【バレー/Vリーグ】Vリーグを夢のあるリーグにするには。「一度来てもらえれば、心をつかむ自信はある。」

一般社団法人SVリーグ
チーム・協会

V.LEAGUE REBORN対談 第2回 -パナソニックパンサーズ編-

V.LEAGUE REBORNについて選手はどのように受け止め、感じ、考えているのか。どのような意見や疑問を持っているのか。選手と大河バイスチェアマンが本音でディスカッションする対談企画。
第2回は2023-24シーズンV・レギュラーラウンドの覇者、パナソニックパンサーズの練習拠点(大阪府枚方市)にお邪魔し、清水邦広選手・深津英臣選手にお話を伺いました。

【©JVL】

大河 これまで何度も「変わろう」としながら、Vリーグは変わりきれていませんでした。Vリーグ発展のために、今回が最後のチャンスだと思っています。そのためには我々だけでなく、選手の皆さんも一緒にチャレンジしていこう、と進めていくことがとても大切です。

お2人は率直にSVリーグについてどのように感じていますか? ご意見を聞かせて下さい。

【©JVL】

清水 SVリーグがどうなっていくのか、ということはチームからいろいろ話を聞いています。アリーナや集客数など、正直に言えば「本当にできるのかな」という不安もあります。それぞれのチームが取り組んでいく中で、お金があるチームはできるけれど、お金がないチームはできないこともあるのではないか、集客数や戦力、収益に大きな差が開いてしまって、見ている方が楽しめないのではないか、という不安はあります。


深津 僕も清水さんと同じです。まず、チーム数を増やすメリットは何なんだろう、と思っています。なぜかというとやはり、上位と下位の力の差が開きすぎてしまったら面白い試合が届けられるのか、と。外国籍選手も来シーズンからは増えるので、バレーボールのレベル自体は上がると思いますが、その分補強にお金をかけられるチームとそうでないチームの差が開いてしまうのではないか、というのが率直な感想です。

【©JVL】

大河 なるほど、おっしゃることはよくわかります。僕もご縁があってVリーグに来たのですが、それ以前はBリーグ、Jリーグに携わってきました。

僕がJリーグにいた頃は、何もしなくてもお客さんが来るJリーグバブルだったのですが、当然ながらバブルは弾けます。毎試合2万人近くは来ていた試合が1万人を割る寸前までになってしまった。その時、どうすればお客さんが集まるか、というのを各クラブが真剣に考え出した。

お2人が所属するパナソニックパンサーズと同じグループのガンバ大阪もその1つです。今でこそビッグクラブですが、Jリーグができた当初、ガンバはお世辞にも強豪とは言えず、集客力があるクラブではなかった。それが地域を中心に地道な活動をしてクラブの認知度を上げ、集客を高めて収益につなげたことで強化にもつなげられるようになり、2008年にはアジアのクラブチャンピオンへと変貌を遂げました。

バレーボールはまだまだ実業団のカラーが強いので、格差が開くのではないか、と考えるのも当然かもしれませんが、バスケットボールを例にしても大企業がスポンサーとしてついているクラブだけでなく、地元に愛されるクラブとしてトップチームへと上り詰めた宇都宮ブレックスや琉球ゴールデンキングスの例もある。

やはり最も大事なのは集客です。パナソニックパンサーズや東京グレートベアーズ、ウルフドッグス名古屋など、今シーズン集客の面でも非常に頑張っているチームもあります。今は集客力や戦力、確かに格差があり、来シーズンもその差は残るかもしれませんが、切磋琢磨して5年後、10年後に勢力図が変わっていくリーグになることが、リボーンの成功だと思っていますし、皆さんの不安を克服できる仕組みにしなければならないといけないですね。

【©JVL】

大河 ちなみにお2人はプロ契約ですか?

清水 僕はプロ契約です。

深津 僕はプロ契約ではありません。

大河 なるほど。深津さんは引退後、社業に就くことを考えていますか?

