羽生・高橋、この敗戦を世界選手権の起爆剤に=四大陸選手権・男子FS
まさかの結果に終わった日本勢
「最悪」と話したフリー。演技終了後、キスアンドクライで思わず頭上を見上げる高橋 【坂本清】
一方、SP4位からの逆転を狙った高橋大輔(関大大学院)もジャンプでミスを連発し、フリー140・15点、合計222・77点で表彰台を逃すどころか、まさかの総合7位にダウン。また、SP8位の無良崇人(中京大)も無難に演技をまとめたものの得点は伸びず、変動なしの総合8位だった。
今年の四大陸選手権は地元・日本開催でもあり、最大のライバルと目されていた前季王者のパトリック・チャン(カナダ)が欠場。昨年12月のグランプリファイナルではそのチャンを抑え高橋と羽生が1位・2位を争った実績を考えれば、今大会も日本人によるV争いは必至、表彰台独占もあるという戦前の予想だった。しかし、ふたを開けてみれば、羽生がなんとか面目を保ったのみで、高橋に至っては「全部が全部、最悪。自分でも信じられない」という惨敗だった。どこで歯車が狂ってしまったのか?
高橋は7位 長光コーチ「いい喝が入った」
「ずっと試合が続いていて緊張していたので、どこかで緩めないといけないと思ったんですが、緩めた後の調整でちょっと時間が足りなかったかなと思います。大きな試合のための準備になっていなかった」
もともと十分な調整期間が取れなかったことに加え、今回はSPのプログラムを変更して臨んだ初の大会。長光コーチによればSPの練習は「2週間したか、しないか」という程度なのだから、二重に時間が足りていなかったわけだ。
ただ、敗因がハッキリしている分、長光コーチに落胆の色はない。「(3月の)世界選手権に向けて、いい喝が入りました」と笑顔さえ浮かべる。新SP『月光』に関しても、「練習でうまく入れた時は伸び伸びと滑れている。もう少し時間をかければ、良いものになる」と太鼓判。肝心の高橋自身も『月光』には「前回のSPよりやりやすい」と手応えを感じており、すでに「やるしかない。普段の練習でも100パーセントで行く」と、大一番へ向け気持ちを切り替えている。
羽生、逆転許すもオーサーコーチ「この結果を糧に」
唇をかみしめながら、得点発表のモニターを見つめる羽生(左)とオーサーコーチ 【坂本清】
「ユヅルにとって重要なのは、今日の経験を経て強くなること。彼はとても強い人間だということが分かっているので、この結果を糧にさらに強くなってくれると思う。今日学んだこともたくさんあるし、きっと彼はさらに強くなるよ。今回の結果は決して恥ずかしいものではない」
羽生の調子が良かったことはオーサーコーチも認めており、だからこそ「今日の演技にはビックリした。彼の平均的な力を出せば簡単に勝てた試合だった」と本音も明かした。と言って、今回の出来にガッカリしているわけではない。大きな大会を勝つためには今回のような経験が必要になるのだという。
「キム・ヨナを教えていたときもそうだったが、グランプリファイナルで2位に終わったことをモチベーションに五輪に臨むことができたように、私自身の経験から知っているんだ。むしろ、今日の演技が完璧だったら、逆に心配していたと思う。ユヅルの目からは強い決意を感じているし、世界選手権まで4週間もあるからね。きっと彼は世界選手権で期待に応えてくれると思うよ」
高橋、羽生に共通するのは、今回の敗戦はこの先まで尾を引きずるネガティブなものではないということ。むしろ、3月の世界選手権(カナダ)への良い起爆剤になるだろう。この2日間大阪でもれた溜息は、きっと1カ月後のカナダでは大歓声に変わるはすだ。
「目標を合わせているのは世界選手権。課題を修正しながら完成形を目指したい」(羽生)
「今回の結果を世界選手権につなげないといけない。こんな演技をしていたら絶対ダメですから」(高橋)
何より、日本の2枚看板が逆襲へ早くも闘志を燃やしている。
<了>
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