誰もがスポーツを楽しめる社会の実現に向けて 大阪体育大学・曽根裕二准教授(アダプテッド・スポーツ)

大阪体育大学
チーム・協会

1.スポーツは誰のもの?

 突然ですが、スポーツは誰のものだと思いますか? スポーツ基本法には「スポーツは、世界共通の人類の文化である」と書かれています。つまりスポーツは全ての人のものであり、年齢や人種や運動の得意・不得意、障がいや病気の有無でスポーツを楽しむ権利が損なわれてはいけないと解釈できるかと思います。私は障がいのある人たちと関わる機会が多いのですが、これまでに障がいのある方から「体育の時間はずっと見学だった」「運動部に入りたかったけど、座って活動できる部活を勧められた」「サッカーの時間はボールに触らないように逃げていた」等のエピソードを聞いたことがあります。スポーツは全ての人のものであるはずなのに、おかしな話ですね・・・。

曽根裕二准教授 【大阪体育大学】

2.アダプテッド・スポーツとは?

 私の専門領域は「アダプテッド・スポーツ」という分野になります。皆さんは聞いたことがありますか? 『人にやさしいスポーツ』や『創造のスポーツ』と言い換えられることもあります。アダプテッドとは、適応する(させる)という意味があり、この分野では、スポーツを人に適応させることを大切にします。例えば車いすに乗っていたり、目が見えにくかったりして既存のスポーツを楽しむことができない場合に、そのスポーツのルールを工夫したり、新たに道具を加えたりすることでスポーツへのアクセスを保障しましょうという考え方です。障がいのある人の例を挙げましたが、高齢者や運動が苦手な子ども等の身体活動にも応用可能ですので、幅広い意味で使われることが多いです。
 例えば、目が見えないからサッカーは危険であると禁止するのではなく、目は見えないけど、耳で音を聞くことはできるので、ボールの中に鈴を入れて、音を聞いてプレイできるサッカーにしようと考えるとイメージしやすいかもしれません。パラスポーツ(障がい者スポーツ)の中にはそのようなアダプテッドのヒントがたくさん詰まっています。

3.実践と研究

 アダプテッド・スポーツは応用的な分野ですので、実践と研究の両方が必要だと考えています。本学では特別支援教育やアダプテッド・スポーツに関心のある教員や学生の有志が中心となって、月に2回ほどですが、地域の障がいのある方を対象としたスポーツ教室「わくわくアダプテッド・スポーツクラブ」を開催しています。障がいのある方々が学校を卒業した後にも生涯に渡ってスポーツに親しむ機会の一つとして、学生が中心になって運営しています。学生教育の場でもあり、アダプテッド・スポーツ実践の場でもあり、研究の場でもあり、もちろん地域貢献の役割も担っています。
 このようなアダプテッドが当たり前になってくると、全ての人がスポーツを楽しめる社会に近づくように思います。

【参考文献】
植木章三・曽根裕二・高田仁郎 編著(2017)イラスト アダプテッド・スポーツ概論.東京教学社.

わくわくアダプテッド・スポーツクラブ 【大阪体育大学】

わくわくアダプテッド・スポーツクラブ 【大阪体育大学】

<キーワード> アダプテッド・スポーツ パラスポーツ 生涯スポーツ

曽根裕二(教育学部准教授)

 専門は「アダプテッド・スポーツ」「特別支援教育」であり、重度障害児・者のスポーツ活動やインクルーシブ体育に関する研究や実践に取り組んでいる。 またパラリンピックの正式競技でもあるボッチャでは代表コーチとして東京パラリンピックに帯同した。 担当科目は、肢体不自由教育指導法、アダプテッド・スポーツ実技など。本学では、アダプテッド・スポーツ部 監督を務める。
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