権藤可恋、亡き父に捧げる今季2勝目
【Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images】
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「最終日を単独首位で迎えるのは初めてですが、楽しみの方が大きいです」と2日目終了後に語っていた権藤可恋。2位以下に4打差をつけていただけにどこか余裕を感じさせていた。しかし、ジワジワとプレッシャーが襲ってくる。
「やっぱり4打差だと周囲も私が勝つものだと思うでしょうし、自分も勝ちたいと思い始めたら緊張してきました」。今まで経験したことがない“勝って当たり前”という雰囲気に飲み込まれてしまった。最終日の朝、緊張したままコースに到着したが、スタート前の練習でスイングリズムに気をつけてボールを打つうちに、徐々に落ち着いてきた。64の自己ベストをマークした前日と同じようにイメージどおりの弾道を確認できたことが大きかった。
さらに、「緊張するのは当たり前なんだ」と自分に言い聞かせることで、スタートホールから冷静にラウンドできた。ラウンド中は終始落ち着いた表情を見せ、メンタルの強さを感じさせたが、聞けば8年前に父親の一夫さんから手渡された『フローゴルフへの道』という本を読み返したことが大きかったという。PGAツアーで活躍するプロのメンタルコーチが著者で、メンタルなどについて書かれたものだ。「ミスを完全に防ぐことはできないですし、自分にやれるだけのことをやって、どんなことがあっても最後まであきらめずに立て直して、精一杯頑張れたらいいなと思いました」。結果、最終日はノーボギーの69で回り、ミスを完全に防ぐことができた。
終わってみれば、通算15アンダーまでスコアを伸ばし、大会記録を2打も更新した権藤。なんと3日間で1ボギーという安定した内容だった。好調なゴルフを続ける要因としては、試合が終わる度に弾道測定器のトラックマンで自分のショットを細かくチェック。気になるところはすぐに修正しているという。また、パッティングでも2週前にボールが同じ転がりをしていないことをコーチから指摘され、原因を分析。アドレスでフェース面が左を向いていることが判明し、フェースの向きをスクエアに戻したところ、転がりがよくなった。
【Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images】
「実は7月に父が急逝したんです。闘病中は自分が弱音なんて吐いていられない気持ちで頑張っていましたが、亡くなった後は悲しすぎて、バーディーを取ってもボギーを叩いても何も感じない状態でした」。しかし、悲しいのは自分だけではないと思い、逆に自分が頑張れば母親や祖母ら家族を元気にすることができると考えた。
「こうしてプロゴルファーとしてプレーできるのも父のお陰なので感謝しかありません」。3年前からコーチに師事するようになったが、10歳でゴルフを始めた時からずっと一夫さんが師であり続けたのは間違いない。その父のためにも、家族のためにも、もう一度JLPGAツアーでシード権を獲得し、優勝を飾りたいというのが、権藤にとって最大の目標なのだ。
今回の優勝で、明治安田ステップ・ランキングでは1位に躍り出た権藤。残りはまだ8戦あるだけに気は抜けない。目標達成のためにも3勝目、4勝目を目指して戦い続けるだけだ。
【Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images】
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