【ACLE開幕!!】川崎公式なのにどこよりも詳しい(!?)蔚山HDプレビュー

川崎フロンターレ
チーム・協会

川崎と蔚山の前回対戦は昨年12月のグループステージ最終戦 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

“アジア青覇”を目指す川崎フロンターレの初陣に、またしても韓国王者が立ちはだかる。

いよいよ開幕する2024-2025シーズンのAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)。フロンターレは9月18日(水)、アウェイの蔚山文殊フットボールスタジアムで蔚山HDとのリーグステージ初戦(19:00キックオフ)に臨む。

両クラブはもはや“顔馴染み”の関係とも言って良い。初めて戦った2014年のグループステージにはじまり、2018年、2019年、2021年、2022年、そして2023年と、ACL過去6大会で対戦しているからだ。そして今季、4年連続となる日韓対決が実現することになった。

フロンターレとは昨年12月のグループステージ最終節以来、約9カ月ぶりの再戦となる蔚山だが、この間にはピッチ内外で大きな変化が起きている。そこで今回は、蔚山というクラブの歴史を振り返るとともに、現在のチーム状況などを紹介したい。

Kリーグ2連覇中の強豪

蔚山はKリーグ発足元年の1983年12月、韓国国内4番目のプロサッカーチームとして誕生した。当時のクラブ名は「現代ホランイ」。「ホランイ」は日本語で“虎”を意味する。

翌1984年から正式にリーグへ参入すると、ホームタウン制度が導入された1987年からは韓国北東部の江原道に拠点を置き、1990年に現在の蔚山へと本拠地を移転。元々の親企業は自動車最大手「現代自動車」が務めていたが、1998年からは造船最大手「現代重工業」がその役割を担った。

以降は「蔚山現代ホランイ」「蔚山現代」と2度のクラブ名変更を経て、親企業「現代重工業」の社名が「HD現代」に変更されたことに伴い、昨年12月にクラブ名とエンブレムを一新。2024年から「蔚山HD FC(ウルサン・エイチディ・エフシー)」として活動している。

主な獲得タイトルは国内でKリーグ優勝4回(1996、2005、2022、2023年)、FAカップ優勝1回(現コリアカップ/2017年)などがあり、ACLでは2012年と2020年に優勝した。クラブワールドカップも過去2大会出場しており、日本から浦和レッズが参戦する2025年開催の新クラブW杯「ムンディアル・デ・クルーベスFIFA」にも出場する予定だ。

このような実績を誇るクラブも、過去にはKリーグ最多10回という準優勝回数から「シルバーコレクター」と揶揄されることもあった。ただ、直近のリーグ2連覇でその不名誉なレッテルを完全に剥がし、現在は国内屈指の強豪として確固たる地位を築いている。

過去に蔚山で活躍した選手では、かつて横浜F・マリノスと柏レイソルで活躍したユ サンチョルさんや、元ジュビロ磐田、ガンバ大阪のFWイ グノ、ユース出身でヴィッセル神戸やレイソルに在籍したGKキム スンギュなどがいる。ちなみに、昨季ACL準々決勝でフロンターレを破った山東泰山のチェ ガンヒ監督も、現役時代は蔚山で200試合以上に出場したレジェンドの一人だ。

また、蔚山は日本人選手との縁が深いクラブでもある。2012年に在籍した家長昭博をはじめ、これまで増田誓志、阿部拓馬、豊田陽平、エスクデロ競飛王といった面々が蔚山のユニホームに袖を通してきた。

最近では、2022年にマリノスからレンタル加入した天野純がリーグ優勝に貢献。現在は、2023年に浦和レッズから完全移籍加入した江坂任が在籍2年目のシーズンを戦っている。

2014年3月12日の初対戦。通算では川崎2勝、蔚山4勝、引き分け5(PK戦含む)となっている 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

想定外の監督交代劇を乗り越え、チームは好調を維持

今季の蔚山は開幕から着実に上位圏内をキープし、Kリーグ1第29節終了時点で15勝6分8敗の12チーム中2位としている。首位の江原FCとは勝点51で並んでおり、3連覇の可能性も十分に残している。

ところがそんなシーズン途中、クラブに大きな影響を及ぼす出来事が起きた。それが、7月の監督交代劇だ。

当時、蔚山は2021年からチームを率い、2022~2023年にクラブ史上初のリーグ2連覇を成し遂げたホン ミョンボ監督が、韓国サッカー協会(KFA)の要請を受けて韓国代表の新指揮官に就任。これにより、蔚山はシーズンの半分以上が経過した時点で監督が不在となる事態が起きたのだ。