深津 できるなら指導者に、という思いは持っています。

大河 バレーボールは全員がプロになる必要はなく、セカンドキャリアを考えた時に社員であり続けたい、というのも選択肢として尊重するべきです。同様に、チームもすべて最初からプロクラブになる必要はありません。

Bリーグも実はさまざまな形態があって、発足当初は大企業がスポンサーとしてついているクラブが多かったのですが、強くても人気がない。大企業がスポンサーとしてついていないクラブは弱いけれど満員の中で戦う。そんな中でリーグが始まり、重ねていくうちに選手の意識も変わって行ったんです。どれだけ勝ってもお客さんが集まらないところでやるよりも、満員のお客さんが見ている中でプレーしたい。だったらこっちのクラブに移籍したい、と考えるようになる。その結果、徐々に勢力図も変わっていきました。

象徴的なのが沖縄の琉球ゴールデンキングスです。沖縄アリーナができて、沖縄でチャレンジしていく、と大きなビジョンを掲げて取り組んできた。ただ強くなるだけでなく、来てくれた方々を楽しませる仕掛けをするようになり、今や圧倒的な集客力を誇っています。そこから今は全国にアリーナもでき始めて、リーグ全体も変わって来た。

バレーボールにも同じように変わるチャンスはあると思いますし、何より世界一のリーグになれるのはバレーボールのほうが可能性は高いと思っています。

深津 そうですね。僕や清水さんは年齢も重ねてきたので、正直なところ今のことしか考えられないというのも本音ではありますが、今の小学生、中学生が将来バレーボール選手として生きていきたい、と思う時に大きく変わっていたらいいな、というのは思います。特に今は男子バレーの日本代表も強くて魅力的なので、本当に大きなチャンスだと思っています。

大河 おっしゃる通りです。Bリーグもね、2016年当時に「2020年までに日本人の1億円プレーヤーを出す」と言っても、最初はアホか、と思われていたんです。ところが千葉ジェッツの富樫勇樹選手が2019年に日本人初の1億円プレーヤーになった。そこから今では1億円プレーヤーが5~6人はいると思います。

バレーボールも当然夢ではないし、それこそ清水さんが「俺もあと5年、10年若かったら」と悔しくなるような、活気のあるリーグにならなければいけない。東京グレートベアーズやヴォレアス北海道など、バレーボールの価値を上げようと取り組み、集客に成功しているチームも増えてきました。沖縄アリーナは1万人が入るアリーナで、ホームゲームは30試合。今では10億近いチケット売り上げを達成しています。


【©JVL】

清水 すごいですね。お話をうかがっていて、現実味が出てきました。でも、バレーボールのファン層を見ると女子バレーの会場は男性がメインで、男子バレーの会場は女性がメイン。サッカーやバスケットボールと比べると、特殊なファン層だという印象があります。野球も含め、日本で人気のあるスポーツは老若男女問わずに人気がある。そこをどう変えて、取り込んでいくのか、というのも1つ大きな課題だと思っています。リーグとしてはどんな風に考えているのでしょうか?

大河 僕も会場へ足を運ぶたび、同じ印象を持ちます。今はどちらかといえば、このクラブが好き、というよりもこの選手が好きだから応援している、という印象が強いですね。なぜこのような図式になっているのでしょうか?

清水 逆に僕が聞きたいです(笑)。サッカーやバスケットボール、ガンバ大阪や大阪エヴェッサだけでなく琉球ゴールデンキングスの試合を見に行ったこともあるのですが、やはり観客を見るとバレーは特殊だな、と感じました。

大河 競技者人口は多いのに不思議ですね。女性も含め、“する”スポーツではバレーボールが圧倒的に多い。バスケットボールも多いですが、競技経験者が会場へ来ているのに対して、なかなかバレーボールの場合は直結していないのかもしれませんね。

清水 女性、男性を問わず、広い世代の方々に応援していただけると嬉しいですし、サッカーやバスケットボールの熱気を見ていると、あの盛り上がり方がすごくいいな、と思うので特に男性の方にはもっと来てほしいな、と思いますね。

【©JVL】

大河 2030年までの目標として、各アリーナにVIP席を設けて下さい、とお願いしています。野球やサッカー、バスケットボールのアリーナにはVIPルームがあり、そうなると会社の接待にも使える。そうなると年齢層が広がったり男性も増えるかもしれない。何より成功のためには地域からの応援が不可欠ですが、地域貢献や社会貢献はしていますか?

深津 数年前から力を入れています。実際そこから見に来てくれる方も増えていると思いますし、1回来てくれるとまた来てくれるリピート率も高い。まずは1回目にどう足を運んでもらうか、というのが重要ですよね。一度来ていただければ心をつかむ自信はあります。

大河 ライトな観戦者がいきなり1人で行くのはなかなかハードルが高いですから、例えば3人1組のチケットをつくって、誘い、誘われる文化をつくるのも大切ですね。バスケットボールのアースフレンズというクラブが蒲田にあるのですが、町工場が多いところで、その地域の方々が応援に来て、盛り上がってくれる。それも独特の応援風景であり個性でもあり、面白いですよ。

【©JVL】

深津 少し話が飛びますが、やはり将来的にSVリーグは完全プロ化を目指すのでしょうか?

