「磁気がスポーツ選手の疲労回復に影響」初めて明らかに 大阪体育大学産学連携研究論文が国際雑誌掲載

大阪体育大学
チーム・協会
 大阪体育大学スポーツ科学部・石川昌紀教授(専攻・身体運動中の神経・筋機能メカニクス)と医療機器製造・販売「株式会社コラントッテ」(本社大阪市中央区)の産学連携の共同研究論文が10月23日、国際雑誌「Sensors」に掲載された。論文名は「磁気衣類は、30km走った男性長距離ランナーの副交感神経優位を促進し、睡眠の質を改善する」。磁気がスポーツ選手の疲労回復に影響することが明らかにされたのは初となる。

石川昌紀教授 【大阪体育大学】

 研究は、高強度の長距離走(30㎞走)後に磁気ウェアを着用することが、男性長距離ランナーの自律神経系と睡眠の質に与える影響を調査したものだ。背景として、高強度トレーニング後の疲労回復やオーバートレーニング状態に自律神経活動が影響し、疲労回復過程では副交感神経を優位にすることが重要とされていることがある。その方策として生体への静磁気による自律神経活動への介入が疲労回復を促すことが期待されており、その効果を確認するために検証を行った。
 検証は、男子長距離ランナー15名を対象に、磁気ウェアと非磁気対象ウェアをランダムに着てもらい、心拍と睡眠への影響を30㎞走の前後の夜に測定した。磁気ウェアは180ミリテスラの永久磁石を同社独自のN極S極交互に配列し、シャツ背面に10個、パンツ腰部に6個の磁石を配置した。

 検証の結果として、磁気ウェアを着用した条件で、深睡眠時間が有意に増加、浅睡眠時間は有意に減少し、REM睡眠は磁気ウェアの着用後で有意に増加した。また、磁気ウェアを着用した条件では、すべての指標が副交感神経活動の優位性を示した。
 このため、磁気ウェアの着用は、高強度ランニング後の男性長距離ランナーにおいて、1「副交感神経の優位性を促進し」、2「睡眠の質を改善(特に深睡眠時間の増加)し」、3「主観的な回復感を向上させる」ことが結論づけられた。

 検証の実践的意義として、磁気ウェアは、激しいトレーニング後のアスリートの回復を促進する実用的な方法となる可能性が示唆された。特に重要な競技前や集中的なトレーニング期間中の回復戦略として有用である可能性がある。今後は、より大規模な参加者での検証や、長期的な効果の検討、最適な磁場強度の特定などが必要とされている。

<石川昌紀(いしかわ・まさき)教授>
専門は、身体運動中の神経・筋機能メカニクス。ヒトの身体運動能力の可能性と限界について研究し、アスリートのサポートを行っている。

<「Sensors」とは>
 科学と技術に関する研究論文が掲載されるオープンアクセスの査読付き国際雑誌。Impact Factorとよばれる学術雑誌の影響度を評価する指標が3.9と高く評価されている国際雑誌の1つ。

雑誌名:Sensors
論文名:磁気衣類は、30km走った男性長距離ランナーの副交感神経優位を促進し、睡眠の質を改善する
著 者:大阪体育大学 スポーツ科学部 石川昌紀
森ノ宮医療大学 医療技術学部 信江彩加
関西大学 人間健康学部 佐野加奈絵
掲載日 :2024年10月23日




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