「あったかいスタジアム」づくりは、知恵と工夫の総力戦【スタジアムMC & チーム運営対談企画・前編】
ゴールポストを立てるのに1時間! えどりくならではの準備とは?
森田:スピアーズえどりくフィールド(えどりく)で行われるときは、西葛西駅に着いたらスイッチを切り替えて、“戦闘モード”に入ります。徐々にテンションを上げていくために欠かせないのが音楽。初めて話すのでちょっと恥ずかしいのですが、クラシックを聴いています。中でも好きなのはブラームス。曲調に強弱があり、ドラマチックで気持ちがアガるんです。
――意外です! そういえば、先日の取材でオペティ・ヘル選手も朝はクラシックを聴くとお話ししていましたよ。
白石:私はスピアーズの試合に必ず“本物のオレンジ”でできたイヤリングとスッピーグッズを身に着けて向かいます。また、のどが開くまでに3時間かかると言われているので、それを見越して朝起きるようにしています。
森田:スピアーズに限らず、スポーツの現場に必ず持っていくセットがあります。中身は、500mlのペットボトルの水3本、ゼリードリンク2本、ミント味のタブレット、はちみつ入りのどあめです。
白石:MCに水はマストですよね。それにしても3本はすごいです(笑)。
――続いて運営のお二人に、試合開始前どんな準備をしているか伺いたいと思います。
田村:えどりくなど、会場がもともとラグビー場ではない場合、現地入り後まずゴールポストを立てます。作業自体はシンプルですが、これが地味に大変で……。ポールを運び出し、まっすぐ4本立てるまでに1時間ほどかかるんです。頭の中で「ゴーストバスターズ」のBGMを流しながら、せっせとワイヤーを巻いていますよ(笑)。ポールを立てる運営スタッフを「ポールスタンダッパーズ」と名付けて、その役割を運営スタッフの一員として担っています!
田村:トライゾーンのラインをテープで貼る作業ですね。いかにまっすぐ貼れるかにこだわって、地道な作業も楽しくやっています。運営スタッフの仕事はすべて“縁の下の力持ち”。まさに“どぜうの精神”(注:元選手の田村さんは、泥臭いプレーヤーのみが入れる「どぜう会」所属)でチームを支えています(笑)。
MC2人体制で生まれるコントラストに注目
森田:スピアーズのホストゲームでは、相手チームへのリスペクトやノーサイドの精神が一番大事なことだと思っているので、そこは意識していますね。「いつでもウェルカム、一緒にラグビー楽しもうぜ!」という感じで、全員が応援しやすい空気をつくるようにしています。あとは、どんな試合展開であれ、両チームの選手がトライを決めたときなど、すばらしいプレーに対しては敵味方関係なく全力でたたえます。
白石:私はビジターチームのアナウンスを担当しているので、特に相手チームを立てられるよう心がけています。また、観戦したすべての人が、快適に過ごせて楽しかったと思える雰囲気を目指したい。試合後やSNSでラグビーファンの方々と交流しながら、おもてなしのヒントを探っています。
吉田:私はスピアーズのビジターゲームもしょっちゅう観戦しますが、「ゴー! ゴー! スピアーズ!!」の声援が増えていて、毎回感動しています。
森田:オレンジアーミーのみなさんは熱量が高いので、定着がものすごく早い! ホストゲームでも僕の発声に続いて声を出すというより、オレンジアーミー自らが声を出して声援が広がっていく流れになると理想的ですね。
森田:僕が関わりのあるB.LEAGUE(Bリーグ)のチームの話になるのですが、当初お客さんからなかなか声が出なかった。なので、最初は積極的に誘導の声を出しつつ、お客さんが乗ってきたらあえて声を出さず“見守る”ことを選択したといいます。これを繰り返すことで、自発的に応援するスタイルが確立したそうです。これからのオレンジアーミーの伸びしろに期待しています。
吉田:4シーズン目に入りました。白石さんが影の役割であるビジター側を担当して支えてくれていることで、森田さんのMCがぐっと引き立つんですよね。このコントラストがすごくいいなと思っていて。
森田:白石さんのビジターチームの選手紹介のおかげで、いい流れでスピアーズの選手紹介に入っていけるので、僕も本当に助かっています。
白石:ビジター側担当にもかかわらず、たまにオレンジアーミーを隠し切れない瞬間があり……。これは私のちょっとした悩みですね(苦笑)。
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