川崎からベトナムに“輸出”される「ホームタウン活動」

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

7月8日、等々力陸上競技場で「日越外交関係樹立50周年 川崎フロンターレベトナム事業 川崎フロンターレ×JICAベトナム連携事業説明会」が行われた。

川崎フロンターレとベトナムの結びつきは強い。

最初のきっかけは日越外交関係樹立40周年となった2013年で、トップチームの国際親善試合を行った。その後、アンダー世代の国際サッカー大会や現地でのサッカースクール開校などの事業をベトナムで展開。現在では1週間で延べ200名以上の生徒がサッカースクールで汗を流している。

2021年からはJICAと連携し、Jリーグとともにスポーツを通じた開発途上国の課題解決を目指した事業を実施している。昨年11月にはトップチームがベトナムを訪れ、親善試合や児童養護施設の訪問なども行った。

昨年11月、ベトナムスクールの子どもたちとサッカーをする遠野大弥選手 【©KAWASAKI FRONTALE】

ベトナムの社会課題を解決する取り組みの一つが、健康増進事業だ。

JICAの橘秀治青年海外協力隊事務局長によれば、「特にビンズオン省では、急速な経済発展により子どもの肥満や成人の運動不足というような健康に関する問題が顕在化してきている」とのことで、ベトナム南部のビンズオン省等で性別や年齢を問わず一般市民を対象に、パイロット版の健康増進プログラムを3回実施。

運動不足解消、介護予防を目的とした健康増進プログラムを提供し、延べ420人が参加した。参加者からは「運動の頻度を高めていきたい」、「正しい運動の仕方を学びたい」との声が寄せられ、参加者の半数以上から「有料でもこのプログラムを受けたい」との声があるなど好評を博したようだ。

6月のイベントではフロンタウンさぎぬまでも実施しているポールウォーキング教室をベトナムで実施 【©JICA】

また教育面では「川崎フロンターレ算数ドリル」のベトナム語版を作成。ビンズオン省や日本在住のベトナム人の子どもたちにも提供することを検討しているという。

海外での事業化にノウハウのあるJICAと連携しているのも特徴だろう。

JICA橘事務局長は「我々が感じたことは、スポーツの力。いろんなところで今、スポーツというのは、民族を超えたり、あるいは国籍を超えたりして、人々を一緒にしていく力がある」と話す。

そして、今回の連携の背景として、「JICAの中で新規事業アイデアのコンテストを数年前から始め、このアイデア募集の中で、JICAの若手職員が、Jリーグさんとの共同事業『SDGs及び社会課題に挑むスクール事業の海外展開―ボールでつなぐ、人、まち、信頼―』というアイデアを提案してくれました。これが2020年に採択され、21年度から調査を始めて今に至っています」と説明。

6月のイベントでは算数ドリル実践授業も実施した 【©JICA】

Jリーグはスクール事業を展開する傍ら、教育、健康、防災等、地域の社会課題の解決に向けたホームタウン活動を広く実施。地域に根差したホームタウン活動をしている川崎フロンターレの取り組みをベトナムでも実施していくことになり、そこにはJリーグ事業本部海外事業部の大矢丈之部長も期待を寄せる。

「ベトナムと川崎フロンターレさんだけに留まらず、他のクラブ、他の国といった事業展開も考えていきたい。フロンターレが川崎の街で欠かせない存在になっている中で、ベトナムあるいはアジアの中で欠かせない存在になっていけるように、活動展開を発展させていけたらと思っております」

富士通陸上部による走り方教室も行われた 【©JICA】

現在、クラブはベトナム国内に2人のサッカースクールのコーチが常駐。現地のスタッフとともに活動しており、今後の事業展開にも注目が集まるが、川崎フロンターレの山田直弘事業本部管理部長はベトナムの地域に根付くことを念頭に進めていくと語っている。

「フロンターレと同じような形で、その地域のインフラになるというところ。なくてはならない存在になるんだということで、ベトナムのサッカースクールをその意図で開校しましたし、そこを目指してやっていくという形になっています。根付いてやっていくんだというのが我々の今の方針です。ベトナムの方でも、日本と同じような形で活動をしていくという形で今は考えております」

2013年から始まった川崎フロンターレとベトナムの関係。日越外交関係樹立50周年を迎えた今年、新たな取り組みと今後の発展に注目していきたい。

(文・いしかわごう)

7月8日に開催された事業説明会 【©KAWASAKI FRONTALE】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント