勝ち切れなかった日本、足りなかった「我慢」=ラグビー元日本代表・廣瀬俊朗が解説

構成:スポーツナビ

大野(右)と抱き合い、涙を流す菊谷主将。日本にとって厳しいW杯となった 【写真は共同】

 ラグビー日本代表は27日、ワールドカップニュージーランド(NZ)大会の予選プールA組第4戦でカナダと対戦し、23対23で引き分けた。この試合について、元日本代表で東芝ブレイブルーパス前主将、廣瀬俊朗選手に話を聞いた。

トンガ戦のショックから立て直した日本代表

――W杯20年ぶりの勝利はなりませんでしたが、どのような印象をお持ちですか?

 前回のトンガ戦のショックから、チームとしてよく立て直してまとまっていたと思います。カナダの出来も良くはなかったですけど、日本の選手一人一人が一生懸命頑張っていました。今大会は「2勝」がターゲットだったことを考えると残念ですけど、カナダ戦に関しては苦しい状況の中で頑張ったと思います。

――改善されたのはどの部分でしょうか?

 アタックの方向性が決まっていて、それを実行できていました。順目、順目にどんどん回して勢いがあり、FLバツベイが前に出てアタックをリードしていました。彼は非常に良かったです。
 また、ディフェンスも大方は良かったです。粘り強く守っていました。ただ、一次攻撃で抜かれてトライを奪われましたし、最後まで正しい対応ができずにいた場面もあったので、そこはもったいなかったと思います。
 相手の攻撃の中心であるCTBファンデルメルヴァも、あれだけ分かりやすく真っすぐ出てくるので、もっとしっかり止めたかったですね。

――途中出場の選手がリズムを呼び込んだように見えましたが?

 途中から入ったブライス(ロビンス)は攻撃ですごく貢献しましたし、タックルも頑張っていたと思います。キンちゃん(大野均)も活躍していて、途中出場の選手たちがこれまでの3試合になかった良い入り方ができていました。控え選手を含めた22人でしのいでいくのが日本の形だと考えているので、それができたのは良かったです。

後半ロスタイム、攻めている日本が我慢しきれなかった

――それでも勝ち切れなかった原因は?

 我慢ができなかったことだと思います。ディフェンスでしっかり確認することを、最後まで徹底できないシーンがありました。
 逆にカナダは試合終盤に向けて、ディフェンスの集中度が上がり、しっかり我慢していました。最後に日本が攻め込んだんですが、カナダは反則のできないプレッシャーの中でしっかり守り切って、日本は攻めていても我慢ができずにSOアレジがドロップゴールを狙って失敗しました。あの場面は攻撃側が粘り強く攻めなくてはいけないんですが、先にこっちが苦し紛れのキックをけってしまった。もったいなかったです。

 試合終盤の厳しいところではメンタルの強さが重要になってくるので、タフな試合を経験して勝ち切ることが必要です。例えば今日の試合で最後に逃げて、逃げて数字の上で勝っても何か違うと思うんです。タフに勝負して、勝ち切るメンタルの強さが求められてくると思います。

――トップリーグのキャプテン会議の代表も務めていますが、仲間のプレーをどう見ましたか?

 フランス戦の後は「トップリーグの価値も高まっている」と感じることができましたが、NZ戦でベストメンバーで戦わなかったことが残念でした。世界一のチームに挑戦できる貴重な機会で、そこで僕らの代表であるジャパンがどこまで戦うかを見てトップリーグの選手たちも自身のレベルを測れたと思います。
 また、トンガ戦は残念でしたが、その後のカナダ戦であれだけ立て直したジャパンを誇らしく思います。
 トップリーグも10月末から始まりますから、居残り組が元気なプレーを見せて、ジャパンのメンバーと一緒に熱い戦いをしていきたいと思います。

<了>

廣瀬俊朗/Toshiaki Hirose

廣瀬俊朗 【提供:東芝ブレイブルーパス】

 1981年10月17日生まれ。身長173センチ、体重81キロ。大阪府出身。北野高‐慶応大‐東芝ブレイブルーパス。
 北野高時代に高校日本代表に選ばれ、慶応大では理工学部で学びながらラグビー部主将としてチームを引っ張った。東芝ブレイブルーパスではSO、WTBとしてオールラウンドに活躍し、主将としても抜群のリーダーシップで日本一に導いた。簡単に倒れない体の強さと、しなやかな加速、的確な状況判断で日本代表にも選出。トップリーグ・キャプテン会議の代表も務めている。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント