「世界の舞台でもう1度完璧な演技を」=フィギュア小塚崇彦インタビュー 後編
「近代化と伝統がうまく融合したときに競技が高められる」
「密度が濃くて長かった」今季を通じ、小塚は自分の気持ちをコントロールする術を学んだ 【坂本清】
他の競技になれば、コンディションの作り方とかはやはり違います。個人スポーツとチームスポーツでは気持ちの持ち方も全然違いますし、いろいろな競技を見ることによって、スケートというものを客観的に見た場合、「これってスケート独特なものなんだな」とか気づくことができる。これはずっとやってきたことだから自然とこういう形になってきたのかなとか、そういうのを考えるのが面白いなと。それこそ新しく変えるところがあるとかないとか考えていくのも面白いかなと思っています。
――練習方法などで参考にしている部分はありますか?
体操の内村(航平)君の練習を見に行ったんですが、そこではビデオを撮っていて、何回も何回も勝手に技の映像が再生されるようになっています。スケートはそういうのが全くない。スケートは1つの場所でやっている競技ではなく、60メートル×30メートルのリンクで動き回っているので、それを撮って再生しながらというのはなかなかできない。時間との戦いになってくるので、難しいとは思うんですけど、そういうのが導入されてもいいのかなと。今は先生たちが気になったときに、iPadを見てというぐらいで、それもあまり慣れていないというような感じです。それこそ近代化というのもありだと思うし、かと言って伝統をなくす必要もないので、それが両方うまく融合したときに、スケートという競技が高められるのかなと思っています。
――これまでのスケート人生と比べて、今季はどのようなシーズンでしたか?
本当に長かったなと(笑)。密度が濃いだけではなく、密度が濃くて長かったですね。密度が濃かったら普通短いものですけど、それが長かった。1回気が抜けたときもありますし、また気が入って、また気が抜けて、また気が入ってとシーズンが終わったんだか、終わってないんだかよく分からない状況で……。いろいろなシチュエーションがあったので疲れました(笑)。
――お疲れ様でした(笑)。今シーズンを経験して、一番学んだことは何でしょうか?
自分の気持ちをどういうふうにコントロールするかということですね。やっぱりアップダウンがある中で、最終的に試合のときにそういう状態で入ったらだめだと思うし、それをどうコントロールして、試合に向けてやっていくかとか。あとは世界選手権に出て、世界の今のレベルを知ることができたのは大きな収穫だったんじゃないかと思います。
「4回転を2種類できるようにしたい」
より上を目指すために、トゥループのほかにもう1種類の4回転ジャンプに挑戦するプランを明かした 【坂本清】
今はジャンプですよね。4回転ジャンプを何種類か入れるプログラム構成になっていないといけないので、1種類だけではなく、2種類はできるようにしたいなと思っています。
――4回転をもう1種類ということはサルコウを?
あまり僕、サルコウが好きじゃないんですよね。トリプルを1番最初に跳べたのはサルコウなんですけど、そんなに好きじゃないんですよ(笑)。
――笑。では1番好きなジャンプは?
トゥループもあまり好きじゃなくて、ルッツとかフリップがけっこう好きなんですよ。だからその2つに練習の比重を置いていったらどうにかなるんじゃないかと思っているんですけどね。早く取り掛からないと。来シーズンに入れるとしたらものすごく練習しないといけないので、そうすると足が問題になってくる。出水(慎一)先生と相談しながら、「出水先生、よろしく」という感じでやっていきたいと思います(笑)。
――これまで練習してきたことはなかったのですか?
たまにやったりはするんですけど、そういうことをするときに限ってけがをしたりする。やっぱり高度な技術になってくるとけがをする確率が高くなってくるんですよね。それまで僕はあんまりケアに重点を置いていなかった。寝て起きて練習に来て、ウォームアップはちょっとだけして、ジャンプに入って、終わってそのままストレッチをしているんだかしていないんだか分からないような状態で帰って、という感じだったので、それがけがの原因にもなったと思います。今はそういうこともないので、新しく始めても体は持ってくれるんじゃないかなと。(幸運を祈るという意味のクロスフィンガーを作りながら)そう願いながら、練習していきたいですね。
――最後の質問です。4年後まではさすがに考えていないと思いますが、今後目標としていくことはどんなことになりますか?
4年と言われたときに実感があるかと考えたら、僕の中では全然実感が湧かないです。だからとりあえずは1年1年を考えるというのと、あとは1試合1試合少しずつやっていくしかないんじゃないかなと思います。まずは来シーズンの頭に合わせるようにしたいと思います。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)