【UFC】今年最後のタイトルマッチで相まみえるパントージャと朝倉海
【UFC】
そうこうしているうちに12月になり、今年の対戦カードも残り2組となった。
12月に実施するイベントのいずれもが、興味深いマッチアップやエキサイティングな組み合わせに事欠かない。これから紹介するUFC 310の注目カードに激戦必須のネイト・ランドワー vs. チェ・ドゥホが含まれないのは、あまりにも見どころが多すぎるためだ。
2024年はこれまで、オクタゴンで信じられないほど素晴らしいアクションが見られた1年だった。それは最後の1カ月も同じことだろう。
UFC 310の注目カードは下記の通りだ。
モフサル・エフロエフ vs アルジャメイン・スターリング
【 Jeff Bottari/Zuffa LLC】
間もなく31歳を迎えるエフロエフは、いまだ無敗を誇るファイターだ。UFCで8連勝、プロキャリア全体では18連勝という驚異的な戦績を保持。ゆっくりではあるが着実にフェザー級ランキングを駆け上がり、今年初めにはアーノルド・アレンをユナニマス判定で下している。この年末にもう1勝を記録することで、競争の激しいフェザー級のタイトル戦線にまた一歩近づくことになるだろう。
スターリングはUFC 300でフェザー級デビューを果たし、ランキング常連のカルヴィン・ケーターを相手に主導権を握る試合運びで判定勝ちを収めた。元バンタム級王者であるスターリングは、UFCで20試合中16勝を挙げており、過去5年における軽量の階級の中でも最高クラスの実績を誇るファイターの1人だ。
この対戦では、とりわけグラップリングの駆け引きに注目される。エフロエフは接戦でレスリングを頼りにする場面が多いが、スターリングも卓越したグラップラーであり、地上戦ではロシア出身のエフロエフにさまざまな難題を突きつけることが予想される。また、エフロエフが打撃戦を選び、レスリング技術を守りに活用してスタンドでの展開を維持しようとする場合、どのような試合展開になるのかも非常に興味深いポイントだ。
ランディ・ブラウン vs ブライアン・バトル
【Chris Unger/Zuffa LLC】
ブラウンは現在3連勝中で、直近8試合では7勝を挙げている。この間の唯一の敗北は、トップコンテンダーであるジャック・デラ・マダレナに喫したものだ。“ルードボーイ”の異名を持つブラウンは、今年の初戦でムスリム・サリコフを鮮やかなノックアウトによって下し、直近の試合ではエリゼウ・ザレスキ・ドス・サントスを判定で退けた。後者の勝利は、評価に値するものの、大きな注目を集めるには至らなかった“玄人好みの試合”とも言える内容だった。
一方、バトルは前回の試合で大きなインパクトを残している。パリでケビン・ジュセを圧倒し、試合後インタビューでも強烈なパフォーマンスを披露して注目を集めた。元TUF(ジ・アルティメット・ファイター)優勝者であるバトルは、ウェルター級転向後に4勝1敗(1ノーコンテスト)と好成績を収めており、今回の試合でブラウンに勝利すれば、自身のキャリア最大の勝利となるだろう。
ブラウンとバトルの両者は、ランキング入りするには知名度がやや不足しているという点で苦戦している。それぞれが十分に注目に値する活躍を見せているにもかかわらず、ビセンテ・ルーケや“ヴェノム”ことマイケル・ペイジの存在を越えるには至っていない。この試合で圧倒的なパフォーマンスを見せることで、どちらかがその状況を打破し、来年さらに飛躍するための絶好のポジションを手にする可能性がある。
シリル・ガーン vs アレクサンドル・ボルコフ
【Chris Unger/Zuffa LLC)】
