【ラグビー/NTTリーグワン】同じ幼稚園でラグビーを始めた床田兄弟。 実現した兄弟競演で大勝に貢献<日野RD vs 中国RR>

日野レッドドルフィンズ 床田聖悟選手(左) 床田淳貴選手(右) 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
日野RD 63–29 中国RR


日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)は中国電力レッドレグリオンズをホームに迎えて対戦。ペナルティゴールによる先制点を許したもののその後は攻守において相手を圧倒。最終的には9トライを積み重ねてボーナスポイントも含めた勝ち点5をゲットし6連勝を果たした。

日野RDが44対22とリードして迎えた後半11分、その瞬間はやってきた。徳田悠人に代わって、アーリーエントリーで明治大学から加入した床田淳貴が出場。リーグワンデビューを果たした。

「徳田がちょっと痛んだ箇所があったので、床田淳貴に30分プレーしてもらった」と苑田右二ヘッドコーチは想定よりも10分ほど早い後半11分での交代を決断。それに対して床田淳貴は「早い段階で『(後半)10分くらいから出るかもしれない』と言われましたが、しっかりと準備はできていたので、少し緊張感はあったんですけれども、それほど気負わずリラックスを心掛けて試合には入れました」と、デビュー戦とは思えない落ち着いたプレーぶりを披露。体を張って相手のディフェンスラインにぶつかっていく気迫も見せて、その後、日野RDが3トライを積み重ねることに大きく貢献した。

ファンからの拍手と応援の声を背番号17が一身に受けてリーグワンデビューをするその姿に、兄・床田聖悟はバックスの位置から見ていた。

「弟が途中から入ってくるとは試合前からある程度予想はしていて。(この試合の)メンバーが発表されたときから一緒にプレーできることを本当にずっと心待ちしていたので、そこまでは絶対にグラウンドに立ち続けていたいと思っていました」

同じ幼稚園でラグビーを始めた兄弟だが、年齢が離れていることもあって、ここまで一度も同じチームでプレーしたことはなかったという。2024年、リーグワンの舞台で同じジャージーを着ての兄弟競演がついに実現した。

「兄と同じジャージーを着て同じグラウンドに立つ、というのはこれまで僕も夢にも思っていなかったことでした。試合中は日野RDのプレーヤーとして全力で戦うことが大事なので、そこまで兄の存在を意識はしていませんでした。ただ、終わってみて、兄とともにチームに貢献できたということは本当にうれしかったです」と話す弟に対して、「たぶんこのあと動画を見返していくうちに一緒に出場できた、という実感が湧いてくると思います」と語る兄・聖悟はこの試合フル出場を果たし、「一緒にプレーできたのは良かったですし、両親もスタンドで試合を見てくれていた。兄弟で頑張るところを見せられて本当に良かったなと思っています」と充実した表情で試合を振り返った。

試合後の会見では「30分間プレーする中でまだまだ自分に足りない部分も見えてきた。もっとチームの力になれるよう頑張りたい」と、さらなる成長を誓う弟・淳貴を優しく見守る兄・聖悟の姿があった。普段からとても仲がいいという二人。これからも兄弟で切磋琢磨し、さらなる高みを目指していく

(関谷智紀)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「今日もホームゲームで素晴らしい環境の中、試合をさせていただけたことに感謝申し上げます。ここまで5連勝という形の中、今日は3人の初キャップを得た選手も試合に出て、なおかつ床田兄弟が人生の中で初めて一緒のジャージーを着て試合をしました。そんな重要な試合で、勝ち点5を取れたというのは良かったと思っています。われわれが想定したとおり、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんの激しいプレーが80分間、われわれにプレッシャーを掛け続ける厳しい状況の中、勝ち点を取れたことは非常にうれしく思っています」

――今日の試合で感じたチームの良かった点は?
「前半から多少のミスはありましたがアタックの部分についてはこの試合に向けて準備してきたことをみんなが表現できていた。マイボールを継続すれば自分たちが絶対スコアできる感覚を持ちながらプレーしたことは非常に次の試合につながると思っています」

――相手に4トライを許しました。反省点はどこになるのでしょうか?
「失点に関して言えば、相手はラインアウトからトライを奪うことが非常に多いチームだと分析し、われわれがペナルティをしてタッチからのラインアウトで得点されるというパターンが分かっていたのに修正できなかった部分がありました。そこは中鹿(駿)バイスキャプテンも指摘したとおり、次のクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)戦に向けて反省点を真摯に受け止めながら改善していきたいと思っています」

――プレーヤー・オブ・ザ・マッチにゼファニア・トゥイノナ選手が選ばれるなど、起用した選手が機能していましたが、手ごたえはいかがでしょうか?
「今シーズンわれわれが6連勝できている要因としては、どのメンバーが出ても強度が落ちずにチームのやろうとしていることを体現できていることが一番の強みになっていると思います。新しく起用した選手がチームに勢いを与えるようなプレーをしてくれれば、チーム内のコンペティション(競争)も激しくなるし、そういう意味でチームとしてはいろんな相乗効果が生まれてくる。将来的にはディビジョン1のチームに勝って(D1の)ベスト8に常に入るようなチームに(なりたい)、と思っている。そういうクオリティーをスタンダードに、みんなで成長していけたらと思っています」

