メジャーリーグ全30球団の、チーム名の由来をまとめてみた。

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたえいきちさんによる記事です。】
現在開催中の野球世界一を決める大会、WBC。
日本代表に選ばれた選手の中には、米メジャーリーグで活躍するスター選手が何名かいます。

パドレス所属のダルビッシュ有。エンゼルス所属の大谷翔平。
そして、日系人選手として初の侍ジャパン選出となったラーズ・ヌートバーはカージナルスの所属です。

また、今回アメリカ代表が史上最強と言われていたので、どんな選手がいるのだろうと色々調べていく中で興味を惹かれたのが、メジャーリーグの球団名です。

メジャーの球団名って、日本のプロ野球と比べて、名前に歴史的経緯やその土地の特色がすごく表れています。
また日本よりはるかに国土が広く、人種や価値観が地域によってまるで違うので、チーム名の特徴がさまざまで非常に面白いです。

先日、Jリーグのチーム名の由来をまとめたように、名前の由来を知ることが大好きな僕なので、今回はメジャーリーグ全30球団のチーム名の由来をまとめてみようと思います。

「30球団」と聞いたら少なく感じてしまう変な体質になってしまいましたが、簡潔にメモ程度にまとめるので気軽に読んでください。








~アメリカンリーグ~

●ボルチモア・オリオールズ

【東地区】

1894年創設。2度の移転を経て、1954年に現在のメリーランド州ボルチモアが本拠地になります。
「オリオール」は、メリーランド州の州鳥「ボルチモアムクドリモドキ(Baltimore Oriole)」が由来です。
そのまんま鳥の名前言うてるだけのチーム名ですね。
略称としてO’sやBirdsと呼ばれるそうです。


●ボストン・レッドソックス

1901年創設。創設以来、一度も本拠地を移したことのない球団で、ホームスタジアム「フェンウェイ・パーク」はメジャー最古の球場です。
現在のボストン・レッドソックスは、かつて「ボストン・アメリカンズ」という名前でしたが、当時ライバル球団だったシカゴ・ホワイトソックスとの関係性から、「真反対の赤靴下を着用すれば対決ムードが盛り上がる」との理由で1908年に正式名称を変えます。紅白歌合戦的な概念はアメリカにもあるんですね。
ちなみに、「Red Stockings」では新聞に載る時に長いからという理由で「Red Sox」に短縮されたという経緯も。


●ニューヨーク・ヤンキース

1901年創設。「ヤンキー(Yankee)」は、ニューヨークを開拓したオランダ人が、現地人に対して「あいつら」という意味の蔑称として使っていた「Jan kees」から来ています。
それを気に入った北東部のアメリカ人が、好んで使うようになったそう。
有名な「NY」のロゴはもともとニューヨーク市警のもので、デザインしたのはティファニー社。
ちなみに、ヤンキースが出来る前の19世紀、ニューヨークに存在していたチーム「ニッカーボッカーズ」は、植民地時代の初期にオランダ系移民が履いていたズボンの名前から来ています。作業服「ニッカポッカ」の語源です(現在NBAに所属している「ニューヨーク・ニックス」の正式名称は「ニューヨーク・ニッカーボッカーズ」)。


●タンパベイ・レイズ

ダイヤモンドバックスと並んでメジャーで最も新しい1998年創設。
以前は「タンパベイ・デビルレイズ」でした。
「デビルレイズ(Devil Rays)」は、フロリダ湾に多く生息するイトマキエイに由来します。
2008年にチーム名改称。「Devil」を取って「Ray」のみになり、エイとともに光線を意味するものに変わりました。デビルって怖いですもんね。


●トロント・ブルージェイズ

1977年に創設された、カナダ・トロントが本拠地のチーム。
メジャーリーグで唯一、アメリカ以外にある球団です。
チーム名の「ブルージェイ(Blue Jay)」は、北米で見られる美しい鳥、アオケカスから取られています。聞いたことも見たこともない鳥。

【中地区】

●シカゴ・ホワイトソックス

1901年創設。
チームが白い靴下だったことから球団名に。創設期は「シカゴ・ホワイトストッキングス」と名乗っていました。紅白歌合戦。
同じシカゴを本拠地とするカブスとは人気を二分しています(北部がカブス、南部がホワイトソックス)。