そこで、ホン ミョンボ監督の後任として指揮を託されたのがキム パンゴン監督だ。

55歳の指揮官は現役時代の1992~1996年に蔚山でプレー。その後は一度選手を引退するも、高校サッカー部のコーチを経て香港で現役復帰した異色の経歴を持つ。監督としては2009~2010年と2012~2017年に香港代表を率い、2009年のアジアカップ予選と2010年の東アジア選手権で日本代表と対戦したことがある。

その後はKFAの副会長、韓国代表新監督を選ぶ国家代表監督選任委員長を歴任し、2022年にマレーシア代表監督に就任。今年1月のアジアカップでは母国・韓国とグループステージで対戦し、格上相手に3-3で引き分ける好勝負を演出した。

そして7月16日、マレーシア代表監督を辞任し、同月28日に蔚山の新監督就任が正式に発表された。現役以来、実に28年ぶりの“古巣復帰”を果たした指揮官は、就任会見で自身のサッカースタイルをこのように説明している。

「選手には『1分から90分まで我々が支配し、自分たちがコントロールする試合を通じて勝利を追求する』『相手のミスを待つのではなく、相手のミスを誘発するサッカーをする』と伝えた。個人的に好むのは“攻撃的な守備”だ。受動的ではなく、攻撃的かつダイナミックで、ファンがより好きになれるようなチームを作り上げていきたい」

そんなキム・パンゴン監督就任以降の蔚山は、公式戦6試合で4勝1分1敗と好調だ。代表ウィーク前の8月31日には同じACLE組の浦項スティーラーズと対戦し、5-4という乱打戦で勝利を手にしている。

指揮官が主に用いるフォーメーションは中盤正三角形の4-3-3。9月の北中米W杯アジア最終予選で韓国代表に選ばれたGKチョ ヒョヌ、DFキム ヨングォン、DFイ ミョンジェ、MFチョン ウヨン、FWチュ ミンギュを筆頭に、江坂や快速ウィンガーのFWオム ウォンサン、スウェーデン人コンビのMFダリヤン ボヤニッチとMFグスタフ ルドヴィグソンなどが主力を担う。

加えて、夏の移籍市場ではブラジル人FWヤゴ、ジョージア人FWギオルギ アラビーゼという2人の新外国籍選手を補強。ヤゴは代表ウィーク前に公式戦3戦連発と活躍し、アラビーゼも前出の浦項戦で左足の直接フリーキック含む2得点を決めるなど、ともに即戦力として蔚山の攻撃に厚みをもたらしている。

注目は今夏に加入した元Jリーガーのチョン ウヨン

蔚山には日本人選手の江坂はもちろん、韓国人選手でも7人のJリーグ経験者が在籍。スタッフには池田誠剛フィジカルコーチもおり、日本に縁ある人物がクラブを支えているわけだが、その中の注目選手として紹介したいのがチョン ウヨンだ。

かつて京都サンガF.C.でプロデビューし、ジュビロ磐田へのレンタルを経て神戸で外国籍選手初のキャプテンも務めたボランチは、アル・サッド(カタール)、アル・ハリージュ(サウジアラビア)と中東で通算7シーズン過ごし、今夏に蔚山へと加入した。蔚山はチョン ウヨンの生まれ故郷。プロ14年目で初のKリーグ挑戦だ。

年齢こそ34歳とベテランの域にあるが、9月のW杯予選にも出場した現役代表であり、安定感のある守備と正確なロングパスは健在。特にGKチョン ソンリョンとは2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得を経験し、その後もA代表でともにプレーしているだけに、2人の再会も見どころの一つと言えるだろう。

キム・パンゴン監督はACLEの目標を「決勝進出」と宣言している。蔚山は今年4月に戦った前回大会のACL準決勝でマリノスにPK戦の末敗れ、ファイナル行きの切符をあと一歩のところで逃した。それだけに、2020年以来3度目のアジア制覇へ、クラブとして今大会にかける思いは強いはずだ。

蔚山がホームにフロンターレを迎え撃つACLE開幕戦。“見知った間柄”の両クラブによる熱戦を今回も期待したい。

(文:ピッチコミュニケーションズ)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント