パリで最高の"雄叫び"を | 火ノ玉JAPANインタビュー #5:廣瀬隆喜(BC2)
【©︎日本ボッチャ協会】
第5回となる今回は、リオ2016パラリンピックで日本ボッチャ界に初メダルをもたらし、東京2020大会でも2大会連続メダル獲得に貢献した廣瀬隆喜選手。BC2クラスで東京2020大会金メダリストの杉村選手と双璧をなし火ノ玉JAPANを牽引するベテランは日本選手権では4連覇中。パラリンピック2大会連続メダリストとしてパリ大会に挑む廣瀬選手のインタビューをどうぞ。
様々なスポーツから行き着いたボッチャというスポーツ
小学生くらいから身体を動かすことがしたかったのですが、(当時は)普通学校に通っていてなかなか自分が思っているようなスポーツがなかったんです。中学で特別支援学校と言われる学校に移ってから、最初はたしか赤外線で撃つ射撃「ビームライフル」だったりとか、高校に入ってから陸上を始めました。でも、陸上もやっぱりタイムがないと代表になれなかったりということもありました。卒業してからも何かしらスポーツをやりたいなと思って、担任の先生や体育の先生に相談したところ「ボッチャがあるよ」と教えていただいたんです。学校にはたまたまボッチャのボールがあったので、最初はその中から癖のない球を選別して、高校3年の夏だったと思いますが学校のボールを借りて日本選手権に出たのが最初のきっかけですね。
ー パラリンピックを意識しはじめた瞬間は?
最初の頃は特にそういうのはなかったんです。とにかく身体を動かすことがしたかったのでいろんな方々に相談して、射撃に出会い、陸上に出会い、ボッチャを教えていただいて、それから徐々にパラリンピックという競技大会があるのも知って、そこを目指そうかなと思ったのが最初ですかね。やっていく中で自然とそうなっていったという感じです。
ー 日本選手権で勝てるようになってきて、そういう思いが芽生えたのでしょうか?
そうですね。最初からパラを目指すってすごく大きな夢でもありますけど、最初からデカすぎると夢も叶わないので、やっていく中でですね。最初から上手い人もいますけど、私は最初から上手かったわけではないので、やっていく中で目標というのがパラになったのかなぁと思います。
ー 東京大会以降の3年間、ターニングポイントになった試合は?
東京大会を終えてから、いろんなものを強化していかなければいけなかったのですが、残り4年というのが、(コロナの影響で)残り3年になり、その中でやらなければならなくなりました。その中で一番大きな大会というか、パラリンピックに向けての大きな大会という意味で一番は世界選手権(2022年リオ大会)ですね。ランキングを上げるためのポイント係数が一番高かったので、そこが凄く重要だし、一番重要な大会だったのかなと思います。
その大会では個人が銀、チームが銅を獲得しました。ランキングを見るとやっぱりそこのポイント係数が一番高かったので、そこを取る取らないではやっぱり個人もそうですけど、チームとして連続して出るためにも重要だったと自分の中では思っています。
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廣瀬選手の調子のバロメーター「雄叫び」にも注目
やっぱり皆さんが求めるのはちょっと強めなボールだったり、(ボールを)崩したりするというのもありますけど、求められるのは多分雄叫びですかね。良いプレーだったり、良いコースに入った時の雄叫びが、やっぱり皆さんが私に求められているところなのかなっていうのは今のところ思ってます(笑)。
ー パリでも雄叫びが見られそうですか?
そうですね。声を上げることで、チームのムードだったり、皆さんにもボッチャの楽しさ、面白さというものが伝わると思うので、声を出せるところは出していきたいなと思います。
ー 廣瀬選手のルーティンはありますか?
代表だと(ユニフォーム左胸の)国旗を握るんですけど、日本選手権など国内大会だと所属している企業のロゴを掴んで「出来る」とか「自信を持ってやろう」とか、ちょっとした言葉を言いながら、ほっぺたを数回叩くというのが自分のルーティンなのかなと思います。特に上のレベルに上がってくると少しのミスが命取りにはなってしまうので、本当に気合いを入れるという意味で叩いています。ただ、あまり気合い入れすぎると叩きすぎてほっぺたが痛くなることも多々あるんです(笑)。
【©︎日本ボッチャ協会】
廣瀬選手はどんな人?
