辺境の地・エストニアで輝き放つ日本人=CL出場に思い寄せる和久井という男

木之下潤

エストニアでCL本戦出場に挑む

現在エストニアでプレーする和久井。CL本戦出場を目指して予選に挑む 【写真=赤松洋太】

 すでに、2013ー14シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)の戦いは始まっている。

 6月24日に、スイスのニヨンでCL予選1・2回戦の組み合わせ抽選会が行われた。CL出場枠は、各国が残した過去5年の成績をもとにUEFA(欧州サッカー連盟)が算出したランキングで決定する。普段、我々が目にする戦いはグループリーグからが多い。だが、その枠は当然、ランキング上位の国が多数有している。14位以下に位置する国のクラブは、予選から勝ち上がらなければならない。しかも16位以下の国のクラブは、予選に出場できるのが、前シーズンにリーグ優勝を果たしたクラブのみ。まさに弱肉強食の世界だ。

 ヨーロッパ北東部にあるエストニアに、CL本戦出場に挑む日本人フットボーラーがいる。昨シーズン、リーグ優勝に導いたJKノーメ・カリュの和久井秀俊だ。チームでは、セントラルMFやトップ下で起用され、「ベストイレブン」「ベストMF」「リーグ準MVP」に輝いた。とはいえ、日本では全く無名のプロフットボーラーである。少し情報不足のため、彼の経歴を補足させていただく。

 和久井は、高校卒業が確定してからすぐにブラジルに渡り、プロを目指した。何のつてもなかったが、さまざまなクラブに自ら売り込みをかけ、そこで結果を残し、プロ契約を勝ち取った。2年半ブラジルでプレーした後、一時は日本に帰国。アルビレックス新潟に在籍するも実力を発揮できず、シンガポールに活躍の場を求める。1年間アルビレックス新潟シンガポールでプレーするが、もともとヨーロッパでプレーしたいという目標があり、渡欧することを決断。その後、スロベニアの2部リーグで戦うファクトールへの移籍を果たす。同シーズン、プロ初のリーグ優勝を経験し、1部昇格に貢献した。

8カ国11チームでのプレー経験

「2部でしたが、プロ生活で初めて優勝を経験しました。これがヨーロッパでプロとしてやっていく自信になった」と、そのころの思いを語る。このシーズンを機に、和久井は自らが目標に掲げるCL本戦出場を念頭に置いたキャリアアップを図ってきた。思い描いたキャリア設計は下記である。

1.18〜27歳の10年間で、選手としての商品価値を生んで高める
2.27歳から、築き上げてきた選手としての商品価値を広めて伝える

 オーストリア、チェコ、ベラルーシなどを渡り歩き、現在のエストニアに至る。8カ国11チームでプレーした経験を持つプロフットボーラーは、ほかにいないだろう。日本のサッカーエリートとは明らかに一線を画す歩みであることは間違いない。

 だが、和久井はクラブとの契約も自らが積極的に行うなど、すべての経験をプロフットボーラーとしての糧に変えてきた。現在は、移籍など最低限のサポートは受けているが、香川真司や内田篤人ら日本代表選手のように決して恵まれた環境にいるわけではない。だからこそ、CL本戦出場に対する思いは人一倍強い。

1/2ページ

著者プロフィール

1976年生まれ。福岡県出身。大手出版社を経てフリーに。編集者として「年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「グアルディオラ総論」(ソル・メディア)などの書籍制作に幅広くたずさわり、文筆家としてジュニアを専門に「サッカー×教育」で執筆活動を行う。地域のサッカークラブ・スクールのコンサルタントを務め、地域創生活動を始める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント