羽生結弦、優勝の要因と今後への課題 高橋大輔とのライバル関係が生む“進化”

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レベルが高かった優勝争い

ハイレベルな戦いを制した羽生(中央)。先輩たちの存在が「自分を高めてくれる」と話した 【坂本清】

「最終滑走ということでプレッシャーも大きく、最初の2つのジャンプを失敗して、少し心が折れそうになったんですが、声援を聞いて力が湧きました」

 第81回全日本フィギュアスケート選手権で初優勝を飾った羽生結弦(東北高)は、安堵(あんど)の表情の中に、少しの悔しさを浮かべながら、自身の演技を振り返った。2位の高橋大輔(関大大学院)に10点近い差をつけて迎えたフリースケーティング(FS)。羽生は前日のショートプログラム(SP)で得た貯金を生かし、なんとか逃げ切りに成功した。しかし、演技冒頭の4回転トゥループはステップアウト、4回転サルコウでもバランスを崩すなど、課題とされてきたFSでまたしてもミスを犯してしまった。

 その影響もあってか、完璧な演技を披露し、興奮状態だった前夜とは打って変わり、冷静な面持ちで優勝の喜びを語った。

「全日本のメダルはやはり価値が大きいです。これまで先輩たちの背中を追いかけてきて、昨年は3位をとることができました。それもうれしかったんですけど、今回は先輩たちをSPで少し抜き、このメダルをかけることができました。先輩に少しでも追いつけたという意味でうれしいです」

 羽生の最終的な総合得点は285.23。これは昨年度優勝した高橋のスコアを30点近く上回る点数だ。一方、2位の高橋もFSで猛追を見せ、280.40を記録。いかに今季のレベルが高かったかを物語る数字である。

今季の急浮上につながったSP

今季はSPで世界最高記録を2度更新 【坂本清】

 それでは、羽生が優勝できた要因はどこにあったのか。羽生はこう分析する。

「一番はSPでいい演技ができたことだと思っています。今季はSPでいい得点を出すことができています。今回は高橋選手がミスをして、点差を広げることができたので、それが最終的に生きました。FSでも、体力面で最後までもちましたし、プログラムの構成が難しくなっていても、ディダクション(減点)がつかずにいけるようになった。今までとはそこが違ったと思います」

 今季、羽生はグランプリ(GP)シリーズのSPで2度、世界歴代最高得点を更新している。また今大会のSPでも、非公式ながらそれを上回るスコアを出した。手足が長い自身の八頭身スタイルを生かした洗練されたプログラムで、高得点をたたき出しており、それが今季の急激な浮上につながっているのだ。

 もちろん、それには今年の5月から師事しているブライアン・オーサーコーチの存在が大きい。「試合に対するペース配分なんかを変えてくれましたし、直前の6分間の練習や公式練習で自分をすごくコントロールしてくれる。けっこう僕は無茶してやっていたタイプ。でもブライアンは、何をやるにしても回数を決めてくれるので、すごく体のためにもなっているし、練習効率も上がっています」と絶大な信頼を寄せている。

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