【前回大会のリベンジを!!】川崎公式なのにどこよりも詳しい(!?)山東泰山プレビュー

川崎フロンターレ
チーム・協会

2月13日・20日に続いて今年3回目の対戦となる川崎Fと山東泰山 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

今シーズンから大会フォーマットが大きくリニューアルされた「AFCチャンピオンズリーグエリート」。初戦勝利から連敗、連勝での3勝2敗、4位で迎えるMD6。今年最後のACLエリートの試合となる山東泰山戦は、12月4日(水)に等々力陸上競技場で行われる。前回大会のラウンド16では苦杯をなめた山東泰山について深掘りしてみよう。

中国代表クラスのタレントも豊富なカップ戦巧者

山東泰山足球倶楽部は「AFCチャンピオンズリーグエリート」の予選2回戦で、タイのバンコク・ユナイテッドをPK戦の末に破り、本大会のリーグステージ出場を決めた。ここまで5試合を終えて東地区の7位。前節はマレーシアのジョホール・ダルル・タクジムにホームで苦しみながらも、中国代表GKワン ダーレイ(王大雷)のビッグセーブなどで相手の攻撃を防ぎ、少ないチャンスをクリザンのアシストからゼカが決める“ブラジル・ホットライン”の活躍で1-0の勝利を飾った。ブリーラム・ユナイテッドに敵地で3-0と勝利し、4位に浮上した川崎フロンターレにとっても油断ならない相手だ。

“オレンジファイヤー”の愛称を持つ山東泰山は1956年に創設された。正式にプロクラブとなったのは1993年で、1998年から山東魯能グループが出資する形で山東魯能泰山足球倶楽部に改名している。中国最初のプロリーグに加盟、1999年に当時の最高カテゴリーだった甲Aリーグで初優勝を果たした。2004年にスタートした中国超級リーグでも上位を争い、2006年に初優勝。ここまで4回の優勝を経験している。

中国の中でも、特に育成に力を入れているクラブであり、外国人指導者を招いて技術や戦術の養成に努めている。トップチームはクリザンのような外国人選手が中心を担う一方で、右サイドバックのリュウ ビンビン(劉彬彬)やサイドアタッカーのチェン プー(陳蒲)、W杯のアジア最終予選で11月19日の日本戦にもスタメン出場したシェー ウェネン(謝文能)など、中国代表クラスのタレントを自前で育てており、安定した成績のベースになっている。

GKながら背番号14を背負うワン ダーレイ。ACL通算40試合以上の出場歴を誇る実力者だ 【(c)AFC】

現在の中国代表を指揮するブランコ イバンコビッチ監督が2010年に超級リーグ優勝に導き、2016年から翌年にかけては“鬼軍曹”の異名を取るフェリックス マガト監督が率いるなど、国際的に名の知られた外国人監督が率いた歴史を持つが、2021年にハオ ウェイ(郝偉)監督のもとで4回目の超級リーグ優勝を果たすまで、なかなかリーグタイトルに届かない時期が続いた。ただ、この時期は山東泰山の低迷というより、10年間に7連覇を含む8回の優勝を記録した広州恒大の発展によるところが大きい。

山東泰山はカップ戦の強さも知られており、伝統ある中国FAカップで8回の優勝を誇る。クラブ名から企業名の“魯能”が取れた2021シーズンには超級リーグとFAカップの2冠を達成した。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では2005年に初出場でベスト8に躍進したものの、それ以降はなかなかグループステージを勝ち上がれないシーズンが続いた。コロナ禍が明けた2023/24シーズンは準々決勝に進出したが、横浜F・マリノスに敗れてベスト4を逃している。

2023年からは韓国きっての名将で、全北現代で2度のACL優勝を経験したチェ ガンヒ監督が率いているが、1-2と敗れた第2節のヴィッセル神戸戦で、右サイドバックのガオ ジュンイー(高准翼)のジェアン パトリッキに対するラフプレーをめぐる審判団への暴言に対する罰則で、AFCから6試合のベンチ入り停止処分が下されており、今節もテクニカルエリアで直接指揮することができない。それでも経験豊富な指揮官は、川崎F戦でも現場に対して影響力を発揮するはずだ。

外国人アタッカー陣には要注意

基本システムは[4-4-2]。試合によっては[4-1-4-1]や3バックも採用するなど、複数システムを使い分けるのが特徴だ。また韓国人指揮官は戦略とコンディションを重視しており、過密日程もこなす中で、ブラジル人のゼカやクリザン、10番を背負うジョージア代表のヴァレリー カザイシュビリといった主力のアタッカーも固定的にスタメンで使われるわけではない。

ただ、スタメンにしろ、ベンチスタートにしろ、この外国人アタッカー陣が脅威であることは間違いない。クリザンは累積警告による出場停止となるが、ゼカはどっしりと前線の中央に構えてターゲットマンとなり、周りを生かしながら鋭いフィニッシュに持ち込める。クリザンとの共通点もあるが、よりボックス内に構えている時間が多く、1トップ向きでもある。カザイシュビリはオランダのフィテッセでも主力として活躍した経歴があり、個人でチャンスを生み出せる。予選2回戦のバンコク・ユナイテッド戦で貴重な同点ゴールをもたらして、PK戦での勝利に結び付けた。セントラルコースト・マリナーズ戦では右サイドの突破から見事なループシュートを決めるなど、山東泰山では異色の創造力があり、一瞬たりとも目を離せない。

今大会では背番号10をつけるカザイシュビリ。今年2月の対戦でも脅威となり続けた 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

良質な外国人アタッカー陣とともに、前線から攻撃を引っ張る一人がビー ジンハオ(畢津浩)。センターバックもこなせる大型ストライカーだ。ACLエリート開幕節のセントラルコースト・マリナーズ戦で先制点を決めるなど、ここまで2得点しており、強力な外国人FWばかりに注意していると、迫力あるフィニッシュでゴールを破られてしまう危険がある。中盤で気をつけたいのが中国代表MFリー ユアンイ(李源一)だ。ウインガーのシェー ウェネンとともにW杯予選にも出場している攻撃的MFはフィジカル能力が高い上に、2列目から決定的なパスを繰り出してくる。

そして山東泰山の象徴とも言うべき絶対的な存在が、中国代表の守護神にしてキャプテンのワン ダーレイ。2014年から在籍する最古参の一人で、ジョホール・ダルル・タグジム戦に代表されるように、ここまでACLエリートの試合でも、度重なるビッグセーブでチームを救ってきた。また、一発でビッグチャンスをもたらすロングキックも対戦相手にとって非常に危険だ。ワン ダーレイは精神的な支柱としての役割も大きく、苦しい時間帯ほどチームを鼓舞する。

山東泰山がタフな相手であることは間違いないが、川崎Fにとっても年内最後のACLエリートの試合で、8位以内でのリーグステージ突破に大きく関わる試合だ。ホームでしっかりと勝ち切って、鬼木達監督の川崎でのフィナーレとなるJリーグ最終節のアビアスパ福岡戦につなげていきたい。

文:EL GOLAZO
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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