「まだ投げ続ける」元巨人・門倉が都市対抗に出場=敗戦に流した涙…38歳の奮戦記
北海道のクラブチームに入団し、野球を続ける門倉。7月13日から始まる都市対抗に出場する 【ストライク・ゾーン】
その伊達聖ヶ丘病院は、都市対抗出場を目指し北海道予選に臨んだが1次予選で敗退。しかし門倉は予選を制したJR北海道から補強選手に選ばれ、7月13日に開幕する都市対抗の舞台に立つことになった。
かつて最多奪三振のタイトルを手にし、日韓で103勝(日本76勝、韓国27勝)を残した元プロが挑む都市対抗。門倉は今、何を思いボールを握っているのか。
北海道のチームに入団も「ホームシックになりました」
羊蹄山の頂にまだ雪が残る4月。門倉は北海道に来た当初、こう思っていた。「何で来たのかとホームシックになりました」。クラブチームとしては異例の専用グラウンド2面を持つものの、芝の状態はひどく、サブグラウンドのマウンドは形をなしていなかった。門倉にとってこれまでの野球人生とはかけ離れた環境だ。
チーム名が表すようにこのチームの選手はほとんどが病院関係に従事している。昼夜を問わない仕事柄、就業時間はバラバラで練習に全員がそろうことすら難しい。門倉自身も嘱託職員として介護老人施設などへ足を運んでいる。そんな中、野球に取り組むナインの姿を見て門倉の気持ちに変化が訪れた。「遅番や夜勤明けで試合に来る選手もいますが、みんな楽しそうに野球をしています。僕もこれまでそうしてきたように“楽しもう精神”でいこうと思ったら楽になりました」
かつての同僚・三浦大輔らから贈られた野球用具
しかし門倉はそんな心配をよそにチームに溶け込んでいく。荒れたグラウンドは地域の人々と共に芝を刈り、自ら土を盛ってマウンドを完成させた。不足する用具は三浦大輔(横浜DeNA)、高橋由伸、山口鉄也、坂本勇人(巨人)、吉見祐治(千葉ロッテ)、木佐貫洋(オリックス)ら、かつての同僚たちが贈ってくれた。チームの主将・高田直樹(25歳)が「これはクラブ選手権にとっておこう」と、『6 SAKAMOTO』と刻印されたバットを使い惜しむと、門倉が「折らないようなバッティングしろよ」と声をかける。そんなやり取りが続くチームの雰囲気はとても明るい。
明るさだけではない。門倉は自身の調整以外に打撃投手やノッカーを務め、ひと回り以上年が離れたチームメートにハッパを掛ける。その姿にチーム最年長の太田は「プロの経験と知恵を惜しげもなく与えてくれて、若い選手たちの刺激になっている」という。内野手の高田偉之(24歳)は「門倉さんが入ったのにこれまでと同じ成績だったら周囲の人達に“おまえたち何やってるんだ”って言われてしまう。それは嫌です」と、門倉の加入はチーム内の意識を変えていった。