大河 プロ、アマとは一切言っていません。さまざまな形がある中で、リーグからお願いするのは、お金を払って来て下さったお客さんが楽しかったと思える努力をしてください、ということ。バレーボールの試合が面白かった、ということだけでなく、バレーボールも楽しかったけれどおいしいものが食べられたとか、1つ1つのきめ細かいサービスを含め、ハーフタイムや試合前にみんなが楽しめる演出、お金を払った価値がある、と思われる試合にしていくことが大切です。それができればプロでも会社員でも構わない。

僕はスポーツのトップリーグの価値は集客だと思っています。どれだけ素晴らしい試合でもガラガラか満員か、それだけで大きく違う。満員のホームゲームがどれだけできるか。それが当たり前と考え、実践するチームがどれだけ増えるかがSVリーグの成功の鍵であり秘訣です。

深津 大阪に3チームあるので、そこで独自の個性をどれだけ出していけるか、というのも大きいですよね。沖縄のようにバスケットボールがメインになり得る環境がうらやましく思うこともあります。

大河 一方では人口の多い大阪や東京がうらやましい、というのもありますね。ですがバレーボールはまだまだ可能性を秘めている。挑戦の1つとして、サッカーのゴール裏のような応援席をつくったり、男性が声を出して応援しやすいような席をつくるのも楽しいかもしれません。ベンチに近い席で選手を身近で見たいという人もいれば、声を出して応援したい人もいる。さまざまなニーズが叶えられるといいですよね。

【©JVL】

大河 僕は石川祐希選手が「世界で一番すごいのがSVリーグだから、SVリーグで勝負したい」と言った時が成功した時だと思っています。外国籍枠も増える中、競争も激化して、そこで勝ち残った人が試合に出る。そのためには選手個々の強化も重要ですが、クラブとして育成に力を入れることも大切です。

当然小学生や中学生年代を指導できるいい指導者も必要です。2024年からはVリーグもU15、27年からはU18のチームを持って、トップチームと一緒に練習する環境を与えてあげるようになれればいいと思っています。そうなれば指導者の数も必要になるので、選手のセカンドキャリアにもつながります。バレー人口を増やすためには、学校単位だけで考えるのではなく、学校単位を超えていかに増やしていくか、という活動も不可欠です。

清水 それは間違いありません。今はどんどんバレーボール部も、選手の数も減っていると聞きます。

大河 JリーグやBリーグではアカデミーダイレクターという指導者とは別に育成計画を考える人がいます。コーチといっても技術的なコーチだけでなく、アナリストやストレングス、トレーナーもいる。欧州サッカーにはクラブが育成部門をどれだけ強化しているかで評価する会社があり、その成果によってリーグから配分金をもらえる仕組みもあります。Vリーグはまだまだそのレベルに到達できていませんが、どれだけお客さんが入って賑わっているか。メディアで取り上げられているか、というのがスポンサー側からすれば大きなポイントですから、そういう面での評価があってもいいかもしれませんね。

深津 パンサーズは大阪エヴェッサとも協定を結んでいるので、Bリーグの集客もあわせて協力していきたいですね。いろいろな知恵も、方法も学びたいです。

大河 本質的な集客力はバレーのほうがあると思いますよ。でも実際はバスケットのほうが入っている。お客さんを入れることに対しては、バスケットのほうが必死で取り組んでいるというのは事実ですね。目標4000人と言われたら必死でチケットを売りまくるし、そのための努力をする。バレーボールもそういう目標を立てて、取り組んでいけるといいですね。

何度も言いますが、日本のバレーボールの可能性は十分あります。そのための改善点はいくつもありますし、いろんな競技、リーグから学ぶこともあります。今までのやり方がいいのか悪いのか、原点に返って取り組んでいきたいと思っていますし、清水さん、深津さんが現役でバリバリに活躍している間にリーグも変化していきたいと思っています。一緒に挑戦しましょう。

清水 ありがとうございます。頑張りましょう。

深津 夢のあるリーグにしたいですね。今日はありがとうございました。

【©JVL】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント