“なでしこジャパンの妹分”に期待される女子サッカーの育成=ユニバ女子代表が目指す新しいモデルと金メダル
特別な意味を持ち始めた独特な出場資格
2年に一度開催される大学生のオリンピック、ユニバーシアード大会は、正直なところサッカーファンにはなじみの薄い大会だ。年代別大会で区切られるFIFA(国際サッカー連盟)世界においては、まごうことなき“鬼子”。だが、FIFA大会にはないこの独特な出場資格が、女子サッカーにおいては特別な意味を持ち始めている。
ユニバの出場資格は第一に、大学生、または大学院生であることだ。ただし、卒業して1年以内の選手であれば出場資格はある。年齢は17歳以上28歳未満。たとえ大学生であっても29歳の選手は出場できない。そして最後に重要なのは、“大学生・大学院生”である限り所属チームは問わないということ。つまりプロアマ関係なく参加できるというわけだ。実は大学生Jリーガーや、大学卒業1年内のJリーガー(たとえば名古屋の永井謙佑選手など)にも参加資格はある。
ただし、男子ユニバサッカー代表は全日本大学サッカー連盟の管轄となっているため、大学チーム所属選手の中から選ばれている。いわゆる“大学選抜”という形になるが、そういった例はむしろ珍しい。ほかのスポーツは積極的に卒業生を起用している。
女子ユニバサッカー代表もその例に漏れない。今大会代表の内訳を見てみると、20人中半数の10人の選手がなでしこリーグ所属の選手で、1名がなでしこリーグの下部リーグであるチャレンジリーグ所属選手、9名が大学チーム所属(※)となっている。11名の非大学選手のうち大卒選手は5名、6名が“大学生”の資格を持った選手だ。大学所属選手のみの男子に比べると、選手構成は複雑で、大学代表といいながら、なでしこの選手ばかりと思えなくもない。ざっくり見ると20人中15人が現在、もしくは以前に大学チームに所属しており、どちらかといえば大学生と大学OB選手の混合チームと言っていいだろう。
育成年代としての役割を期待されるユニバ代表
男子の場合、ワールドユース大会出場を目指すU−20代表の次は、五輪大会を目指すU−23代表へと“育成年代”がスライドする。しかし、五輪代表に年齢制限がなく、フル代表での出場が可能な女子の場合、U−23代表というカテゴリーがない。U−20代表の上が、すぐになでしこジャパンなのだ。ユニバ代表は近年、その間を埋める育成年代としての役割を期待されている。
「ユニバ代表に、女子のU−23代表という役割を意識させたい」と、最初に明確に口にしたのは07年バンコク(タイ)大会の女子代表の田口禎則監督だったが、今大会の堀野博幸監督も「上田栄治・(日本サッカー協会)女子委員長からは、ユニバ代表をひとつのカテゴリーとして、なでしこジャパンにつながるものに強化、育成をしたいと言われている」と語る。09年大会ではコーチとして参加し、今大会ではチームの指揮を執った堀野監督はもともと、なでしこジャパンの佐々木則夫監督がU−19、U−20代表を指揮していた時のスタッフだった。そうした経緯もあり、「佐々木監督の目指すサッカーを可能な限り取り入れ、なでしこジャパンにつながる流れを作ってほしいと言われた」(堀野監督)
実際、これまでも03年テグ大会の矢野喬子(浦和)、安藤梢(デュイスブルク/ドイツ)、05年トルコ・イズミル大会の川澄奈穂美、近賀ゆかり(ともにINAC神戸)、岩清水梓(日テレ・ベレーザ)らが現在のなでしこジャパンの主軸として活躍しており、“ユニバ→なでしこ”への流れがないわけではない。特に川澄はなでしこリーグの選手たちが中心に活躍するチームにおいて、日本体育大に所属する“大学生選手”として全6試合に出場した。また、丸山桂里奈(千葉)、矢野のように大学在籍時に代表に選ばれることはなかったが、ユニバ代表で活躍して大学経由のなでしこジャパンという新しい道を開いた選手もいる。
「出場資格の問題はあるが、U−20代表の次にもうワンステップ必要な選手にとって、ユニバ代表というのはすごくいいモチベーションをもった大会」(堀野監督)。今大会でも船田麻友、櫻本尚子(共にジェフ千葉)、竹山裕子、岸川奈津希(ともに浦和)、中出ひかり(伊賀くノ一)らU−20代表を経験した選手が参加している。