技を」=フィギュア小塚崇彦インタビュー 後編

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現役続行を決断した小塚。「世界の舞台でもう1度完璧な演技をする」という目標を胸に、研さんを積んでいく 【坂本清】

「ここで引退するのは惜しいと感じた」という小塚崇彦(トヨタ自動車)だが、やはり去就に関しては迷いがあった。織田信成(関西大大学院)や安藤美姫(新横浜プリンスクラブ)といった同時代を共に戦った仲間も昨年末の全日本選手権を最後に表舞台から退いている。1月の四大陸選手権を戦いながら「自分が競技を続ける理由は何だろう」と問い続けた。

 現役続行という決断に至った理由は「へそ曲がり」と自ら分析する自身の性格にもよる。2位という結果を残したことに加え、仲間が引退する中、あえて逆の道を進むことに面白さを感じたのだという。そんな小塚が目標としているのは「世界の舞台でもう1度完璧な演技をする」こと。来季に向け、4回転ジャンプをトゥループ以外にもう1種類増やすことも検討している。激動のシーズンを終えたばかりだが、小塚の目は早くも未来に向けられていた。

「引退は考えたけど、へそ曲がりだから……」

競技を続ける上で原動力となっているのは「フィギュアが好き」という気持ち。スケートを通じて、人生の勉強をしていると語る 【スポーツナビ】

――現役続行をはっきりと決めて、晴れやかな気持ちですか?

 僕自身はへそ曲がりで、みんなが「イエス」と言ったときは「ノー」、みんなが「ノー」と言ったときは「イエス」と言う性格なんですね(笑)。よく分からないんですけど、「何でスケートをやっているんだろう」と考えたとき、試合に出て楽しかったからとりあえずまだ続けたいと思ったんでしょうね。四大陸選手権のあとに現役を続けると言ったものの、自分の気持ちはちゃんと向いているのかといったら、よく分からないような感じでふらふらしていました。

 やはり、引退も考えましたし、1つの区切りだとは思いました。織田くんも安藤さんも引退していく中、「自分が競技を続ける理由は何だろう」と考えながら四大陸選手権を戦っていて、みんなきれいにやめていったので、何て賢いんだろうと(笑)。「自分は何てバカなんだろう、全日本でやめちゃえばよかったのに」と。ただそう思ったときに、「いや、だからちょっと続けてみたいな」と自分の中で感じたんです。みんなが行っていない領域なわけなので、「これって面白いな」と思って続けることにしました。そんな状況で世界選手権があって、あのフリースケーティングの演技で終ってしまうのは、僕の中では「まだまだ早いんじゃないの」と。世界の舞台でもう1度完璧な演技をするところまで行けたらいいなと思ったので、今は気持ちが引き締まりましたし、すっきりとしましたね。

――競技を続ける上で小塚選手を支えているもの、原動力となっているものは何なのでしょうか?

 やはり「フィギュアスケートが好き」という気持ちが一番かなと思います。何だかんだいろいろなことが起こりますけど、だからこそスポーツでしか体験できない楽しみや悲しみがありますし、さまざまなことを経験できるということをスケートを通じて、人生の勉強をしている感じかなと思います。それが自分の中で続けていく一番の原動力になっていますね。

――ソチ五輪に懸ける思いは相当強いものがあったと思います。

 そうですね。1度五輪を経験して、本当にあれほど思い切ってできる場というのはないなと。「スケートをやってきて良かった」と思えるところですし、そういう場にもう1度行きたいと思っていたので、出場できなくてすごく残念でした。あとになって「五輪への思いは強かったんだな」と感じています。

――ソチの氷が柔らかいという話もあったのですが、見ていて滑りづらそうな感じはありましたか?

 僕が昨シーズンのグランプリファイナルで滑ったときは、中京大に近いような氷でした。中京大の練習場はフィギュアスケート専用なので氷が柔らかいんですね。そういった氷に近いと聞いていたので、中京大で滑っている選手にとっては滑りやすかったんじゃないかと思いますが、いろいろと難しい部分はあったみたいですね。

「一緒に戦っている仲間はお互いを高め合う存在」

試合のときはライバルだが、お互いを高め合う存在として、一緒に戦う仲間とは非常に良い関係を築いている 【坂本清】

――現役を続けると決めて、「新しいチャプター(章)の始まり」ということを言っていましたが、今度はどんなチャプターにしていきたいですか?

 どうなっていくんでしょうね。流れに任せるような感じになってしまうと思うんですけど、その中でも自分でいろいろと決めながらやっていきつつ、相変わらず周りの人に支えてもらいながらというのが僕のスタイルと言うか、スケート人生だとも思うので、周りの人と相談しながらやっていきたいです。ただ競技選手としてやっていて、後々はプロになっていく。その狭間に来ているのかなと思っているので、それが新しいチャプターのキーワードになるんじゃないかと思います。

――普段一緒に戦っている選手は皆さん非常に仲が良さそうに見えますが、小塚選手にとって彼らはどのような存在ですか?

 普段はスケートの話もしないですし、適当にご飯を食べに行って、カラオケに行ってというような感じです。試合のときはライバルですが、すごく良い関係だと思います。なあなあにもならないし、ぎすぎすもならない。良いバランスを保って、みんなで高め合いながらできていますね。ただ試合のときに会って、ただ戦って、あいつに負けたくないからと言ってやっているだけじゃなくて、本当にお互い高め合いながらやっている感じです。

――ちなみにカラオケは何を歌うんですか(笑)?

 何でも歌いますよ。レミオロメンが好きで『粉雪』をよく歌いますね。あとは『夢の蕾』とか『3月9日』とか。幅広い世代を網羅しています(笑)。上は『サボテンの花』(チューリップ)や『仮面舞踏会』(少年隊)とか。

――けっこう幅広いですね(笑)。

 最近の曲では『恋するフォーチュンクッキー』(AKB48)は歌いますし、踊れますよ(笑)。

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