●クリーブランド・ガーディアンズ

1901年創設。
1915~2021年までのチーム名は「クリーブランド・インディアンス」。映画『メジャーリーグ』のモデルとなったチームです。
「インディアン」はもともと「先住民」の意味合いの言葉。前身球団に所属していた、ネイティブアメリカン初の選手への敬意からチーム名として長年愛されてきましたが、昨今の差別をなくそうという風潮により、2022年から現在の名前に。
過去の文化を塗り替えることは寂しい気持ちもしますが。。この問題は非常に難しいですね。
市内の橋に建ててある銅像、「交通の守護神Guardians of Traffic)」に由来するそうです。


●デトロイト・タイガース

1894年の創設以来、本拠地とチーム名を一度も変えていない唯一の球団です。
チーム名「Tigers」は、球団設立当初の監督が履いていたストッキングがストライプ柄で、それがの模様に見えたことから。ちなみにアメリカに虎は生息していないそうです。
プロ野球の阪神タイガースの由来は、同じ工業地帯というつながりで、このデトロイト・タイガースから来ています。


●カンザスシティ・ロイヤルズ

1969年創設。
「Royal」とは「国王の、王立の」といった意味ですが、ロイヤルズのroyalは、地元カンザスシティで1899年から行われている、家畜祭という品評展示会、「American Royal」が由来だそうです(もともとイギリスの王立農業学会主催の品評展示会を参考にしたもの)。
日本に無い文化だからあまりピンときません。


●ミネソタ・ツインズ

1901年創設で、1961年に本拠地をワシントンD.C.から現在のミネアポリスに移転します。
「ツインズ」というチーム名は、ミネソタ州にあるミネアポリスと、隣町セントポールを2つ合わせて双子都市「ツイン・シティーズ(Twin Cities)」と呼んでいたことが由来。
当初「ツインシティーズ・ツインズ」になる予定が、MLB側から許可が下りずに現在の名前に。欲張りが認められなかったんですね。ちなみに帽子のロゴ「TC」は、Twin Citiesの名残です。


【西地区】

●ヒューストン・アストロズ

1962年創設。
地元ヒューストンにNASA国際宇宙センターがあることから、宇宙飛行士「アストロノーツ(astronaut)」を縮めて「アストロズ」に。
いいですね。かっこいいし理由もちゃんとしてる。
ちなみに創設初期の名前は「コルト45's」で、これはヒューストンの拳銃製造会社の代表作「コルト45」に由来していました。
さすが銃社会アメリカって感じ。


●ロサンゼルス・エンゼルス

1961年創設。
一時期はディズニーが経営に携わっていたこともあるアナハイムが本拠地の球団です。
チーム名は、都市名の「ロサンゼルス Los Angels」(=スペイン語)の由来である「天使たち」(英語で「the angels」)から採用されたもの。
つまり、「天使たち・天使たち」みたいなことです。めっちゃ天使って言うてます。
二刀流・大谷翔平と、WBCアメリカ代表にも選ばれている、現役のメジャー最高選手マイク・トラウトの所属球団です。


●オークランド・アスレチックス

1901年の創設後、2度の移転を経験した球団。
最初の本拠地であるフィラデルフィアは、野球の原型「タウンボール」が盛んな土地。そこで19世紀に生まれたチーム、「アスレチック・ベースボール・クラブ」が現在につながる名前になりました(「Athletic」は、運動競技、体育の意味)。
ちなみにチームのマスコットである「白い象」は、昔ライバルチームの監督に揶揄された経緯から生まれたもので(英語で「white elephant」は「無用の長物」)、そこから転じてチームの象徴になったそう。
こういう文化って日本にはないですよね。


●シアトル・マリナーズ

1977年創設の球団。
一般公募で決まった「マリナーズ(Mariners)」は、水兵船乗りの意味。太平洋岸北西部最大の港町であることが由来だそうです。
イチローをはじめ、日本人選手の所属が歴代11人と、その数がメジャーでは最多の球団です。