イチゴが一番好きですかね。地元・千葉県でも山武市というところでよくイベントに行かせていただいていたんですけど、そこのイチゴが結構甘くて瑞々しいというか、練乳が要らなくて食べれるくらい甘いんです。結構気に入っているんですけど、なかなかそちらのイベントが最近なくて、わざわざ道の駅まで一時期行った時もあります(笑)。それくらい、イチゴは好きですね。
好きな飲み物もちょっと迷ったんですけど、今ハマっているのは「ずんだシェイク」かなと思います。ただ「ずんだシェイク」と言っても、どこかのサービスエリアか、羽田空港しかなくて、遠征だと夜遅くなったりするのでなかなか買えないんですけど、買えるときは買って飲んだりしたこともあります。
ー 尊敬する人物は?
やっぱりこのボッチャという競技は、自分一人だけでは出来ない競技でもあると思います。もちろんスポンサーさんだったり、ファンの方々だったり。リオ大会後の2017年以降から「チーム廣瀬」というのを立ち上げて、コンディショニングスタッフだったり、映像分析だったり、マネジメントの方だったり、車椅子業者さんだったり、栄養士さんだったりとか、様々な専門分野のコーチングのプロの方が一緒に活動することになりました。一人だけで出来るものではないので、その中で皆さんと共有しあったり、いろんなことを話し合いながら出来ています。私たちは競技の中で結果を残すことがファンの皆さんやサポートして下さる方々への感謝の気持ちを伝えられる場だと思うので、それは一番思っているところですかね。
ー 廣瀬選手が人生を通して実現したいことは?
競技を始めて20年を超えていますが、なかなかボッチャの会場を「満員」にするということは叶っていません。競技の知名度は50%を超えてきているのですが、残り50%をどう上げるか?というのは口では言ってもなかなか行動的に難しいところはあります。でも、やっぱり皆さんにたくさん応援に来ていただいている前で、満員の中でプレーするというのが私も力となりますし、より多くの声援は私たちの力になります。今だとSNSやYouTubeなどで試合を配信しているのですが、その中での応援というのももちろん嬉しいのですが、やっぱり現場に来ていただいた方が映像よりもよりボッチャの迫力だったりとか、生の試合風景だったりというのが凄く伝わるので、是非会場に来ていただきたいなという意味で「満員」という言葉を使わせていただきました。
ー ずばりパリでの目標は?
そうですね。やはり個人に関してはパラリンピックではメダルが一回も獲れていないので、個人に関してはメダルを獲得することを目標に精一杯やりたいなと思います。チームの方も東京大会まで連続でメダルを獲得しているので、パラリンピックでメダルを獲るってなかなか大変なことでもありますし、金を獲るってなかなか難しいことなんですけど、自分たちの精一杯の力を発揮して、あとは自ずと結果がついてくると思っています。自分たちの持っている力を全て発揮して、それがメダルにつながればいいなと思います。
ー ボッチャを応援してくれる皆さんへメッセージをお願いします。
私たちはパリに向けていろんなことに精一杯頑張っています。やっぱり皆さんの声援というのが私たちの力ひとつひとつになります。パリなのでちょっと来られる方がいるかどうかは分かりませんが、生放送でもいいですし、現地に来ていただいても構いませんし、SNSを通してでもいいですので、是非私たちに声援をよろしくお願いします。
盟友・杉村英孝選手(左)と廣瀬選手(右) 【©︎日本ボッチャ協会】
プロフィール
生年月日:1984年8月31日
出身地:千葉県
クラス:BC2
所属:西尾レントオール株式会社
出身校:千葉県立袖ヶ浦特別支援学校
過去の戦績
【国際大会】
北京2008パラリンピック - 10位(BC1/2チーム)/17位(個人・BC2男子)
ロンドン2012パラリンピック - 7位(BC1/2チーム)
リオ2016パラリンピック - 銀メダル(BC1/2チーム)/7位(個人・BC2男子)
Rio de Janeiro 2022 World Boccia Championships - 2位(個人・BC2男子)/3位(BC1/2チーム)
Liverpool 2018 World Boccia Championships - 2位(BC1/2チーム)
東京2020パラリンピック - 銅メダル(BC1/2チーム)/12位(個人・BC2男子)
【国内大会】
第21回日本ボッチャ選手権(2019) - 優勝(個人・BC2男子)
第23回日本ボッチャ選手権(2022) - 優勝(個人・BC2男子)
第24回日本ボッチャ選手権(2023) - 優勝(個人・BC2男子)
第25回日本ボッチャ選手権(2024) - 優勝(個人・BC2男子)
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