【動画+解説で知る!パラスポーツ】これがゴールボールだ!
【©parasapo】
そんな方、まずはここから。動画を見て、合わせてこの記事を読めば、パラスポーツの面白さがバッチリわかるはず!
今回はゴールボール編。
視覚に障がいのある選手がプレーする動画のシーンを取り上げながら、ゴールボールがどんなスポーツなのか、基本をご紹介。
日本ゴールボール協会の増田さん、松本さんの詳しすぎる解説と共にお送りします!さあ、いきますよ!
《まずは、動画をみてみよう!》
今回解説いただくのはこちらの方々です!
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ゴールボールとの出会いは、1992年。その前年度から日本でゴールボールの普及を始めたゴールボール教室を手伝ったことがきっかけ。
それから、国内で初のゴールボールの交流大会の開催や、より詳しく競技を教わりに韓国に行ったり、ゴールボール初の海外遠征、初めてのルールの翻訳本の作成、日本ゴールボール協会の立ち上げ、男子代表初のパラリンピック予選大会、女子代表の初の海外遠征、初のパラリンピック予選大会、パラリンピックに初出場したアテネ2004大会、そして北京2008大会の同行など……
ほぼゼロから30年以上関わっているので、ゴールボールはもう生活の一部みたいなものですね。
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義足の方がスキーをするのを見て、パラスポーツに興味を持ちました。たくさんの競技の講習会に参加したうち、コートに貼られた紐・ボールの中の鈴の音・仲間の声を頼りに自由に動きまわる!なんてスポーツでしょ!と、知れば知るほど、ゴールボールの魅力にハマりました!
プレイヤーは3人×3人
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ゴールボールは、2チームで互いにボールを投げ合い、点数を競う対戦型のスポーツ。
コートに立つのは1チーム3人。相手ゴールに向かって、真ん中の選手がセンター、左右の選手をウイングと言い、右側の選手がライト、左側の選手がレフトというポジション。
コートの広さは18m×9m、6人制バレーボールのコートと同じ広さで、ゴールの幅はコート幅と同じ幅9m、高さは1.3m(みんながよく見るサッカーのゴールは、幅7.32m、高さは2.44m)。
試合時間は前半・後半それぞれ12分ずつ、合計24分。
ボールがゴールに入ると1点が入り、試合終了時に合計得点が多い方が勝利!
アイシェードをつけてプレー
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このため、選手全員が同じ条件になるようにアイシェードを装着し完全に視覚を遮断してプレー!
昔は、自分たちでスキーのゴーグルを加工してアイシェードとして使っていましたが、今はゴールボール専用のものも売られていますよ。
ボールからは鈴の音が!
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そしてポイントは、ボールの中には鈴が2つ入っていること!選手たちは、この鈴の音を頼りにボールの位置を把握。
増田さん:新しいボールは固いのでスピードがつきやすく弾みにくいですが、使っているうちに柔らかくなって弾みやすくなってきます。
また、中に入っている鈴も使っているうちに割れてしまうので、新しいボールの鈴の音と長く使っているボールの鈴の音も違うんですよ。
そのため、パラリンピックなど大きな大会では、3試合に1回新しいボールに交換したりしています。
ボールを相手ゴールへ投げ得点を狙う!
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投げるときは、ボールを転がすか、バウンドさせて投げるのが基本。攻撃側エリアに一度バウンド、ニュートラルエリアでもう一度バウンドしていないと反則に。
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ボールを投げ出す時の音が聞こえると、相手にボールの位置がわかってしまいます。そのため、テイクバック(ボールを投げようと振りかぶる動作)の時に鈴の音が鳴らないよう工夫をして投げる選手もいます。これは習得するのに時間がかかる難しいテクニックです。
他にもテイクバックの時の鈴の音を消す方法として、回転投げもあります。身体を回転させるときの遠心力で音を消すんです。
逆に、身体を回転させるときに、わざとボールの音を鳴らして聞かせることもあります。ボールの中で鈴がぐるぐる回っている音が長めに聞こえるので、相手にボールがいつ投げ出されるかをわからなくさせることができるんです。
松本さん:音を消す投げ方のほかに、ボールをバウンドさせて相手の身体の上を越すように投げるテクニックもありますよ!
バウンドをさせようとただ叩きつけるように投げるだけでは、途中からボールに勢いがなくなってしまいます。
ボールにものすご~い回転をかけることで、ポンポンと弾むバウンドボールになります!
増田さん:そうそう、回転がポイントですね! ボールに回転をたくさんかけることで、相手選手の身体にあたった時に、その回転でボールが身体を乗り越えてゴール!……ということもあります。
選手はさまざまなボールを投げる技術をもっていて、大きく弾ませるボール(バウンドボール)と弾ませない速いボール(グラウンダー)を投げ分けています。
ほかにも、「く」の字のように、音を守備側にわざと聞かせながら助走していって、助走したのと反対の方向にボールを投げる、というテクニックもあります!
ゴールの場所を番号で把握
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ゴールを背にした選手から見て右側から、端を0として1mごとに、1、2、3……と9まで数字を振って位置を伝え合うんです。全日本クラスは、50cmずつ分けていて、0.5、1.0、1.5と0.5刻みで表現することもあります!
