早大野球部 印出主将体制はまさかの幕切れ 日本一への挑戦は115代へ託される/環太平洋大戦

チーム・協会

試合後の選手たち 【早稲田スポーツ新聞会】

明治神宮大会 11月23日 神宮球場

早稲田スポーツ新聞会(記事 橋本聖、写真 梶谷里桜
 東京六大学秋季リーグ戦(リーグ戦)を制し、春秋連覇を達成した早大。明治神宮大会(神宮大会)に東京六大学の代表として臨む早大は9年ぶり13回目の出場となった。満を持して全11代表最後の登場となった早大の相手は楽天からドラフト2位指名を受けた好投手・徳山一翔(4年)を擁する環太平洋大。早大のエース・伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)と徳山の両エースのプライドのぶつかり合いとなり、互いに一歩も譲らず延長戦に。大会規定によるタイブレークの走者を進め、山縣秀(商4=東京・早大学院)の犠飛で遠かった1点を先制する。しかしその裏、同じくタイブレークの走者を二、三塁に進められ、適時打を浴びすぐさま追いつかれる。なおもサヨナラの走者を三塁に置いた状態で伊藤樹が投げた144球目。無情にも白球は印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)のミットに収まらず、まさかの幕切れで涙をのんだ。

 試合が始まる頃には照明が点灯し、冷たい空気が流れる神宮球場。序盤、寒さの影響もあったのか、伊藤樹は4回まで毎回の走者を出し球数が重なる出だしとなった。四球や失策で流れが相手に行きかねない展開が続いたがエースの意地を見せ無失点で切り抜ける。粘投を続ける伊藤樹を援護したい打線は5回、先頭の石郷岡大成(社3=東京・早実)が左前安打で出塁すると続く伊藤樹が三塁手の意表を突くバスターで走者を進め、得点圏に上位打線へ。しかし、後続が凡打に倒れ得点には至らず。続く6回も2死から四球と小澤周平(スポ3=群馬・健大高崎)の安打でチャンスメークするも本塁を踏むことができなかった。

先発の伊藤樹 【早稲田スポーツ新聞会】

 伊藤樹は4回に2つの失策で招いたピンチを凌いで以降、気迫の投球で二塁を踏ませない投球を見せる。本来の相手を寄せ付けない投球で味方の援護を待ち続けるも、早大打線は徳山を前になかなか好機を演出できず、9回までスコアボードに0が並ぶ。無得点で9回の攻撃を終えた両校。大会規定により、無死一、二塁からのタイブレーク制による延長戦に突入した。先頭の尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)の二塁ゴロの間に走者を二、三塁に進める。外野フライでも1点が入る状況で迎え、打席には山縣。初球を振りぬき、外野へ強い打球を飛ばし、三塁走者・石郷岡が帰ってくるのには十分な犠飛となった。山縣の犠飛でついに均衡が破れ、なおも走者を二塁に置いて一気に追加点までつかみたいところだったが、足をつりながらも全力投球を見せる徳山の前に吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)が見逃し三振に倒れた。

10回に先制の犠飛を放った山縣 【早稲田スポーツ新聞会】

 ようやくつかみ取った1点を守り抜き、準決勝に駒を進めたい早大。同じく無死一、二塁から始まる環太平洋大の攻撃を無失点に切り抜けるのが絶対条件だ。先頭打者が犠打を成功させ、サヨナラの走者も得点圏に。一人ずつ、丁寧に打ち取っていきたいところであったが、追い込んでから死球を与え、1死満塁のピンチを迎える。ここで迎える打者はこの試合、伊藤樹から2安打を放っている猿渡颯(4年)。2球で追い込んだものの3球目の直球を左前に運ばれ同点に追いつかれる。何としてでも後続を抑え、11回の攻撃で勝ち越しを図りたい早大だったが、勝利の女神は微笑まなかった。迎える打者に伊藤樹が放った初球。低めの変化球が大きくそれ、ボールは転々とバックネット裏に転がり、三塁走者が生還。この瞬間、早大の「春の忘れ物」を取り返す航海が終わった。

最後は暴投でサヨナラ負け 【早稲田スポーツ新聞会】

 打倒青学大を掲げ、厳しい鍛錬を重ね全国大会の舞台に戻ってきた早大であったが、2回戦で姿を消すこととなった。印出主将を中心とした現体制最後の試合はまさかの結末となってしまった。これで「チーム印出」は終了し、世代交代となる。試合終了後、大粒の涙を流しながら学生野球の聖地を後にする早大ナイン。最高の景色を見るための挑戦は115代へと引き継がれた。この悔しさをバネにさらなる進化を見せ再び神宮に帰ってくる。

【早稲田スポーツ新聞会】

【早稲田スポーツ新聞会】

印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)

ーー今日の試合を振り返ってください

樹の粘投に、バットで応えてあげられなかったことが今日のゲームの大きな敗因なのは明確です。チームを率いる主将として、4年生として、とても申し訳ない気持ちでいっぱいです。

ーー相手先発・徳山選手への印象を教えてください

要所でギアをあげる強気な投球が印象的でした。

ーータイブレークで同点に追いつかれた時、マウンドでどのようなことを話していましたか

監督さんから樹ならやれる。信じて投げ込めとお言葉をいただき、次のイニングの攻撃につなげることを自分は考えながら樹には、「大丈夫だ」と声をかけました。

ーー最後ボールが転がった時はどういった心境でしたか

自分の体やミットにボールは、かすりもしませんでした。必死に何とか前に止めようと試みましたが、打者の足に当たったのか、ボールが跳ねたのかすら分からず、ボールすらも見失ってしまいその後、一瞬にして試合が終わってしまったことに気づきました。何も考えられませんでした。

ーーこのチームでの野球を振り返っていかがですか

とてもシーズンを通して粘り強い早稲田らしい野球ができたと思います。それと同時に、自分がみんなと作ってきたチームは、そこ止まりのチームだったということだと思います。圧倒的な力がなければ日本一には、たどり着けないことを改めて痛感し、個人としてもチームとしてもまだやれたことがあったのではないかと自分の力不足で本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

ーー次のステージに向けて意気込みをお願いします

この早稲田での4年間という時間は、自分も本当に大きく成長させてくれたと思います。共に戦ってきた仲間、指導者の方々、支援してくださるOBの皆様をはじめ東京六大学野球ファン、早稲田ファンの皆様のおかげでここまでやってこれたと思いますし、これほど貴重な経験をさせていただくことができました。本当に感謝してもしきれないですが、新たなステージでも、早稲田の魂をしっかりと持って野球に打ち込んでいきたいと思います。

ーー来季のチームに一言お願いします

自分が入学してから3年間、優勝がなく低迷していた早稲田を春秋連覇に押し上げることができたのも3年生以下の下級生の力がとても大きかったと思います。本当に頼もしかったですし、この後輩たちと野球ができて幸せでした。「日本一」という大きな課題を残して卒業する事になってしまいましたが、今年1年の経験を糧に来年は必ず達成してくれると信じています。新チーム立ち上げ時はしんどいことも辛いこともたくさんあるけど頑張ってください!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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