黙る。話さない。今季の稲垣啓太は、どん欲に黙々と勝利を追求する
埼玉パナソニックワイルドナイツ 稲垣選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】
稲垣啓太が開幕戦で約11カ月ぶりに復帰し、攻守に力強いプレーで勝利の原動力となった。「(負傷期間は)どんな形でもチームを支えたいと思っていたが、個人的には自分以外の選手がそのポジションにいるのは、良い意味で“気に食わない”。その気持ちをなくしたらいけないと思う。自分自身、こんなに長い時間を休んだのは10年以上ぶりだったが、マイナスな部分はなかった」。手術、リハビリ期間に心技体を磨き直して開幕に備えた。
『笑わない男』として知られている稲垣が、今季は『(ピッチ上で)話さない男』になるという。
どんな意図があるのか。昨季終了後、埼玉WKは、堀江翔太と内田啓太が引退。絶対的司令塔であった松田力也がトヨタヴェルブリッツへ移籍した。取材陣から、役割の変化を問われた稲垣は「何も変わらない。自分のやるべきことは分かっているし、役割を遂行するだけ。プレーで何か問題があったときはみんなで言い合うのではなく、話すべき選手である2番、10番、15番が話すべきだと思っている。だから、特別僕が話す必要はないと考えている」と説いた。
昨季のプレーオフトーナメント決勝・東芝ブレイブルーパス東京戦は、国立競技場のスタンドから観戦。敗戦をじっと見つめていた。今季は、あの場所で感じたことをピッチで黙々と体現する。
「2年連続で一番大事なところ(決勝)を落とした。慢心が僕は一番良くないと思っている。結果として負けているので何かが足りなかった。一戦一戦に集中して最終的にそこ(決勝)にいければいい。(いつ話すのか)慢心などが見えて自分が言わなければいけないと思ったときだけ、はっきりと言っていく」
トップリーグ時代から公式戦通算100キャップ、代表50キャップをクリアする百戦錬磨のベテランはときにチームに苦言を呈することのできる貴重な存在。だが、あえて黙る。どん欲に勝利を追求する稲垣は「話さない」ことでチームを支えていく。
(伊藤寿学)
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