夏春連覇に向け京都国際が始動 宮村野球部長が語る「教員の喜び」
指導者の分業制を敷く京都国際で「投手コーチ」を務める宮村貴大野球部長(41)は、懐かしい母校のグラウンドで試合前にノックバットを握った。保健体育科の教員と野球の指導者をめざして大阪体育大学に入学し、高校と大学が共用するこのグラウンドで汗を流した。「学生のころは自分が何かを達成できたことに喜びを感じました。教員、指導者になった今は人が育ち、成長することに喜びを感じます」。卒業から頂点に至るまでの18年間を宮村部長に聞いた。
大体大時代に汗を流した母校のグラウンドでノックバットを握る 【大阪体育大学】
当時の大体大は、阪神大学リーグで連覇を重ねていた。宮村部長は1年秋、2年春に優勝して7連覇を経験。いずれも全国大会で神宮球場のマウンドに立った。「神宮のマウンドはふわふわしてあまり記憶にないが、大学時代一番の思い出だった」という。当時監督だった中野和彦GMの宮村投手評は「冷静に淡々と投げるサウスポー」だ。
2006年4月、保健体育科の教員として京都国際に赴任。関西大学に進んだ小牧監督が学生としてボランティアで京都国際のコーチを務めているのを知っていて、京都国際が体育教員を募集すると応募した。
宮村貴大野球部長 【大阪体育大学】
★インスピレーションで好左腕育成 赴任から15年後の2021年春、第93回選抜大会に左腕の森下瑠大投手(現DeNA)を擁し、初出場して1勝。森下投手は2022年ドラフトで4位指名された。
2023年のドラフトでも3人が指名され、これまでに約10人がプロ入りしている。3年前に甲子園に初出場した学校として極めて多いのはなぜか。宮村部長は「うちのグラウンドは狭い(左翼方向約70m、右翼方向約60m)が、個人練習はマックスで10時半まで練習できます。個々を伸ばす環境がプロ入りにつながっています」とその理由を明かす。
さらに、森下投手をはじめ、昨年のドラフトで広島育成3位の杉原望来投手、ソフトバンク育成8位の長水啓眞投手も含めて、好左腕が育つ。この夏の2本柱、中崎琉生投手(3年)、西村一毅投手(2年)も左だ。「元左腕投手として、左を育てるノウハウがあるのか」と問われ、宮村部長は「よく聞かれるんですよね」と苦笑した。「右も左も教え方は正直変わらないが、同じ左として感覚的なところ、インスピレーション的なところが伝わりやすいのかなと思います」と話し、続けた。「体の柔軟性や股関節周り、肩甲骨周りの可動域に重きを置いて指導しています」
8月27日、大阪体育大学浪商高校と新チーム初の練習試合を行った 【大阪体育大学】
関東第一との決勝は、決勝としては大会史上初のタイブレークに持ち込まれた。勝敗の分岐点は、十回表無死一、二塁、代打の西村投手がバントの構えから左前打としたバスターだ。「あれは西村の判断。『野手が前に出てきたら打っていいよ』がうちの決め事だが、それでもあの場面で決めたのがすごい」と振り返る。
★大体大ネットワークの力 頂点に立ち、大体大のネットワークの力を改めて感じるという。「関西で野球の指導者を続ける先輩、同級生が多く、すごく役に立っています。うちが弱い時でも練習試合をさせてもらい、今も大体大のつながりで練習試合をしています。このつながりがなかったら今の京都国際はない」。ほぼ同じ言葉を、弱小だった三重県立白山高校を5年で甲子園に導き、TVドラマ「下剋上球児」のモデルになった東拓司・現昴学園監督からも聞いた。
準決勝が終わった後、6期上の松平一彦・大体大監督から電話を受けたという。松平監督は2019年、履正社高校の野球部長として夏の第101回大会で初優勝を経験、その後、大体大に移った。野球部長は決勝進出が決まると、主催者や学校、応援団との連絡や打ち合わせに追われる。松平監督から主催者との打ち合わせや決勝前にだけ行われる球場練習のことなどを教えてもらい、「いろいろ大変だけれど頑張って」と激励された。
来春のセンバツ出場につながる秋季京都大会の初戦が9月7日に行われる。夏春連覇に向けた道程が始まる。「どこと試合させてもらっても追われる立場になると思います。目の前の1試合1試合を勝ち抜いた結果、最終的に連覇ができたらいいが、今は連覇は頭にない。積み重ねの気持ちです」
「連覇は頭にない。積み重ねの気持ちです」 【大阪体育大学】
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