●テキサス・レンジャーズ

1961年、ワシントンD.C.に創設後、1972年からテキサスに移転した球団。
チーム名は、北米最古の保安組織「テキサス・レンジャー」から来ています。いわゆる西部劇とかに出てくる、カウボーイ的な人たちです。
いい。これぞアメリカのチーム名。








~ナショナルリーグ~

【東地区】

●アトランタ・ブレーブス

1871年創設。シカゴ・カブスと並んで、現存しているメジャー最古の球団。日本では明治維新直後。すごい古いですね。
「ブレーブス」は、先住民インディアンの勇者「ブラボス」が語源。チームロゴにもインディアンの斧があしらわれています。
インディアンスのパターンと同じく、ブレーブスにも球団名変更の風潮が強まってきているようで、かつて所属していた大選手、ハンク・アーロンのニックネームにちなんで「ハンマーズ」の案も出ているようです。
世知辛いですが、何にせよファンが納得する形であれば一番いいですね。


●マイアミ・マーリンズ

1993年創設の球団。2011年までは「フロリダ・マーリンズ」でした。
「Marlin」とはフロリダの海に棲んでいるマカジキのこと。
本拠地周辺が舞台の、ヘミングウェイの小説『老人と海』で、老人が戦った魚の強さをなぞらえて命名されたそう。
「海」じゃないんですね。「(マリーン)Marine」「(マーリン)Marlin」で全然変わります。ちょっとややこしい。


●ニューヨーク・メッツ

1962年創設。
都会っ子を意味する「メトロポリタンズ(Metropolitans)」を略して「メッツ」です。
チームカラーのオレンジはジャイアンツ、青はドジャースから取ったもの。両チームとも、かつてメッツが創設される前のニューヨークに、本拠地を構えていた球団だからです。
ちなみに、NBAの「ブルックリン・ネッツ」は、同じニューヨークが本拠地のMLB「メッツ」、NFL「ジェッツ」と韻を踏んでいるらしいです。
さすがヒップホップの国、アメリカ。


●フィラデルフィア・フィリーズ

1883年創設の古参球団。
「フィリー」とは、フィラデルフィア市民の通称です。
つまり「フィラデルフィアの、フィラデルフィア市民のチーム」みたいなことです。街の人たちの愛が伝わる名前ですね。
長年黒人選手の受け入れを拒んできた球団で、黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソン(42番は全球団の永久欠番)がデビューしてから10年後(1957年)にやっと黒人選手の入団を認めたそうです。
ヨーロッパサッカーのクラブにもたまにある、純血主義みたいなものですかね。


●ワシントン・ナショナルズ

1969年創設で、2005年に移転するまでは、カナダのモントリオールに存在していました。ブルージェイズと同じくアメリカ以外の球団でした。
「ナショナルズ」の名称は、かつて存在した「ナショナル・ベース・ボール・クラブ」で、19世紀にワシントンD.C.のチームが度々つけては無くなってきたゆかりの深い名前。1世紀越しにやっと叶ったんですね。
ちなみに前チーム名の「モントリオール・エクスポズ」は、1967年に現地で開催された、万博(Expo)が由来だそう。こんな雑学めっちゃ好き。


【中地区】

●シカゴ・カブス

ブレーブスと並んで、1871年創設。
創設以来本拠地を一度も変えていない球団の中では、メジャー最長の歴史を持つ球団です。
「カブス(Cubs)」は、表向きは小熊の意味だそうですが、実はもう一つ逸話があります。
昔、ナショナル・リーグより後に出来た、アメリカン・リーグに選手を大量に引き抜かれてしまい、無名の新人ばかりでリーグを戦わなければいけなくなったチーム。これに対し現地紙が、「このチームはカブスと呼んだほうがいい」と報じました。
「cub」とは「見習い」「未熟な若者」といった意味のある単語で、そこから正式な名前になったそうな。
あかん、めっちゃおもろい。


