「ポスト万博の都市戦略は」大阪体育大学・原田学長が講演~解説記事に27万PVなど注目集める中で

大阪体育大学
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 シンポジウム「スポーツ×観光の可能性 ポスト万博の都市戦略」が10月26日(土)、大阪市のアーバンネット御堂筋ホールで行われ、大阪体育大学の原田宗彦学長が基調講演を務めた。

基調講演を務める原田宗彦大阪体育大学学長 【大阪体育大学】

◆スポーツマネジメント研究の第一人者
 原田学長は日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)代表理事を務め、日本のスポーツマネジメント研究の第一人者。2019年までJリーグ理事、参与としてプロサッカーの運営に深く関わり、現在も日本バレーボール協会理事、日本バドミントン協会理事などを務める。
 メディアの取材・出演も極めて多く、国内の全国新聞・テレビのほか米ニューヨーク・タイムズ紙、フランスAFP通信などでもスポーツマネジメントの分野から解説。10月2日、オリンピック最高位スポンサーからすべての日本企業が撤退した背景を解説しヤフーニュースに掲載された記事は、2日間で異例の27万ページビュー(PV)を集めた。講演依頼なども相次いでいる。
 シンポジウムは、大阪体育大学と同じ熊取町にある大阪観光大学が主催し、大阪体育大学とJSTAが共催した。

◆基調講演・「スポーツツーリズムで300万人以上が訪日」
 原田学長は「スポーツツーリズムの課題と展望:ポスト万博のスポーツ都市戦略」と題して講演した。
 原田学長は、スポーツ目的の訪日外国人数が2019年の229万人から2025年に20%増の270万人に増やすという政府・観光立国推進閣僚会議の目標について、300万人以上に上方修正する必要があるとし、「スポーツツーリズムとは、スポーツを通して人を動かすメカニズムを作ることであり、スポーツ施設などがないところでも実現可能だ」と強調した。具体的な事例として、スキー場が廃止されたピンチを山でのトレイルラン大会の創設で跳ね返した富山県南砺市利賀村などを紹介した。

◆スポーツコミッションが地域活性化の担い手
 そのうえで、地域活性化は地域スポーツコミッションが担うべきだとした。各大会の開催や公共スポーツ施設の維持・管理など地域資産形成型の政策(インナー)だけでなく、合宿・大会の誘致やスポーツ観光コンテンツの開発によるツーリストの誘客など域外交流振興型の政策(アウター)の必要性を指摘。県を挙げてスポーツを通じたまちづくりを多角的に進める佐賀県、日本でいち早くスポーツコミッションを設立し、11年間で650億円の経済効果があったとされるさいたま市、文化とスポーツを融合し弓道、茶道、禅などの武家文化を体験する金沢武道ツーリズムを推進する金沢市の事例などを紹介した。

◆スポーツ都市戦略の4コンセプト
 さらに、「スポーツ都市とは、スポーツが重要な政策課題とされ、すべての住民やビジターが『する』『見る』『支える』スポーツに積極的に関与できる機会に満ちあふれた地域」とし、戦略に必要な4つの基本コンセプトとして、「移動が簡単なコンパクト都市」、地域の文化観光資源の活用など「持続可能なまちづくり」「スポーツツーリズム」「アクティブライフを可能にする都市」を挙げ、宇都宮市が進める、スポーツ施設や駅、大学をLRT(次世代型路面電車システム)で結ぶ都市戦略、「長居わくわくパークプロジェクトチーム」による先進的な長居運動公園の指定管理者制度を紹介した。

基調講演では、スポーツツーリズムの先進事例が多数紹介された 【大阪体育大学】

◆アクティブシティの4原則
 また、活動的で健康的なアクティブライフの場としてのアクティブシティの整備が重要であり、その4原則として、回遊行動を阻害しない空間デザイン、「ナッジ」を活かした身体活動を誘うまちの仕掛け、歩くことに熱中できる街並み、「ゲーミフィケーション」「プレイスメイキング」を活用した楽しいアクティビティの連動を挙げた。

◆究極の目標は幸福な社会づくり
 最後に「スポーツによるまちづくりの究極の目標は、幸福な社会づくり」だとし、都市の豊かさをはかる指標も、従来の大型小売店店舗面積、病院の病床数、都市公園面積などの定量的な「都市の住みやすさランキング」から、「地域のボランティア活動に参加したか」「手軽にスポーツやエクササイズを楽しむ機会があるか」「それらを一緒に楽しむ友人や仲間がいるか」などの定性的な新しい指標に切り替えていくべきではないかと提案した。

◆スポーツ庁参事官「万博の財産は魅力の世界発信の礎に」
 講演に先立ち、スポーツ庁の廣田美香地域振興担当参事官が「来年の万博で培われたネットワークは、大阪でのスポーツを通じた国際交流やまちづくり、さらには地域の魅力を継続的に世界に発信するための礎になると思っている」とあいさつした。

あいさつをするスポーツ庁の廣田美香参事官 【大阪体育大学】

◆関空からみたスポーツツーリズムへの期待
 関西エアポートの田邊真・渉外本部地域連携部長は、今年、開港30年を迎えた関西国際空港の現状とスポーツツーリズムへの期待をテーマに講演した。

◆パネルディスカッションに4氏
 シンポジウムでは、原田学長ら4名がパネリストを務めた。セレッソ大阪の宮島武志副社長はセレッソ大阪が取り組むSDGs活動を紹介。ミズノの尾﨑徹也執行役員は同社が全国181施設で展開するスポーツ施設サービス事業や山口県宇部市で進めるスポーツコミッションとの連携イベントなどを説明した。早稲田大学大学院で原田学長から指導を受けたJSTAの藤原直幸ディレクターは、スポーツコミッションは全国に204団体(2023年10月時点)があり、調査によると、61%が事務局を地方公共団体に置き、予算は3億円以上の団体もある一方で、中央値は760万円程度であること、大阪府内の既存のスポーツコミッションは、大阪府全域、東大阪市、泉南地域、熊取町、大阪市舞洲、港区を活動地域とした6団体があるが、大阪市全域を対象にした組織はなく、スポーツコミッション大阪(仮称)の設立が待たれることなどが報告された。

ディスカッションする(右から)セレッソ大阪・宮島武志副社長、JSTA・藤原直幸ディレクター、ミズノ・尾﨑徹也執行役員、原田学長 【大阪体育大学】

◆原田学長「より幸せな大阪をめざし新組織を」
 ディスカッションでは、スポーツを通じた大阪のさらなる活性化などについて議論があり、原田学長は「スポーツコミッション大阪は、大阪にある資源を活用するために様々な団体をコーディネートしながらウェルビーイングなまちづくり、幸せなまちづくりをめざすべきだ。住んでいる人がすごく楽しいと感じる所には、絶対に人が来るし、インバウンド観光に結び付く。大阪の発展のためにも、スポーツ観光資源を活かしていく、新しい組織を作りたいと思っている」などと話した。

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