【ママさんバレーボール】白いボールを追いかけて⑤岩手編 第29回全国ママさんバレーボールことぶき・第9回おふく大会 65歳超選手たちが見る「メジャー」の世界

チーム・協会

65歳以上の選手たちが熱戦を展開したことぶき大会(石川-山形) 【MVF】

メジャー選手母校の隣で熱戦

 会場の総合体育館の隣に花巻東高校があった。校舎に貼りだされた巨大横断幕に大書されていた名前はメジャーで活躍する卒業生の大谷翔平でもなく、菊池雄星でもない。東大合格者くんの名前だ。敷地には菊池投手の寄付金を元手に室内練習場の建設が進んでいた。
 日が差すと夏の陽気、曇ると晩秋の趣の岩手県花巻市に65歳以上のママさんバレーボーラー500人が集まった。10月11日から14日まであった全国ママさんバレーボール第29回ことぶき大会・第9回おふく大会(全国ママさんバレーボール連盟主催、朝日新聞社後援)のためだ。花巻市でママさんバレーの大会が開かれるのは、第48回全国ママさんバレーボール大会があった2017年以来。大谷翔平がロサンゼルス・エンジェルスに移籍した年だ。
 年齢別大会のことぶき大会は今年から60歳以上の年齢制限を65歳に改め、70歳以上のおふく大会は次回で10年になる。おふく大会が始まった当時、「70歳以上」と聞いて、50代半ばだった筆者はそんな無茶なと思ったものだ。実際に試合内容は若干スローモーだったが、10年近くが経って、失礼ながら立派なバレーボールになっている。疑う方は動画をご覧あれ。

市松模様ユニに込められた思い

 両大会とも各チームが2日間で4試合を戦った。優勝も順位もない親善大会だが、みんな4勝を狙う。多くのチームが観光旅行もセットでの参加でも、それはそれ。コートに立てば負けん気に火がつく。19チーム参加のことぶき大会で4勝したのは兵庫、新潟、広島の3チームだった。
 中でも目を引いたのは、広島の「CLOVER」のグリーンの市松模様のユニフォームだ。チーム名が入っていないのは借り物だからで、山下緑さん(69)が所属していたチームが大会用に作りながら、コロナ禍で日の目を見なかったもの。保管していた山下さんが今大会で使わせてもらえないかとかつてのチームメイトに問い合わせると、快く許可してくれた。「私たちの分もユニフォームを全国に連れていって、と。コロナで挫けてバレーを辞めてしまった仲間もいたので、なんだか涙が出てしまって」
 チームは27年前、全国ママさんバレーボール大会で翠町体協のセッターとして日本一になった吉田陽子さん(69)の二段トスが冴え、4戦全勝。70歳以上の4人はおふく大会にも残って「広島撫子」のメンバーとしてプレーし、計8勝を果たした。「立ち上がりが重くてヒヤヒヤしたけど、目的を果たせました」と強打でポイントを重ねたキャプテンの新谷久美子さん(70)。4人はことぶきの他のメンバーが一足早くでかけた平泉、仙台を巡って帰路についた。

チーム名に葉が集まる絆と「苦労する婆」を込めたという「CLOVER」 【MVF】

「さくらこ」から昇格して知る粘り

 おふくには冬を超えて春を先取りするユニのチームがあった。徳島の「さくら」で、桜の花びらが舞うデザインが、ありそうでない斬新さ。17年間使ったピンク地のシャツを一新し、2週間前にできたばかりだ。チームは18年前に当時60歳以上だったことぶき大会に向けて発足。全国大会にも出場した。その後、現在55歳以上のいそじ年代がキャリアを重ねてことぶき年代に上がると「さくらこ」というチームに、70歳を超えるとさくらに昇格する仕組み。今回のチームも、さくらこ4人が新たに加わっての参加だ。

ユニフォームに桜の花びらが舞う「さくら」はサーブ力で4勝 【MVF】

 メンバーは県北部に散らばり練習は月に2回ほどだったが、キャプテン岡村邦子さん(74)を中心にまとまり、初日は強豪の岡山と1-1ながら得点数で上回り2勝。2日目もバレーどころの愛知をサーブで崩して競り勝った。今回、ことぶき年代から昇格した野口富子さん(70)は、「うちは、さくらのほうがバレーをよく知っていて次が読めるから、ネバい(粘り強い)んです」と話す。強打はレシーブされるので、あえて軽打を相手の前に落とすという極意も教えてくれた。つまり、60代もまだまだ子どもなのだ。
ママさんバレーの年齢別大会は年齢が上がるごとに粘り強くなっていく。フィジカルをカバーする技もより奥深い。その意味で、ママさんバレーでは、最年長のおふく年代こそ昇格してみないと分からない「メジャー」なのかもしれない。
取材・文/伊東武彦

◇第29回ことぶき大会結果

・4勝 兵庫(神戸)、広島(CLOVER)、新潟(みなみクラブ)
・3勝 熊本(三愛クラブ)、三重(BELL)、福島(あさかの)、福井(福井すいせん)

◇第9回おふく大会結果

・4勝 徳島(さくら)、広島(広島撫子)
・3勝 兵庫(あじさい)、岡山(岡山)、長野(あいあい)、青森(あおもり)、愛媛(緑)
・2勝1分 京都(のぞみ)、帯山(熊本)
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著者プロフィール

バレーボールを通して会員の心身の健全な発展と、その輪の広がりを願いあわせて、社会的価値のあるものとして生涯スポーツに導くことを目的としてガイドラインの設定と各種大会の運営を行っています。

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