コラム【武士が斬る!】vol.19 2025年シーズン開幕!新たなヒーローとドラマの予感
チーム・協会
皆さんこんにちは!SUPER FORMULAオフィシャルアドバイザーの土屋武士 です。2025年シーズンがまもなく開幕しますね!今年はどんなドラマが待ち構えているのか?? 毎年心揺さぶられるような感動的なシーンがSUPER FORMULAのステージでは繰り広げられますが、今年も間違いなくそんな場面を観ることができると思います。そんな期待、そして予感を感じることができた開幕前唯一の公式テストが、鈴鹿サーキットで2月18-19日の2日間の日程で行われました。 しかし、2日目は全セッションが降雪のためにキャンセルされてしまったんですよね。自然には逆らえないとは言え、新しい体制やルーキードライバーにとっては、ただでさえ少ない走行機会が減ってしまったことは“痛かった”ことと思います。特に今年は5人ものルーキーが参戦するので開幕戦でどのような走りを見せてくれるのか?? 経験のあるドライバーたちにとっても、新しいドライバーとの“間合い”は一緒に走ってみなければ分かりません。こういった要素もレースを動かすことに繋がるので、特に開幕戦は目が離せませんね。
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そんなルーキーの中ではザック・オサリバン選手 の走りに注目が集まると思います。昨年FIA F2選手権では2勝を挙げている実力派ですし、鈴鹿テストでS字コーナーを観ていた時には、マシンの限界を引き出すナチュラルなアグレッシブさを持っていることも確認済みです。若干20歳ながら経験も豊富ですし、ウイリアムズドライバーアカデミーの出身でもあるので、このSUPER FORMULAのステージでどんな存在感を発揮してくれるか、今から楽しみです!
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そして我々SUPER FORMULAを盛り上げていた仲間の一人、イゴール“大村”フラガ選手 も注目したいですね。一緒にいる時間も長かったので、このトップフォーミュラのシートを獲得できたことを仲間のみんなが喜んでいました(^^) とにかく生真面目な好青年という印象の大村くん。ブラジルと石川県のハイブリッドということで、ブラジルの血が騒いだ時にどんな走りを見せてくれるかが注目です(笑) テストでの走りも非常に好調で、一つ一つを把握しながら理詰めで取り組んでいるように見えますが、レースは本能的な部分が肝心になってきます。グランツーリスモでの経験をリアルで発揮できるかも注目してみていきたいと思います。
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他にも小出峻選手 はSUPER FORMULA LIGHTS でのチャンピオンを獲得してステップアップしてきた成長著しいドライバーですし、オリバー・ラスムッセン選手 は世界耐久選手権(WEC)を主戦場として走っていた実力派。高星明誠選手 もスーパーGTはNISMOワークスの23号車をドライブしていて、昨年まではSUPER FORMULAの開発ドライバーとして“赤寅”をドライブしていたので、ルーキーとはいえ経験は豊富です。
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このような実力派ぞろいのルーキーたちの中で、誰がルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得するのかも興味深いですね!こちらも楽しみにしていきたいと思います。 今回のテストでは1日目午後のセッションの前半をS字コーナーで観ていましたが、路面舗装工事がされた後でしたので、かなりグリップが高い様子で各選手は駆け抜けていました。マシンの仕上がり具合や各選手の気持ちの入り方なども、40年ほど同じ場所で観察しているので感じ取れてくるものです。 そんな中で毎周のように攻め込んできていたのが三宅淳詞選手 です。昨年はノーポイントとなり残念なことに良いところもあまりなかったので話題に上がってきませんでしたが、走り出しから上位をキープし続け、最終的にも3番手というタイムでテストを終えています。所属するスリーボンドレーシングには今年、チーム無限で野尻智紀選手と長くタッグを組んでいた一瀬エンジニアが移籍しています。その効果がいきなり表れた形となりましたが、エンジニア一人の影響がどれだけ大きいかの証明にもなりましたよね。もちろん相性等もあるので、全部が全部、ではないですが、三宅選手のいい部分を今年はたくさん見れそうな予感がしますね!それくらいコース上では活き活きと走っている姿が印象的でした。
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そして今年のシリーズ争いの中心になるだろうなと思った選手がいます。それが15号車の岩佐歩夢選手 です。タイムの出し方やセッションの進め方、S字を走る姿から、今年は“くる”という予感がプンプンします。テストの最終リザルトは9番手というタイムでしたが、あくまでテストはテスト。本番のセッションでどれだけパフォーマンスを出せるかの準備をするのが優先順位の一番になります。昨年は、F1を見据えて少し焦りもあったようにも見受けられましたが、本来の岩佐選手の実力はまだまだ出し切れてなかったと思います。まずはやるべきことを——、そんな姿勢を感じる岩佐&チーム無限は今年怖い存在になると思います。
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そしてチームとして勢いを感じたのがKCMGです。小林可夢偉選手 と福住仁嶺選手 のコンビはどちらも勝てるポテンシャルを持っていて、尚且つ爆発力があるドライバーです。昨年はチーム創設以来の初ポールポジションを獲得しましたが、2位表彰台ではもう喜べないチームになりました。テストでもまだ安定感はないように見えますが、歯車がかみ合ったとき、誰も手が付けられないような速さで優勝をかっさらっていってしまうかもしれません。手が届きそうで届かなかった“てっぺん”に、今年中に到着するかもしれませんね! 移籍した一瀬エンジニアがこんなことを言っていました。「2022年最終戦鈴鹿からチーム無限とチームトムスとダンデライアンしか勝っていないから、それを崩したい」って。2022年Rd8もてぎでチームインパルのワンツーフィニッシュ依頼、トップ3のチームしか優勝は生まれていません。2024年のチームランキングはKCMGが4位、そしてナカジマレーシングが5位という結果でした。このナカジマレーシングの佐藤蓮選手 も年々力をつけてきていますが、まだ優勝はありません。参戦一年目からQ1でトップを獲得するなど、ハマったら爆発的な速さを持つ選手です。近年のナカジマレーシングは着実にデータを蓄積しているように見受けられるので、この調子を維持して上位を走り続けることができれば、優勝に近づいていけるのではないかなと思います。 佐藤選手はデビューが三宅選手と同じで、共に最高位が3位表彰台なので、どちらが先に初優勝を遂げるかも個人的には注目しています。
