【浦和レッズ】勝利に導く「新たな風」は俺たちだ!ベストイレブンの北欧コンビに挑む新加入の佐藤 瑶大と井上 黎生人

浦和レッドダイヤモンズ
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【©URAWA REDS】

 昨シーズン、浦和レッズがJ1でリーグ最少の27失点という堅守を誇ったのは、チーム全体に守備の意識が浸透した結果だが、中でもアレクサンダー ショルツ(31歳・デンマーク出身)、マリウス ホイブラーテン(29歳・ノルウェー出身)の北欧センターバックコンビが中心であることは間違いない。
 この"鉄壁"の北欧コンビがレギュラーとして存在する浦和に今季2人のセンターバックが加入した。
 背番号20、ガンバ大阪から移籍してきた佐藤瑶大(25歳)と、23番、京都サンガF.C.からやってきた井上黎生人(26歳)だ。

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 佐藤は明治大学からG大阪に加入したプロ5年目。3年目に半年間、ベガルタ仙台に期限付き移籍して試合経験を積んだことで、一昨季から出場数を増やし、昨季は元日本代表の三浦弦太や韓国代表のクォン ギョンウォン、日本代表に初招集された半田陸らとのポジション争いの中で、リーグ戦12試合に出場した。今季はそこからさらに飛躍を目指すべきシーズンだ。2人の強力な先達によってポジションが埋まっている浦和に来た動機は何なのか、知りたいところだ。

 佐藤に輪をかけて、自分を難しい状況に追い込んだのが井上だ。鹿児島実業高校からJ3のガイナーレ鳥取入りした井上は、4年目から3シーズン、レギュラーとして定着すると、7年目にはJ2のファジアーノ岡山に移り、そこでもレギュラーとして出場。その翌年は12年ぶりにJ1昇格を果たした京都の曺貴裁監督に誘われ移籍。2シーズンとも28試合に出場している。J3から順調にステップアップし、J1でも安定した位置を確保しているのに、その環境を捨てて試合出場が約束されていない浦和にやってきている。
 浦和のクラブ側の事情もあった。
 昨季、シーズンを通してメンバー入りし、出場した8試合では北欧コンビに劣らないプレーを見せたDF岩波拓也がヴィッセル神戸に移籍。メンバー外だった知念哲矢も仙台に移り、柏レイソルに期限付き移籍中だった犬飼智也が完全移籍となった。センターバックがレギュラーの2人だけという状態で新シーズンを迎えるわけにはいかなかった。
 西野努テクニカルダイレクターは「センターバックの補強は、今季絶対に必要だった。ただ、J1で出場実績があり、出番が来たときにしっかりと役割が果たせる選手。さらにショルツ、ホイブラーテンを脅かすぐらいの選手でなければ獲得しても意味がない。加入後の伸びしろも見て佐藤や井上に声をかけた」と語る。さらに「ベストイレブンのセンターバックが2人在籍することを承知の上で来てくれた彼らには感謝しているし、それだけの覚悟を持ってきているのだから期待もしている」と続けた。
 佐藤の場合は、東京の国立市に住んでいて、レッズの大ファンである父の車に乗って試合を見によく埼スタに来ていた。本人も自然とレッズが大好きになり、いつか浦和レッズでプレーしたいというおもいがあった。だが、それは背景の一部であって、決定的な動機についてはこう語る。
「これまで自分が成長してきた過程の中で、必ず手本となる選手がいたんです。その人のことを越えてやろうという、自分の貪欲な部分が僕の成長を促している、というのを考えると、J1ベストイレブンの素晴らしいセンターバックのところで、自分のプラスとなるものを盗んで、そこでポジション奪えれば自分の目標である日本代表にかなり近づくんじゃないかと思います」
 北欧コンビがいるからこそ、浦和に来て成長したい、という考えだ。
 チームに合流し、間近で彼らを見た感想は「大雑把な言い方ですけど、やっぱり守れちゃうっていうところがすごいと思います。ポジショニングのうまさとか、カバーリング能力ですかね。あと攻撃参加のときのパススピード。ワンツーのリターンがめちゃくちゃ速いんですよ」
 日々の練習で2人のプレーを見るだけではなく、ときに片方とセンターバックを組むこともあったりして新しい発見もある。
「紅白戦でマリウスと組んだことがありますが、シュートブロックがうまいなと思いますし、前に運んで相手のプレスを引き付けてから僕に出してくれるので、僕に余裕ができます。また対角、右サイド深くへのロングパスがうまいなと思います」

