「まだ投げ続ける」元巨人・門倉が都市対抗に出場=敗戦に流した涙…38歳の奮戦記
都市対抗予選で完全試合を達成 補強選手に選出
この時門倉は、試合後のロッカールームで久々に涙したという。都市対抗への道が完全に断たれたと思ったからだ。しかし、門倉のバックを守ったナインは悔しさを感じながら、別のことも考えていた。「あのピッチングを見たら、門倉さんは絶対に補強選手に選ばれるはずだ」。
この試合の門倉は一塁手として先発出場したが、0対0で迎えた5回裏、先発の太田が無死一、三塁のピンチを招いたところでマウンドに上がった。そこで門倉は3者連続三振で危機を脱出。太田‐門倉‐太田‐門倉の継投は10回を無失点に抑えた。太田はこう話す。「門倉にはピンチで助けてもらった。社会人野球は一発勝負。若さでは越えられない経験が必要なんです」。太田自身も1986、98年の2度、補強選手に選ばれている。そのため太田にも、門倉に声が掛かるだろうという確信があった。その読み通りこの試合を観戦したJR北海道・狐塚賢浩監督は門倉を補強選手に選んだ。「元プロだけど一塁を守ったり、必死になっているのを評価してくれたそうです」。門倉はそれまで頭になかった補強選手選出に、戸惑いながらも決意を新たにした。
17年前に入社の可能性があったトヨタ自動車と対戦
門倉が加わるJR北海道の初戦の相手はトヨタ自動車だ。これには不思議な巡り合わせがある。「大学4年生の時、プロ入りしない場合は来てほしいと社会人のチームから内定をもらっていました。それがトヨタ自動車だったんです」。門倉は自分を評価してくれたチームと17年の時を経て顔を合わせることになった。
「家族がプロで野球をしている姿を見たいと言うので、まだまだ投げ続けます」。今年で39歳の門倉はプロ復帰へ向け「もがき続ける姿」を都市対抗の舞台・東京ドームで見せる。
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