ヘビー級のトップ戦線が揺れ動く中、ガーンはエリートファイターの1人でありながら、この1年は表舞台から遠ざかっていた。今回のボルコフ戦は2024年の初戦となる。昨年にパリでセルゲイ・スピバックと対戦した際、才能あふれる元暫定王者であるガーンは勝利を収めたものの、やや急ぎすぎた印象もあった。1年の休養で調整を図ったことで、キャリア開始から10連勝を支えた絶好調のフォームを取り戻せているかに注目だ。
一方、ボルコフはガーンとの初戦以来、5勝1敗という好成績を残し、現在4連勝中。その唯一の敗北は暫定王者トム・アスピナルとの対戦だった。高身長を誇るロシア出身のボルコフは最近、より強い危機感と自身の武器に対する自信を示している。3連勝後に臨んだ直近の試合では、同胞のセルゲイ・パブロビッチをサウジアラビアで叩きのめした。
シャフカト・ラフモノフ vs イアン・マシャド・ギャリー
【Cooper Neill/Zuffa LLC】
シャフカト・ラフモノフは当初、ウェルター級王者ベラル・ムハメドとタイトルを争う予定だったが、王者の負傷により試合は中止。代わりに、100%のフィニッシュ率を誇るラフモノフは元トレーニングパートナーであるイアン・マシャド・ギャリーとの対戦に挑むことになった。30歳のラフモノフは、これまでの無敗のキャリアで多彩な戦い方ができることを証明してきた。UFC 310では、アイルランドの新星であるギャリーを初めて倒すファイターとなることを狙う。
対するマシャド・ギャリーは、2024年最後のイベントのメインカードでホアキン・バックリーと対戦する予定だったものの、ムハメドが骨感染症によって離脱したため、メインカードに続く注目度の高い1戦としてラフモノフとの対戦が組まれた。“ザ・フューチャー”ことマシャド・ギャリーは今年、すでに2つの判定勝ちを収めている。ジェフ・ニールを僅差で下し、その後マイケル・ペイジとの試合ではレスリングを駆使して勝利を獲得。ここでラフモノフに初黒星をつけることができれば、タイトル挑戦権を手にする可能性が高まる。
この短期間での対戦を受け入れ、無敗記録を賭けてノンタイトルマッチに挑む両者の決断は称賛に値する。2人がこれまでのキャリアで見せてきたダイナミックな才能と的確な判断力は、今回の試合でも存分に発揮されるはずだ。
アレシャンドレ・パントージャ vs. 朝倉海
【 Loureiro/Zuffa LLC】
フライ級王者のパントージャは、5月にUFCキャリアで初めてのホーム戦に向け、リオデジャネイロへ帰還した。故郷で戦ったパントージャは、スティーブ・エルセグに僅差でユナニマス判定勝ちを収めている。重要な局面で力を発揮できるパントージャは、現在6連勝中。その粘り強いグラップリングは、ブランドン・モレノとのタイトル戦の終盤でパントージャを助け、今年のタイトル防衛成功にもつながっている。
一方の朝倉は“RIZIN FIGHTING FEDERATION(ライジン・ファイティング・フェデレーション)”で13勝3敗をマークしてバンタム級タイトルを2度獲得。その中で、マネル・ケイプ、堀口恭司、フアン・アーチュレッタを倒してきた。今回の対戦を迎えるにあたって特筆すべきは、朝倉がしばらくの間、フライ級で戦っていない点だ。今年にプロモーションデビューを遂げるまでのケイラ・ハリソンと同様、UFC 310に続く1週間と、現地時間12月6日(金)に行われる計量で、注目を浴びることだろう。
両者が隙のないファイターであることに疑いはないものの、この1戦はクラシカルな“グラップラー対ストライカー”の構図を取る。チャンピオンがグラウンドで優位に立つ一方、チャレンジャーはスタンディングでより多彩な攻撃を持ち味とする。パントージャが3度目のタイトル防衛に成功するのか? それとも、フライ級に新たな支配者が登場する形で新年を迎えるのか? UFC 310での激突をお見逃しなく。
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