“なでしこジャパンの妹分”に期待される女子サッカーの育成=ユニバ女子代表が目指す新しいモデルと金メダル

飯嶋玲子

“なでしこジャパンの妹分”と呼べない事情

なでしこジャパンの川澄は05年のトルコ・イズミル大会で活躍した 【写真:アフロスポーツ】

 とはいえ、ユニバ女子代表を単純に“なでしこジャパンの妹分”と呼べない事情もある。なでしこリーグ、チャレンジリーグ、大学リーグと2つのカテゴリーの混成チームとなるだけに、チームとしての強化期間が短い。大会の翌年は活動がなく、本格的にチームが編成されるのは大会の約3カ月前。結果、「継続性がなく、U−19代表やU−17代表に比べると、なでしこジャパンとの一貫性も薄くなってしまう」(堀野監督)。大学側では例年春に地域対抗戦を行い、優秀選手という形でユニバ候補選手をピックアップ。強化合宿を行っているが、それが“なでしこ・チャレンジ組”と連動しているわけではない。たまたま今大会は10人のなでしこリーグ選手が参加したが、それはあくまで「所属チームの理解あってのこと」(堀野監督)。実際、フル代表の招集やU−19代表の合宿とタイミングが重なった前回大会では、なでしこリーグ選手の参加は3名にとどまっている。

 ただ、これが今大会は結果的にいい方向に転んだ。前回大学選手として参加した選手の多くがなでしこリーグに進み、今大会にも参加。ユニバの出場経験のある選手を多く擁したことで、「スタッフが枠にはめてチームをつくるのではなく、選手たちが主体となってチームを積み上げていった。事前キャンプでも選手たちだけでミーティングを行い、その考えがまとまったところで、われわれスタッフとディスカッションをする。“自分たちのチーム”という意識が非常に強かった」(堀野監督)。その中心となったのは、前回大会も参加したキャプテンの筏井りさ(千葉)と、大学時代と合わせて今大会が3回目の出場となる“ベテラン”の中出ひかり(伊賀くノ一)だ。「副将という立場もあるが、今大会は(経験のある自分が)チームをどれだけ引っ張っていけるかということを、すごく意識した」(中出)

「女子だからこそできることはたくさんある」

 あとは、この流れをどう次につなげていくか。堀野監督は言う。

「正味2カ月の強化では、せっかくのタレントが十分に力を発揮し切れない。大学側はユニバを目標として育成強化を継続しているのだから、それをもっとJFA(日本サッカー協会)側に発信するべき。逆にJFAは、その発信を受けてもっと積極的に連携してもいいのではないか。たとえば、“なでしこチャレンジプロジェクト”(なでしこジャパンに挑戦する選手たちの発掘・育成・強化)では、U−19代表チームと一緒にトレーニングをすることもあるのだから、なでしこ・チャレンジ(の選手)と大学選抜が合同で合宿をしてもいいと思う。上田委員長や佐々木監督、吉田弘(U−19)代表監督、今泉(守正・元U−17代表監督、03年テグ大会監督)さんもよく言われているが、女子だからこそできることはたくさんある。なでしこジャパンとU−19、U−17という流れにユニバ代表をつなげていくことで、女子代表の新しいモデルができる。そのためには、発掘されていない選手を、積極的かつ継続的に見ていく形が必要。それは今後も提案していきたい」

 大学選手の中には、このユニバを選手生活の集大成として、今年いっぱいで競技スポーツとしてのサッカーから退く者もいる。だが、銀メダルを獲得したことで「大会後、『もう少しサッカーを続けたい気持ちが出てきた』と告げてきた選手もいた」という。だが、大学4年生であればすでに進路は固まっている時期。「せめてもう1年早くチームとして活動できていれば。もっとチャレンジしてほしい選手はたくさんいた」(堀野監督)。

 ユニバ女子代表が、本当の意味で“なでしこジャパンの妹分”になるために、すべきことは明確だ。その先にはきっと、悲願の“金メダル”が待っている。

<了>

※ただし大学チームのうち、日本体育大、吉備国際大、静岡産業大の3チームはチャレンジリーグにも参加している。

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著者プロフィール

東京都出身。1980年代、テレビで見たワールドカップで衝撃を受けサッカーファンに。JSL(当時)時代には元日本代表・宮内聡のプレーに心酔。出版社で7年間雑誌編集を勤めたのちフリーとなり、『サッカルチョ』『Football Japan』などの編集に携わる。90年代半ばより大学サッカー関連の記事を執筆。99年からは6大会連続でユニバーシアードを現地取材。2001、03、05年の日本の三連覇を目撃した(たぶん)唯一のライター。有料メールマガジン『飯嶋玲子・大学サッカーメールマガジン』(http://clg.6mag.net/)も配信中

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