――アーリーエントリーから今日初出場した、床田淳貴選手と玉木皓盛選手についての評価はいかがでしょうか?
「今日初めて一緒に試合でプレーするとは思えないぐらい、チームに馴染んでプレーしていました。本当に楽しくというかエキサイティングなラグビーができているなと感じられて、上から見ていても非常に頼もしかったです。ベテラン選手と同じような雰囲気でプレーできていましたね」

日野レッドドルフィンズ
中鹿駿バイスキャプテン

「試合の入りは良かったですが、ペナルティが多い点を今日の試合中に修正し切れずに最後まで続けてしまったのは課題。ただ、勝ち切った中でそういった点を反省できるというのはとても良いことなので、短い準備期間ではあるものの、次のWG昭島戦までにはその課題を全員で克服してから試合に臨みたいと思います。

――モールのディフェンスについて。相手の分析はできている中、それでもゴール前でモールからのトライを複数取られた要因はどういう点にあると考えていますか?
「中国RRさんがゴール前でモールから動かしてきたプレーに対して、もちろん僕たちは対応していたのですが、最初はディフェンスに全員が集中し切れていなかったというかモールが動くところに対してしっかり守りが入り切れていなかったのは反省点です」

――この試合でも2トライを挙げて、中鹿バイスキャプテンはトライランキングのトップを走っています。率直にどう思っていますか?
「トライできたことは大変うれしいんですけれども、自分だけの力ではないので本当に仲間には感謝しています。今日も、サイモン・ヒッキー選手が抜け出してくれて自分がそこに走り込んでのドライブからのトライとか、たまたま最後にボールをもらったという感じなので、みんなで取ったトライだと思っています。自分としてはトライの数はそんなに意識してはいないので、これからもチャンスがあったら狙っていきます、という感じです」

――チーム全体では9トライを挙げましたがその要因は何でしょうか?
「普段からエキサイティングなラグビーを体現するという点はみんなが意識していて、いろいろなところでアタックし、全員が動き続けているところと、苑田(右二)ヘッドコーチがいろいろなアタックの方法を教えてくださるのですが、それをどの選手も実行できているのがその理由だと思います」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「本日はありがとうございました。試合前の分析で、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)さんのアタックは素晴らしいものがあり、良いランナーが何人もいることは分かっていましたので、われわれも頑張ってそのランナーたちの動きに対してできるだけ早くリアクション(反応)して動き続けよう、という点にフォーカスして練習から取り組んできました。選手自身もその点を体現できている部分はあったのですが、それでもやはり良いランナーに走られてしまった。またコリジョン(接触プレー)の部分でもきっちりとやられてしまった、という印象です。とはいえ、できなかった部分ばかりではないですし、またすぐ次の試合がありますので、われわれの成長を見せていきたい、と思います」

――「できなかった部分ばかりではなかった」との言葉がありました。今日の試合で見られたポジティブな部分は何でしょうか?
「セットピースのところからしっかりスコアを奪うことができた、という点は評価しています。相手のアタックをしっかりと止めてフェーズを重ねていくっていうのがディフェンス面でのわれわれの強みだと思っているのですが、相手がしかけてくるプレーに対してしっかり我慢ができている。そこはチームとしてシーズンをとおして取り組んでいる中で、さらに伸ばしていける部分だと思っています。それから、上から見ているとヒットスピードのところも優位性がありました。われわれにはそんなに大きな選手がいない中でも、スクラムの部分でフォワードの良い点もたくさんありました。小さいながらにもできることはたくさんあると思うので、繰り返しそこをしっかり突き詰めていきたいと思っています」

――コリジョンの部分で負けることが多く、踏み込まれてゲインを許した。ディフェンス面をどう修正していきたいですか?
「毎試合、われわれに付きまとってくる課題ですが、やはりダブルタックルでしっかり入ること。また、倒すだけがダブルタックルではなくしっかりタックルしたあとに上半身の部分でしっかり相手を制するというところに取り組んでいかないといけない、と感じています。また、タックルに入る前段で今回も相手にやられている部分が多かったので、そこは徹底してやっていかないといけない。今回、日野RDさんと試合をする中で選手自身もそこは感じていると思います」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎共同キャプテン

「試合をとおして、スクラムを始め、フォワードの部分に関しては手ごたえがありました。ディフェンス面についても、15分ぐらいは良いディフェンスができている時間帯もありましたし、収穫もとても多い試合だったと思います。来週の清水建設江東ブルーシャークスさんとの試合に向けてしっかりリカバリーして準備をしていきたいと思います」

――試合終了前のラストプレーでトライを取り切りました。
「そうですね、モールについてはこだわっているところです。『最後はしっかり取って終わろう』とみんなで同じ方向を向いて、最後に得点して終われたのは次につながると思います。

強いランナーというのはなかなかウチのチームにはいないのですが、いかにモールであるとか、そういったところで得点をできるかというのは今後も重要になってくる。しっかり練習で取り組んできたことを出せて良かったと思っています」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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