●シンシナティ・レッズ

1881年創設。古い。
シンシナティは1869年に世界最古のプロ野球チームが出来た土地。その最初のチームの名前が「シンシナティ・レッドストッキングス」
これは現存するレッズにつながるチームではありませんが、「シンシナティ・レッドストッキングス」という名前自体はシンシナティの人にとって特別なもの。
創設時にこの名前を採用し、のちに「レッズ」に改称。
若干ややこしいですが、「レッズ」も「レッドソックス」も、元をたどれば「レッドストッキングス」なんですね。


●ミルウォーキー・ブルワーズ

1969年創設。
日本では一般的に「ブリュワーズ」と呼ばれることが多いですね。
「ブルワー(brewer)」醸造者という意味。ミルウォーキーがビール醸造で有名なことから由来されているそう。
その土地に縁の深い職業系。これまたいいですね。


●ピッツバーグ・パイレーツ

1882年創設。ナショナルリーグはアメリカンリーグより早く出来たので、やっぱり古い球団が多いですね。
「パイレーツ(Pirates)」はご存じ海賊ですが、このチーム名になった逸話があります。
19世紀のリーグ創設当時、かつての前身球団は、ライバル球団から有力選手を次々に強奪します。それを「盗人」と非難されますが、その当時のオーナーが開きなおって、海賊行為者略奪者という意味の「パイレーツ」をチーム名に決めます。カブスの逆パターンですね。
ええなあ。アメリカ人のウィットに富んでるってこういう感じよなあ。


●セントルイス・カージナルス

1882年創設。ヌートバー所属。
「カージナル(Cardinal)」とは本来カトリックのお偉いさんの称号「枢機卿」のことで、彼らが来ている装束に似た色合いの、ミズーリ州の州鳥「ショウジョウコウカンチョウ」のことでもあります。
オリオールズ以来の鳥パターンですね。


●アリゾナ・ダイヤモンドバックス

【西地区】

レイズと並んで、最も新しい1998年創設。
「ダイヤモンドバックス(Diamondbacks)」というチーム名は、アリゾナ州に生息しているダイヤガラガラヘビに由来しています。
名前が長すぎて、D-bucksという表記がよく使われます。シンプルにSnakesという愛称でも呼ばれているそうです。
ガラガラヘビをチョイスするセンス、素晴らしい。


●コロラド・ロッキーズ

1993年創設。
チーム名はずばりロッキー山脈から。
本拠地クアーズ・フィールドは1600mの高地にあり、ボールが飛びやすい打高投低が特徴のスタジアムで有名です。


●ロサンゼルス・ドジャース

1883年創設で、1957年までニューヨークにあった球団。
ブルックリン地区には路面電車が多かったそうで、そこからブルックリンの住民のことを、「路面電車を避ける人たち」という意味で、「ドジャース(Dodgers)」と呼んだそうです。
dodgeは「避ける」。ドッジボール(dodgeball)の語源でもありますね。
西海岸にあるロサンゼルスのチームの由来が、東海岸のニューヨークだなんて。なんかオシャレ。


●サンディエゴ・パドレス

1969年創設。
「パドレ(padre)」神父という意味で、サンディエゴの開拓者であるスペイン人の神父が由来だそうです。ロサンゼルスやサンディエゴなどスペインとの関わりもちょこちょこ出てきますね。
ダルビッシュの所属チームです。


●サンフランシスコ・ジャイアンツ

1883年創設で、1958年にドジャースと同じタイミングで、ニューヨークからカリフォルニアに移転しました。
チーム名の由来には、19世紀当時のチームの監督が、試合に勝利して興奮し、選手たちに「お前らが大きく見える」と言ったという説と、当時の2人の看板選手が長身だったという説があります。
ちなみにその当時の球団の名前は、「ゴッサムズ」。Gothamとはニューヨークの別名。DCコミックの世界観はここから来てたんですね。










というわけで以上がメジャーリーグ30球団のチーム名の由来でした。
やはり歴史が長いだけあって情報も豊富で、調べていて楽しかったです。

本拠地の移転とか、それにまつわる背景などももっと深く調べたいなと思いました。



アメリカならではのネーミングセンスも面白かったですね。
誰かに言いたくなる雑学もいっぱいありました。






これからも気になる由来があれば調べようと思います!
ではまた!





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