上田桃子-プロの仕上げは『優勝』

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上田 桃子 【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

 JLPGAツアー2024シーズン第35戦『第40回伊藤園レディスゴルフトーナメント』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)が11月8日、千葉県長南町・グレートアイランド倶楽部(6,769ヤード/パー72)で開幕。7日はプロアマ大会、公式会見が行われた。

 これ以上はないような、清々しいたたずまい。3日、今季限りで次のステップへ移行する決断を自身のSNSで発表した、上田桃子がこの日、改めて会見で語った。

 「次の人生に移るのは、年齢を含めて今かなぁ、と決めた。30歳を過ぎた頃から毎年、シーズンに備え、準備をする前、シーズンを通して心技体が保てるかを、いつも考えていた」という。続けて、「最終的に決断したのは、今年の日本女子オープンが終わって。今年、3試合の公式競技を戦い、勝てなかったなぁ-と振り返って、精いっぱいの準備をした。年齢はまったく気にしていない。というのも、飛距離などは一年、一年、のびていたからです」と話した。

 今季はプロ20年の節目にあたる。ただ、ゴルフのキャリアは10歳からスタートした。「人生は長い。ゴルフだけが人生-というものにはしたくはなかった。女性、社会人、プロとして過ごしてきたけど世の中は、まだ知らないことばかりです」と言葉を区切り、「次に何を、ということはまだ決めてはいない。一番は、勉強をしたい。幸い、私にはゴルフで培った教科書がある。現状では(ツアー復帰は)考えていない。でも一生、プロゴルファーですから、もしかしたら(ツアーへ)戻りたくなるかもしれません。わからないから、引退という言葉をつかわない。やりたいことなどを、足を止めて考えます」と、心中の思いをわかりやすく、正直に語った。

 さらに、これまでのツアー生活を振り返る。「本当に、たくさんのことを経験。学んだ20年です。最終プロテストに合格。すぐに結果が出て、こんなにうまくいく、という立ち上がりです。だから苦労知らず、でした。でも、アメリカに行って、たくさんの失敗を経験。思うようにいかないことがすごく多い。だけど、誰よりもうまくなりたいから、どんな時でも逃げずに、正面から向き合ってきた。うれしい。楽しい。そんなことよりも、きつい時間が多かった。優勝した時ぐらいかな。腹の底から笑えたのは…。そういえば、(優勝争いをしていて)やっちゃったが多かったかなぁ」。実に穏やかな口調で、時にはちょっと斜め上に視線を移す仕草が印象に残る。

 ただし、ご本人を取材する立場にとって、これほど肩から力が抜けて心を整えた様子を拝見するのは、なかったかもしれない。いつも、たぎるような闘志を抑えていたイメージがある。「今年ほど、うまくなりたい-と思って入ったシーズンはなかったかもしれません。だけど、それがじゃまを…。技術にこだわりすぎて、できないことをやろうとした。時には、感覚にゆだね、時には本能でプレーすることも必要。要は、私らしさを出していなかった」ということで、「今週、来週のトーナメントを、どうやったら勝てるかを考えている。最終戦の出場権を得られるように」。笑顔を浮かべながら、瞳の奥がキラリと輝いた。迷いなどの葛藤が消えている。いい準備ができた証。

 ところで、自身のプロフェッシュナルの美学を質問すると、「ロールモデルが、お二人います。ひとりは賞金女王の後、CMでご一緒した上戸彩さん。それから(シンガーソングライター)AIさんです。とても人間味がある素晴らしい方。それでいて、仕事に関してはまじめで、すごく自分にきびしい。今まで、ご迷惑になるかもしれない、とお名前を出すことは控えていたけど…。プロの美学かどうかはわかりませんけど、そうなっていけたらいいなぁ、とここまできた」と明かした。

 ロールモデルとして上田桃子の名をあげるプロがたくさんいる。どんなセカンドキャリアを選択するのか。人生の達人は再び、考える。(青木 政司)

【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

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