“まだまだ”の高橋、五輪で勝つために必要なもの=スケートカナダ・男子シングル総括
佐藤コーチとの新コンビで優勝したアボット、高橋は2位
フリー首位、総合2位でGPファイナル進出を決めた高橋だが、来る五輪へさらなるアピールが求められる 【写真は共同】
一方、フリー1位の高橋は「フリーでアボットに勝てたと思わなかった」と本人も認めるように、冒頭の4回転がパンクして3回転に、後半は3回転ループでぐらつき、サルコウで軽くステップアウトと、少しミスが目立つ内容。道化師になりきる演技部分では観客ばかりでなくジャッジまで笑顔にしてしまうチャーミングさがあり、後半のステップで魅了した後は、スタンディングオベーションも得た。五輪プログラム「道」は、この段階でも十分評価された形だ。しかし私たちが「もっとすごい高橋」を知っているからだろうか。この結果にも、まだまだ、もうちょっと見せてほしいと思ってしまう。
「勝たせたい男」を印象付けたライバルたち
またスケートカナダではメダルに及ばなかったが、公式練習で凄まじいまでの「オペラ座の怪人」をお披露目したパトリック・チャン(カナダ)。フリーでは撃沈してしまったが、良く動く身体でショートプログラムはパーフェクトの演技をし、大器の片りんを見せたデニス・テン(カザフスタン)などにも、審判は昨シーズン以上の成長を見ている。
特にパトリック・チャンの滑りの技術のさらなる進歩、公式練習で流しながら滑ったはずのフリープログラムの華麗さは誰もが目を見張るもので、練習段階では彼かアボットが優勝か、と思われた。ホームリンクでの練習では高確率で4回転も成功しているというが、今年の彼ならばトリプルアクセルまでの構成でかなりのポイントを得ることができるだろう。五輪本番、もしクワドジャンパーたちが次々に失敗するとしたら、チャンは4回転なしでメダルに届くのではないか。そんな声も聞かれた。
そうしたGPでの活躍で目をひいた選手、GPではいまいちだったが、今年の成長に期待できる選手。その中に残念ながら、高橋はまだ入っていない。「前はもっといいものを見せてくれたよね」「ケガのブランクは、やはり大きかったな」――そんな印象を、多くの審判は現在の高橋に抱いているはずだ。
一歩一歩階段を上っている状態の彼には酷だが、ここはもうひとつ与えられたチャンス、GPファイナルで「高橋大輔、健在!」の演技を期待したい。それはパーフェクトの演技では必ずしもなく、どんな形であれ「五輪での高橋が楽しみになる演技」だ。
<了>
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