例えば、自分が投げたボールが3番と言われれば、自分から見て左(守る相手の選手から見て右)から3mのところにボールが行ったのだなとわかり、真ん中(4.5)に投げたい場合に、「もう少し自分から見て右(相手の選手から見て左)の方向に投げるのだな」など修正をしやすくなります。
増田さん:この数字の使い方はいろいろとあるんです! 例えば、「この試合では〇番を狙っていこう!」とチームの作戦に使用したりもします。また、「最初の助走位置(立ち位置)を〇番にして〇番に向かって助走をして、〇番に投げ込め!」と、具体的に数字を用いながら頭の中でボールの軌道を想像することで、攻撃のイメージがしやすくなります。
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ゴールボールでは、この数字はとても重要な役割を持っているんです。視覚に障がいのある選手がプレーする他のパラスポーツでも、場所を数字で表現する方法を使っている競技もありますよ。
試合中に選手の会話を聞いてみると、数字を頻繁に口にしています。それを聞きながら「今度はここに投げるかも⁈」と想像するのも、試合の楽しみ方のひとつです!
コート内のラインには糸が!
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使用する紐はなんでもOKです。最近は荷造りなどで使う紐を使用していますが、昔はタコ糸を使ったりしていましたね。
松本さん:選手は、手で触ったり、足で触ったりして、紐を確認しています。自分がどの場所にいるのかを知る手がかりです。
また、両手で紐を触れば正面に向くことができるので、自分がどの方向を向いているのかがわからなくなった時にも、この紐は頼りになります。
試合中の選手をよく見ると、紐を頻繁に触っているのがわかるはず。ぜひチェックしてみてください!
プレー中は「QUIET PLEASE!(お静かに!)」
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松本さん:ベンチにいるコーチも含め、レフェリーが「QUIET PLEASE!」とコールして笛がなったら、声を出さず静かにしてくださいね。選手は相手選手の足音や息遣い、ボールの音など音を頼りにプレーをしています。ボールが行き来しているときに、その音がちゃんと聞こえないと、プレーに支障が出てしまいます。ご協力をお願いします。
歓声や声を出してよい時は、試合が止まっているとき。例えば、試合前やタイムアウト、選手交代、得点が入った時(レフェリーの笛がピッ!ピッ!と2回鳴った時)などは、大きな声や音をだしてよい時間です!
増田徹(ますだ・とおる)さん:試合中は静かにしないといけない分、点が入った時に大いに盛り上げてもらえると、選手もテンションがあがって良いプレーに繋がってきます!!
大会では、声や音を出していい時には音楽を流しています。試合前や試合中も、タイミングを見ながら選手への声かけや手拍子をぜひお願いします!
視覚に頼らず、音を頼りにプレーを組み立てる!
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攻撃側は、時にはボールをもっていない選手が拍手や足音で相手をかく乱し、守備側も音に耳を澄ませて状況を推測し、どこからボールがくるのかに意識を集中。
動画の中では、視覚を遮断した選手たちが、フィールドでどんな駆け引きをしているのかを表現。
《このシーンはゴールを守る選手になったつもりで、動画と解説を楽しんでください!》
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最初に、左から「ジャラン」と鈴の音が聞こえましたね。これは攻撃側のセンターの選手が、ライトの選手にボールをパスした音です。
味方(攻撃側)のライトの選手にパスを確実にとってもらうため、ボールを床にぶつけてわざと大きく音を立てた、ということなんですが、実はこれにはもうひとつ意味があって、守備側にボールが「左からくるのかな?」と思わせているんです。
この音を聞いて、守備側は「左から来るかな?」と思って左側から来るボールに対してシフトなどの準備をします。
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これは、わざと音を聞かせることで、レフトの選手がボールを取りに行くのではないかと守備側の選手に思わせています。
一度左からくると思わせておいて……実際には右からボールを投げる不意打ちを狙っているんです!
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この音は2つの意味があり、移動の足音を隠すだけでなく、実は味方へ「自分(センターの選手)の位置はここだぞ」と教え、ボールを投げようとする選手が自分の位置を把握できるようにする役割もあるのです。
これで、守備側の選手は、足音が聞こえにくくなるため、どちらからくるかの判断に迷ってしまいますが、移動しているのがわかりにくいため、先ほどのシーンで先に音が聞こえた左側の方に気をとられています。
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守備側はボールの音を聞き、自分のどちら側に来るかを瞬時に判断をして、ディフェンスのため手足を伸ばして全身でディフェンス姿勢をします。
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このようにわずかな間に、音を巡る駆け引きが繰り広げられているのです。奥が深いでしょ。
ゴールボールの面白さをもっともっと味わおう!
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増田さん:ゴールボールは、他の競技にはない、音を使って試合の駆け引きをする特有のスポーツです。
選手は、見えていない分、プレー中は選手同士お互いに声を掛け合います。また自チームの選手の息遣い、足音なども聞きながら試合をしています。
視界を完全にふさいでいてアイコンタクトができないため、今自分がどんなことを考えているか、ディフェンスのシフト方法、攻撃の方法など、声を出し合い常に確かめ合いながらゲームを進めています。
それでも見えていない分、情報が少なくなるので、残り時間や相手選手の細かい動き、自分たちの選手の動きの修正などをベンチにいるコーチたちも声をかけています。ゴールボールは、プレーをしている選手とベンチが一体となってチーム一丸で戦っています。
そのために、声を出すこと・話を聞くことがとても大切です。ゴールボールを通して、自分の思っていることを相手に声を出して伝えることの大切さを感じてもらえればと思います。
<ご出演いただいた皆さま、ありがとうございました!(敬称略)>
チーム附属
信澤用秀、川嶋悠太、行弘敬祐、嶋田拓真、窪野一輝、小林祥尭、菊池凌馬
text by parasapo
※本記事はパラサポWEBに2024年1月に掲載されたものです。
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