静かで穏やかながらいつも一生懸命だった77歳 高塚清一さんを偲ぶ
きょう4日初日の地元浜名湖一般戦に参戦予定だったが、もう、静かで穏やかな闘志をみることはできない。
「ピットで休まない人」「背中で語る先輩」「威張らない人」…など、静岡支部レーサーをはじめ多くの後輩の尊敬を集めていた正真正銘の人格者は、ボートレース界初の喜寿レーサーになったことについて、「俺はやることがないからやっているだけだよ」と笑って語っていた。それは価値観の表れだろう。
自らを大きく見せたり、権威を振り回したり、承認欲求を前面に出したりすることがまったくない人であった。
ボートレースという競争の世界にあって、自分を押し出したり、肩ひじ張って他を威嚇することなく59年4カ月もの長きにわたり戦い通せた背景には「ボートレース愛」があったのは間違いない。
昔から高塚清一さんをよく知る同世代の一般の方々が「高塚はほんとうにボートが大好きだからやめたら死んじゃうよ」と言っていたが、これに対し「おいしい酒を飲みたいだけ」と返していた。それはとりもなおさず、「一生懸命レースに打ち込んだあとのお酒はおいしい」と言っているのと同じ。根っからのボートレーサーであり、人生を噓なく生き切った静かで大きな人物だった。
毎年開催されている「優秀選手表彰式典」の令和6年特別賞に輝いた高塚清一さんは都合により式典を欠席。代わってビデオ出演となったが、その最後に「あと何カ月走れるか分かりませんが、一生懸命がんばります」と話していた。
「何カ月…」という言葉に違和感を抱いた者もおり、ひょっとしたら地元浜名湖が最後かという憶測も働いたが、それを確かめることはできない。
記念Vはないものの確かなレース運びには定評があった高塚清一さんの通算優勝回数は47。最後の優勝は65歳10カ月で勝ち取った2013年1月の常滑一般戦。
その前検日、「食あたりして4日ほど寝込んで減量できた…」とピットでにこやかに話していたのがいまでも印象に残っている。
結果は4コースからまくり、2マークで差し返しての逆転勝利だった。
そして、先日の「優秀選手表彰式典」のビデオ出演で「あの優勝が一番の思い出…」と語っていたのに…。
もう、あの笑顔に触れることができない。
静かで穏やかでありながらいつも一生懸命だった高塚清一さんの姿は、いつまでもファンの記憶に残るだけでなく、多くの後輩に生き方を教え、引き継がれていくことだろう。
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