【清水エスパルス】勝利に導く「新たな風」は俺たちだ! 覚悟の移籍を決意した沖悠哉。代表守護神の壁を乗り越え、清水の起爆剤に

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「鹿島を離れてあらためて、ここまで自分を育ててくれたクラブへの感謝の気持ちは強くなっていますが、選手である以上、試合に出なければ価値を高められないし、新しい環境でトライしていくことも大事だと思いました。もちろん権田(修一)さんはワールドカップにも出ているし、簡単に試合に出られるとは思っていませんが、そこにひるむことなく自分ができる全力をピッチで表現するだけだと思っています」

 鹿嶋市で生まれ育ち、小学生の頃から鹿島アントラーズのアカデミーで育ってきた期待のGK=沖悠哉・24歳。彼が清水に完全移籍したことは、鹿島サポーターだけでなく清水サポーターにとってもサプライズだった。2004年に川島永嗣(当時21歳)が日本代表GK楢﨑正剛が君臨する名古屋に移籍したことを思い出した人も多いだろう。本人にとっても大きな覚悟を伴う移籍だけに、期待や注目も非常に高まっている。

最高の手本と共に

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そんな沖が清水に合流して1カ月半、まずチーム関係者に強い印象を与えているのは、彼の向上心や人間性の素晴らしさだ。元清水のGKで今年からクラブのスタッフに加わった西部洋平氏も「自分の24、25歳の頃と比べると本当にしっかりしているし、大人。向上心の塊ですね」と言う。
 古川昌明GKコーチも「いろんなことを貪欲に吸収して、自分のものにしていこうという意欲をすごく感じますし、土屋(明大)コーチや僕のアドバイスをしっかり受け止めて、トレーニングの中で実行に移してくれています」と証言する。

 もちろん彼の特徴であるシュートストップやキックの飛距離・精度なども存分に発揮し、そこを伸ばす努力にも怠りはない。全体練習が終わった後に権田が長く居残り練習をしている姿は清水の日常風景であり、今季は始動時からその時間がさらに長くなったように感じるが、沖も毎日最後まで一緒にハードなメニューをこなし続けている。
「10歳上の人があの練習量をやってるわけですから、僕はそれ以上やらないと越えられないと思っています。もちろん自主練も自分に必要だと思うからやっているだけですし、身近にお手本がいるのは恵まれているなと思います」(沖)

プレーの幅も拡大しながら

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ただ、ここまでの練習試合では1本目(主力組)で先発するのはほぼ権田であり、沖は2番手の立ち位置となっている。やはり2022年のワールドカップで日本代表のゴールを死守した男の壁は高い。だが、それで彼の気持ちに揺らぎが生じることはない。
「僕が鹿島に入ったときはソガさん(曽ヶ端準)がいて、小さい頃からずっと見てきた選手なので、いざ同じピッチに立っても憧れの人としか見られないというジレンマがありました。でも今は、権田さんは目標でもあるし、尊敬できる人ですが、盗めるところもありますし、越えられない壁とは思ってません。僕としては、自分ができることをやり続けていくこと、日頃の練習の積み重ねが評価につながると思っていますし、もっとハイレベルな競争に持っていけると思っています」(沖)

 技術面に関しても、清水に移籍したことでさまざまなチャレンジができている。
「キーパーにもスタイルがあって、鹿島だとブラジル系っぽいイメージがありますが、権田さんはボールにアタックするというか、また少し違うイメージがあります。選手の幅としては何でもできるのが一番だと思いますし、GKコーチも2人いてそれぞれ多くの引き出しを持ってくれているので、自分の幅を広げるという意味ではすごく魅力的な環境だなと感じます。もちろん今まで自分が積み上げてきたものを壊す必要はないですが、自分が取り入れるべきものをしっかり選びながら取り入れていきたいです」(沖)
 秋葉忠宏監督の下でハイラインの攻撃的なサッカーを展開している中、DFラインの裏のカバーやビルドアップへの積極的な参加など、沖にとっては自分の幅を広げられる要素は多い。今季から2人目のGKコーチとして就任した土屋明大コーチは、山形でピーター・クラモフスキー監督と共にGKからのビルドアップを重視するスタイルを構築してきた経験があり、それを獲得するためのメニューも多く有している。

チームに火をつけるためにも

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強大なライバルから学ぶことは多いが、今まで積み上げてきた自分の良い部分を失ってもいけない。そのバランスを保ちながら成長を重ねることが、ポジション奪取にもつながると考えている。
「良い環境で成長できたというだけで終わるんじゃなくて、やっぱり奪い切らないとダメだと思っています。自分がレベルアップして試合に出ることができてこそ、本当に移籍して良かったと言えるので。それに、絶対的な選手がいるポジションが覆れば、チーム内も変わると思うんですよ。そこも含めて楽しみな1年にしたいと思っています」(沖)

“勝負強さ”という部分が大きな課題となっている清水において、選手間の競争が熾烈になることは秋葉監督も大歓迎する。もし沖がGKの序列を覆すことができれば、他の若手も「オレもやれる!」と大いに奮い立つだろう。それによって練習中のバチバチ感が高まり、選手全員がひとつひとつのプレーの質や勝ち負けに強くこだわるようになれば、自ずとチームの勝負強さも増していくはずだ。
 そんな好循環の起爆剤になりうる選手が、早くも清水に新たな風を起こし始めている。

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著者プロフィール

チーム名の「S-PULSE」は、「サッカー・清水・静岡」の頭文字Sと、サッカーを愛する県民、市民の胸の高鳴りとスピリットを表現するため、英語で「心臓の鼓動」を意味するPULSEを組み合わせて名付けられました。 1993年に「オリジナル10」の一つとしてJリーグ開幕を迎え、クラブの歴史がスタートしました。 こちらのサイトではチームや試合、イベントなど様々な情報をお届けいたします

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