【コベルコ神戸スティーラーズ/神戸から日本のラグビーを熱くする】日本代表PNC準決勝進出!ゲームコントロールに手応え。代表初のFBでもプレーしたSO李 承信。「現状に満足せず、これからも成長していきます!」
準決勝のサモア代表戦に向けて「9番とコミュニケーションを取りながらゲームコントロールしていきたい!」と宣言(写真提供/平本 芳臣) 【コベルコ神戸スティーラーズ】
自分自身だけでなく、チームとしても戦い方がよりクリアに
日本代表は7点差に迫られる場面があるも、序盤からペースを握り一度もリードを許すことなく、ランキング19位のアメリカ代表(日本代表は14位)を41-24で撃破し、準決勝進出を決めた。
第1戦のカナダ代表に続いて日本代表が掲げる『超速ラグビー』のタクトを振ったのがSO李 承信。カナダ代表戦では、自陣ゴール前でのキックパスが相手に渡れば失点という危ない場面も作ったが、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは李について
「2027年を見据えスタンドオフの選手層を厚くする必要があります。現状、李に関しては良いとき、悪いときといった波がありますが、学ぶには試合の経験を積むしかありません。李は日本の中でもっとも未来を望めるスタンドオフです。その点については我々も自信を持っています」とその才能を高く評価する。
新生エディー・ジャパン始動後、イタリア代表戦を除く(イタリア代表戦はリザーブ)、すべてのテストマッチで『10番』を背負う李が指揮官の期待に応えるかのように熊谷で躍動。
PGで先制して迎えた15分、ハーフライン付近から李がディフェンスの裏へのキックでチャンスメイク。CTBディラン・ライリー(埼玉WK)が反応しボールをキャッチすると、CTBニコラス・マクカラン(トヨタV)にパスを繋いでトライに結びつけた。
試合を通じて、キックをうまく使いながらゲームをコントロールした李。7月13日のジョージア代表戦ではキックの使い方が課題だと反省していたが、この日は周りとコミュニケーションを取りながら状況を判断し、ディフェンスの裏へとキックを蹴り込むなど、チームを前に押し出した。
「夏のテストマッチでは『超速ラグビー』のスピードにフォーカスしていましたが、試合を重ねていく中で『超速ラグビー』をする上でキックの使い方を含めて、どうゲームをコントロールして、最終的に勝ち切るのかということを意識するようになりました。自分自身だけでなく、チームも戦い方がよりクリアになってきています」と、スピードだけではない『超速ラグビー』の進化を感じている。
また、この試合ではキックオフをふわりと蹴り上げてマイボールにする場面も再三見られた。これはキックオフから22m以内に入るとフェアキャッチができるようになった新ルールに対応し、深く蹴り込まずに、201cmのLOワーナー・ディアンズ(BL東京)や俊足のライリーに競ってもらおうと意図したもの。
「キックオフをマイボールにできた場面が多かったので良かったですね」と笑顔を見せる。
強みでもあるプレースキックでは、5本のゴールキックと2本のPGで16得点をマーク。
「PNCからルール改正があり、ショットクロックが60秒と短くなったのですが、トライ後、なるべく早くボールをもらうようにして蹴る準備をするようにしています。これまでのところうまく適応することができています」
そうきっぱり言い切った。
試合後、ジョーンズヘッドコーチは、
「カナダ代表、アメリカ代表戦とPNCを望んでいた形で勝ち進むことができています。ただ、まだまだチームは修正するべき点や課題も多いです。そんな中で今日は9番の藤原(忍)と10番の李が良いプレーをして、チームを一歩前に進めてくれました」と『超速ラグビー』の舵取りを担う両選手を称えた。
HB団を組む藤原 忍(S東京ベイ)は、合宿でも同部屋で、試合や練習中の映像も一緒に見る仲だ。藤原は「常に行動を共にすることでコンビネーションがよくなっていると感じていますし、承信にはいつも助けてもらっていますね」と感謝する。
李も「忍さんはスペースがあれば仕掛けていくところが強みです。ここは仕掛けるなという場面はお互いにわかっていますし、これからも一緒に成長していきたい」と決意する。
司令塔として一歩一歩着実にステップアップしている李は、この試合で多くの収穫を得た。しかも、後半12分、キャプテンを務めるベテランの立川 理道(S東京ベイ)が山沢 拓也(埼玉WK)に代わってグラウンドに入ってからはフルバックでプレーした。神戸スティーラーズでは昨シーズンの終盤、3試合フルバックでの起用があるも、日本代表で李がスタンドオフ以外のポジションでプレーするのは初めてのこと。
「試合が始まる前にハルさん(立川 理道)から山沢さんが交代した時に『15番』の可能性があるかもと言われていたので、心の準備はしていました。急遽フルバックをすることになりましたが、ディフェンス時のポジションニング、アタック時の連携など、昨シーズンの経験をいかすことができて。10番、12番といろいろなポジションができるのも強みなので、そこは変わらずやっていきたい」とも話す。
23歳の李は、司令塔としてまだまだ未完成。これからも貪欲に自身の成長に向き合っていく。
取材・文/山本 暁子(チームライター)
アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024
ファイナルシリーズ
準決勝
●9月15日(日)15:05KICK OFF 東京・秩父宮ラグビー場
日本代表(プールB1位)vsサモア代表(プールA2位)
決勝/3位決定戦
●9月21日(土) 大阪・花園ラグビー場
3位決定戦 16:00KICK OFF
決勝 19:05KICK OFF
※アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024
参加6チームがA(フィジー、サモア、トンガ)、B(日本、アメリカ、カナダ)2つのプールに分かれて総当たり戦を行い、プール1・2位が準決勝、3位が5・6位決定戦に進出。日本代表は2019年大会以来5年ぶりの優勝を目指す。
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