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 井上は浦和からオファーを受けて「今までいろんな選択をしてきたんですけど、一番悩みました」と語る。
「ただ僕はJ3から挑戦し続けていましたし、岡山に行った時も京都に行った時も、最初は試合に出られなかったのですが、一日一日の練習を見てもらって評価してもらったというところもありました。今回、挑戦せずに慣れ親しんだ安全なところに自分を置くのか、また一からすごい環境の中に身を置くのか、となった時にやっぱり僕は後者の方を選びました」
 始動からキャンプ、通常の練習と1カ月以上経つ中で自分が越えるべき選手たちの特長がはっきり見えてきた。
「ビルドアップの縦パスにチャレンジするところは学ばなきゃいけないと思います。日本人選手は縦パスを1本失敗したら、出しにくくなってしまうというのがあるんですけど、引っかかったとしても次々トライしていくというのは、僕も含めて日本人が学ばなきゃいけないメンタルです。あとは守備のところで、リラックスできてると思います。相手のカウンターの時とか、数的不利な状態のときは、硬くなったり、ちょっと力が入ったりする選手が多いんですけど、あの2人は常にリラックスして力を抜いて、逆に自分たちが有利だよっていう心理状況を見せている感じが対応にすごく見えるので、お手本になります」

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 佐藤も井上も、ただ北欧コンビから学びにだけ来たわけではない。他の選手に負けない強みがあるという自負もある。
 たとえば佐藤は「ヘディング一択ですね。そこは多分絶対負けないと思います」と言い切る。自分と言えばヘディング、という確信を持っているのだ。
 身長183センチ。日本人選手としては高い方だが、今季長身の外国籍選手が3人加わり、184センチ以上のフィールドプレーヤーは7人になった。その誰にも負けない自信があると言う。身長やジャンプ力だけでヘディングの強さは決まらない。実際、練習や練習試合でも佐藤は空中戦で勝つことが多い。これが守備はもちろん、セットプレーでの得点につながっていけば、大きな魅力になる。
 井上は自分のストロングポイントとして、カバーリングとシュートストップに加えて「読みの守備」を挙げる。鳥栖時代に、元日本代表キャプテンの森岡隆三監督と出会い、「自分の理想像はこの人」と思った。対峙する相手の動きを読むだけではなく、わざと出したくなるようにコースを空けて、そこを奪う。それはインターセプトにもつながり、相手が狙うエリアを察してそこに出させてパスカットし、持ち上がって攻撃につなげるシーンはキャンプの練習試合でも見られ、そこからウイングに出して味方のゴールにつなげた場面もあった。
 2人とも、浦和の中で自分の長所を磨きながら、さらに北欧コンビから吸収することで、より高みを目指すという共通した姿勢があるのだ。

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そして、この浦和におけるセンターバックのポジション争いは、「ショルツ・ホイブラーテン組」対「佐藤・井上組」の闘いではない。現実的には、佐藤と井上のどちらが先に出場機会をつかむかという、ある意味「挑戦権」争いでもある。
 「黎生人くんも最近良さがどんどん出てきていると思うので、僕も負けられません。僕と黎生人くんには違った良さがあると思うので、監督がどっちを選ぶか、好みの話になるかもしれないけど、より僕を選んでくれるようなプレーを日々やっていかなきゃいけないと思っています」と佐藤が語れば、井上は「そこの競争意識はあるようでないというか、まずはベンチに入るというのは必ず通る道ですけど、気負わず自分のプレーをし続けるのが一番いいのかな、と思います」と自分との闘いを強調する。
 横一線からスタートした2人が切磋琢磨して自分の持ち味を磨きつつ、北欧コンビの良さを吸収していくことが、チームにとって一番の底上げになっていくだろう。

 マリウス ホイブラーテンは2人の新加入DFについて「新たなエネルギーを持って、謙虚な、そして素晴らしい姿勢でやってくれている」と語った上で「良いセンターバックが4人いて、誰も出場が確定されているわけではないので、チームにとっては良い影響があると思う」と、新たな競争を歓迎している。
 38試合に増えたリーグ戦では、先発を続けている選手がアクシデントや警告累積で欠場することはありうる。そのときに、佐藤と井上のどちらが起用されるか、そしてどこまで遜色のないプレーを見せるか。
 今季の浦和が掲げるJリーグ優勝の目標を達成するのにそれが欠かせない要素の一つになりそうだ。


(取材・文/清尾淳)
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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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