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そして近年トップを明け渡していないトップ3チーム。特に一番勢いに乗っていると思われるのがダンデライアンの2人だと思います。昨年チームタイトルを獲得し、牧野任佑選手 と太田格之進選手 の2人で4勝を挙げています。ドライバー、チームメンバー共に不動で2025年も挑んでくるこのチームが今年の中心になることは間違いないでしょう。格之進選手は鈴鹿最終ラウンドをぶっちぎりの2連勝で締めくくり、IMSAシリーズへの参戦も果たして、舞台を世界に広げています。ノリにノッテいる格之進選手は、勢いに乗ったら誰も手を付けられない速さがありますが、チームメイトの牧野選手も黙ってみている訳はありません。このシーズンオフ、先輩でSUPER FORMULAを引退した山本尚貴選手 の元で、同じトレーニングに取り組んだそうです。もちろん今までもトレーニングはしてきていたと思いますが、“本物のアスリートのトレーニング”を経験したことによって、牧野選手は大きく飛躍するのではないかなと、密かに思っています。私も選手時代、トレーニングは人一倍やっていた方なので、その効果がどのようなものかは知っているつもりです。レースよりもはるかにきついトレーニングを課してきた牧野選手は、身も心も鍛え上げられたに違いありません。その成果はシーズン後にわかります。 チームメイト通しでのチャンピオン争いも予想できるだけに、村岡代表の愛のある采配とTVへのパフォーマンスもファンを楽しませてくれるでしょう!今年のダンデライアンは更に強そうですね。
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今シーズンはチャンピオン経験者が2人だけになりました。チーム無限の野尻選手 とチームトムスの坪井翔選手 。どちらもチャンピオン経験はあるものの、先に挙げてきた通り、強者ぞろいのこの選手権では、全く気を抜ける場面はありません。ここに参戦する以上、常に全力で自分のパフォーマンスのすべてを出し切って、それでようやく対等に走れることを誰もが知っています。ルーキーたちは自分を超えるべき瞬間があることに気づくでしょうし、その中で自分をマネージしていくことの難しさも感じるでしょう。 野尻選手はエンジニアが変わり、新しいチャレンジが始まっていると思います。2021-2022年で連続チャンピオンを獲得してから少しリズムが狂っているようにも見える時がありますが、新しい相棒との時間は刺激的だと思うので、この変化がいい作用をもたらしてくれることに期待したいですね。特に野尻ファンは心待ちにしていると思います。って言っても、昨年ランキング2位なんですけどね(^-^; あれだけ強い時期が続いた後だとそう見えてしまうもので。
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そしてこの人、ディフェンディングチャンピオンの坪井選手!カーナンバー1を背負ってチームトムス、そしてトヨタGAZOO Racingのエースとして今年もSUPER FORMULAの中心となることでしょう。昨年は、速さと強さが素晴らしいバランスのうえで戦い切ったシーズンでしたが、この選手権は本当に激しく厳しいシリーズです。特に“勝ちたい”という気持ちと、“悔しい”という気持ちが融合している選手たちがゾロゾロいます。坪井選手は今、脂に乗っている状況だと思いますが、たった一つ不足しているのがこの“悔しい”という気持ちでしょうか。他の選手はこれをたくさん持っています。このパワーに打ち勝つものを“新”チャンピオンは見つけなければならないかもしれません。
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それでも野尻選手同様、このシリーズで頂点にたった経験があるのは他の選手たちに対しての大きなストロングポイントなことは間違いありません。スーパーGTでも現役最多の3回のチャンピオン保持者であることからも、お腹の空かせ方は心得ているはず。開幕戦を迎えたら、いつもの“坪井翔”スタイルで、一つ一つやるべきことに取り組みながら、しっかりと仕事をしていくのだと思います。新しい景色をみた坪井選手の走りにも注目して見ていきたいと思います。 さてさて、まだ紹介したい選手はたくさんいるのですが今回はこの辺りにしておきましょう。明日からの開幕戦の為に鈴鹿入りしていますが、私もスーパーGTのチームオーナーとしての仕事がまだまだ山盛りでバタバタとしています。SUPER FORMULAのチームオーナーの皆さんも、実は開幕前が一番忙しかったりするのですよね~ ファンの皆さんに素晴らしいレースをお届けする為に、チームの皆さんも頑張って準備してくれています。本当に休みなくて大変な時も多いんですけど、それでもみんなSUPER FORMULAが大好きなので頑張れるんです。 このコラムもそんなSUPER FORMULAの魅力が少しでも伝わればと思い、いつもながら長文になってしまいますが、それもファンの皆さんが年々増えて下さっていることを感じていることも大きいです。相乗効果ってやつですね!もちろんドライバーたちもファンの皆さんの応援が届いているのでいつもいいレースを見せようって、それで集中力が高まって素晴らしいバトルや展開が繰り広げられているのだと思います。 そんなSUPER FORMULAの2025年シーズンも開幕します!今年はどんなヒーローが生まれるのか?どんなドラマが観れるのか?? 皆さんと一緒に見守っていきたいと思いますので、今シーズンもどうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!
written by 土屋 武士 日本のトップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。
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