「まだ投げ続ける」元巨人・門倉が都市対抗に出場=敗戦に流した涙…38歳の奮戦記

室井昌也

都市対抗予選で完全試合を達成 補強選手に選出

 5月25日から始まった都市対抗北海道予選。その初戦で門倉はプロの実力を見せつけ、7回コールドの参考記録ながら完全試合を達成する。しかし、駒を進めるごとに戦いは厳しくなり、3回戦は延長10回サヨナラ負け。敗者復活2回戦でも延長11回タイブレークの末敗れた。いずれも1点差での惜敗。伊達聖ヶ丘病院は都市対抗出場を逃した。
 この時門倉は、試合後のロッカールームで久々に涙したという。都市対抗への道が完全に断たれたと思ったからだ。しかし、門倉のバックを守ったナインは悔しさを感じながら、別のことも考えていた。「あのピッチングを見たら、門倉さんは絶対に補強選手に選ばれるはずだ」。

 この試合の門倉は一塁手として先発出場したが、0対0で迎えた5回裏、先発の太田が無死一、三塁のピンチを招いたところでマウンドに上がった。そこで門倉は3者連続三振で危機を脱出。太田‐門倉‐太田‐門倉の継投は10回を無失点に抑えた。太田はこう話す。「門倉にはピンチで助けてもらった。社会人野球は一発勝負。若さでは越えられない経験が必要なんです」。太田自身も1986、98年の2度、補強選手に選ばれている。そのため太田にも、門倉に声が掛かるだろうという確信があった。その読み通りこの試合を観戦したJR北海道・狐塚賢浩監督は門倉を補強選手に選んだ。「元プロだけど一塁を守ったり、必死になっているのを評価してくれたそうです」。門倉はそれまで頭になかった補強選手選出に、戸惑いながらも決意を新たにした。

17年前に入社の可能性があったトヨタ自動車と対戦

「ストレートが146、7キロ出ているし、状態は良いです」。プロ時代のように、体をケアしてくれるトレーナーはいないが、地元旅館の協力で洞爺湖温泉の源泉かけ流しの湯で体を癒している。「地域の方々の温かい支えが励ましになっています」。

 門倉が加わるJR北海道の初戦の相手はトヨタ自動車だ。これには不思議な巡り合わせがある。「大学4年生の時、プロ入りしない場合は来てほしいと社会人のチームから内定をもらっていました。それがトヨタ自動車だったんです」。門倉は自分を評価してくれたチームと17年の時を経て顔を合わせることになった。

「家族がプロで野球をしている姿を見たいと言うので、まだまだ投げ続けます」。今年で39歳の門倉はプロ復帰へ向け「もがき続ける姿」を都市対抗の舞台・東京ドームで見せる。

<了>

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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