【ACLEホーム初戦!!】川崎公式なのにどこよりも詳しい(!?)光州FCプレビュー

川崎フロンターレ
チーム・協会

【(c)AFC】

“顔馴染み”の次は、ホーム初戦で“初対面”を迎え撃つ。

9月18日(水)に行われた2024/25シーズンのAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージ初戦で、蔚山HDを1-0で下した川崎フロンターレ。蔚山とは実に通算7大会目の対戦だったが、アウェイの蔚山文殊サッカースタジアムで初めて勝利に成功した。

“アジア青覇”に向けて順調な第一歩を踏み出したフロンターレは次戦、10月1日(火)に等々力陸上競技場でACLEホーム初戦を迎える。相手は国際大会初出場の光州(クァンジュ)FC。蔚山と違って初対戦のチームであり、フロンターレの韓国勢との対戦としては8クラブ目のマッチアップとなる。

ACLEの初戦では横浜F・マリノスに7-3という衝撃のスコアで勝利した光州。すでにJリーグファンの間でも注目を集める韓国勢の“ダークホース”は、一体どんなクラブなのだろうか。

2010年設立、Kリーグ1で最も“若い”クラブ

光州は韓国南西部の光州広域市をホームタウンとし、2010年12月にKリーグ歴代16番目に設立され、翌2011年よりリーグに参入した。今シーズンのKリーグ1(1部)全12チームの中では最も設立年が遅く、国内でもまだ歴史の浅いクラブでもある。

そもそも、韓国サッカー界では2002年日韓ワールドカップの前後に各地で地方自治体を主体とする「市民クラブ」が設立されてきた。2022年のACLグループステージでフロンターレと対戦した大邱FCなどがその例だ。

そこで、日韓W杯準々決勝の舞台となった光州ワールドカップスタジアムを擁する光州市でもプロサッカーチーム発足の動きがあったのだが、予算問題などもあって設立が難航する。

結局、2003年から選手が兵役義務を履行するための軍隊チーム「尚武」が光州市を本拠地としてKリーグに参戦。この間に紆余曲折を経て市民クラブ設立の準備が進められ、尚武のホームタウン契約終了に伴い、2010年に「光州FC」が誕生した。

今季でリーグ参入14年目となる光州では、過去に日本と縁ある選手も在籍。現在FC町田ゼルビアに所属するFWナ サンホはユース出身で、光州時代も背番号10を背負い、2018年に2部で年間MVP、年間ベストイレブン、得点王という個人3冠を達成した。ほかにも、元サガン鳥栖のキム ホナム、元FC岐阜のパク ギドンといったJリーグ経験者や、日本人選手では和田倫季、佐藤穣の2人が光州でプレーしている。

“Kリーグ屈指の戦術家”による攻撃的サッカー

横浜FM戦で指揮を執るイ ジョンヒョ監督 【(c)AFC】

このような歴史を持つ光州だが、蔚山のように毎年上位を争うようなクラブではなかった。これまで3度の降格、3度の昇格を経験しており、2部では2019年と2022年に2度優勝を経験しているものの、1部で3シーズン以上定着したことは過去一度もない。

そんなクラブをアジアの舞台まで導いた立役者こそ、現在指揮を執るイ ジョンヒョ監督だ。

49歳の指揮官は現役時代、釜山一筋でプレーしたワン・クラブ・マンだった。サイドバックとしてリーグ戦通算165試合に出場し、2005年のACL出場などの実績も持つが、韓国代表には一度も招集された経験がない。

引退後は大学サッカー部で指導者キャリアをスタートさせると、Kリーグクラブのコーチを経て2022年に光州の第7代監督に就任。プロ監督初挑戦ながら光州を同年の2部優勝に導くと、2023年は昇格組ながら1部全チームに勝利する快進撃を見せ、「最高順位」「最多勝点」「最多勝利数」のクラブ記録をすべて更新する3位でフィニッシュ。今回のACLE出場権を獲得するに至った。

イ ジョンヒョ監督は4-4-2を基本フォーメーションとしつつも、選手が流動的にポジションを入れ替え、後方からパスをつないでゴールに迫る攻撃的サッカーを志向する。Kリーグファンから“ジョンヒョ・ボール”とも呼ばれる指揮官のスタイルを、「光州は“一般的なKリーグのチーム”とは大きくかけ離れたチーム。韓国で最も繊細で、スピーディーなパスサッカーをするチームこそまさに光州だ」と韓国メディアは評価する。

実際、「私が追求するのは“面白いサッカー”だ。相手に得意なことをさせないのではなく、自分たちの得意なことで勝利する」という哲学を掲げる指揮官には、“Kリーグ屈指の戦術家”という呼び声も高い。

そのイ ジョンヒョ監督体制の光州で中核を担うのが、2人の代表選手だ。横浜FM戦でハットトリック+1アシストを記録したアルバニア代表FWヤシル アサニはEURO2024にも出場し、夏の移籍市場ではスペインからのオファーが報じられるなど、欧州からも注目を浴びる左利きウィンガー。同試合で2アシストの韓国代表MFチョン ホヨンも、9月のW杯アジア最終予選でメンバーに招集された23歳の有望株だ。

ほかにも、ブラジル出身の22歳FWガブリエル、ジョージア代表経験を持つFWベカ ミケルタゼなど、強力な“個”を持つ前線の外国籍選手には警戒しておきたい。

注目は家長昭博とも対戦経験があるDFアン ヨンギュ

北九州時代(2013年)のアン ヨンギュ選手 【(c)J.LEAGUE】

中盤や前線にタレントが揃う光州ではあるが、注目選手にはチーム唯一の元Jリーガーであるベテランセンターバックを紹介したい。2022年から3年連続でキャプテンを務めるDFアン ヨンギュのことだ。

現在34歳のアン ヨンギュは、大卒ルーキーとして2012年に水原三星ブルーウィングスに加入すると、2013年にギラヴァンツ北九州へ期限付き移籍した経歴を持つ。当時はJ2リーグで家長昭博らが所属したガンバ大阪とも対戦しており、シーズン成績はリーグ戦出場14試合、天皇杯出場1試合としている。

以降はKリーグの各クラブを渡り歩くと、イ ジョンヒョ監督が就任した2022年から光州に加入し、DFながらKリーグ2の年間MVPに輝く活躍ぶりでチームの優勝に貢献。横浜FMとのACLE初戦はベンチで出場なしに終わったものの、指揮官のサッカーを後方から支える絶対的存在として信頼を得ている。

ちなみに、アン ヨンギュはプロ1年目の2012年、当時の水原三星で正守護神を務めたチョン ソンリョンとチームメイトだった。今回のACLEに向けては「個人的に日本のチームとの試合を期待していた」と意気込みを語っていたが、自身にとって久しぶりとなる日本での試合を心待ちにしていることだろう。

何より、光州としても今度のフロンターレ戦、すなわち等々力陸上競技場での試合はクラブ史上初のACLアウェイゲームとなる。「アジアに“光州FCのサッカー”を知らせる」という指揮官の言葉の通り、敵地でも独自のスタイルで勝利を狙ってくるはずだ。
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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